WOWOWブッククラブ

これまで紹介した本。

2020年6月の
番組テーマは「映画」

2020年7月の
番組テーマは「ジョーカー」

2020年8月の
番組テーマは
「全米オープンテニス」

2020年9月の
番組テーマは
「スペインサッカー ラ・リーガ」

2020年10月の
番組テーマは「三谷幸喜」

No.1

チャップリン自伝

若き日々
栄光と波の日々

チャールズ・チャップリン(著)
中里京子(訳)
新潮文庫

チャップリン自伝

チャップリン自伝

えらんだ理由

 誤解を恐れずに言うなら、映画「ジョーカー」のジョーカーことアーサー・フレックの半分以上はチャップリンで出来ていたのではないでしょうか。貧しき幼少期を英国で暮らしたチャップリン。母の精神病院収容、父はアルコール依存症で早世、継母の虐待など、救貧院や孤児院での生活を余儀なくされていた彼は、世を憂い呪う存在になっていた可能性すらあります。まるでジョーカーのように。
 そんなチャップリンが代筆も立てず自ら書いた『チャップリン自伝』は、極貧生活をしなやかに乗り越え、アメリカで大スターへの階段を駆け足で登っていく前半「若き日々」編と、栄華を極めたあとの交友録と「赤狩り」によってアメリカを追われることになった後半「栄光と波欄の日々」編の上下巻によるもの。
 映画「ジョーカー」の中で、ゴッサムシティの富裕層がチャップリンの「モダン・タイムス」を鑑賞して笑っているシーンがあるのですが、貧しき労働者の苦悩と個の剥奪という悲劇を喜劇に転化して訴えたチャップリンに重ねるように、アーサー・フレックも自身の悲劇的な人生を喜劇だと捉えるようになった瞬間、ジョーカーに生まれ変わるのです。
 長らく読み継がれてきた中野好夫訳から装いを新たにした中野京子訳は最新の資料をもとに編み直されたもの。「ジョーカー」の世界を深める第一歩にぜひ。

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No.2

罪と罰

(上・下)[改版]

ドストエフスキー(著)
工藤精一郎(訳)
新潮文庫

罪と罰

罪と罰

えらんだ理由

 ドフトエフスキーが『罪と罰』の連載を開始した1866年1月は、偶然にもトルストイが『戦争と平和』を書き始めたタイミングと同時でした。後者が客観的描写を重視するスタイルだったのと対照的に、前者は独自の心理的リアリズムを追求して人間の深淵を覗こうとした書き手です。そして、その手法は映画「ジョーカー」で用いられているものでもあります。
 ドフトエフスキーは、デビュー作『貧しき人々』から日の当たらぬ片隅で生きる無力な人の孤独と屈辱、そして社会的卑屈さの深層を描き続けていました。が、『罪と罰』は完全犯罪に近い殺人を決行した主人公ラスコーリニコフとそれを追い詰める予審判事ポルフィーリイの知的な対決を描く推理小説的側面を中心としながら、聖なる娼婦ソーニャとの愛の小説としても読むことができ、それが普及の名作と言われる所以でしょう。
 貧しきラスコーリニコフは独自の犯罪理論を持ち、非凡人の自分は社会道徳からはみ出す事も許されると妄信して金貸しの老婆を殺害しますが、計画外だった2回目の殺人によって罪の意識を増幅させ苦悩します。その点、2度目の殺人によってジョーカーの心理がどう動いたのか? はこの映画作品の分岐点となり注目すべきポイントです。
 言葉や行為にすらならない細やかな心理の変化を読み深める面白さって、確かにあります。

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No.3

道化の民俗学

山口昌男(著)
岩波現代文庫

道化の民俗学

えらんだ理由

 ジョーカーが道化(ピエロ)でなくてはいけなかった理由が、山口昌男『道化の民俗学』を読めばわかります。1975年に刊行されたこの本は、道化やトリックスター(いたずら者)を文化人類学的な視点で考察していく1冊。
 16世紀のイタリアで一世を風したコンメディア・デッラルテという即興喜劇に登場する道化師アルレッキーノの紹介から始まり、アフリカ神話のいたずら野兎や、アメリカ・インディアン ズニ族のネウェクエ道化など古今東西の道化的存在が、実は悪戯を咎められないことによって日常に取り憑いたものを境界の外へと押しやる役割を果たしていると教えてくれます。
 一方それは道化の視点で見るなら、醜く、汚いものを引き受ける異形である自分たちを見えないものと無化することによって日常を成立させている世界があるわけです。ゴッサムシティを統べる一部の権力者の優雅な世界のように。
 そんな中、この本が痛快なのはその関係が逆転する瞬間を指摘していることです。ハロウィンが死霊を迎える祭りであることのように、「カーニヴァル」では、生死が反転し、自分が自分であることをやめ、誰でも道化になることが許されます。そんな見方で映画「ジョーカー」のラストシーンを眺めてみると、また違った感情を抱くかもしれません。

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No.4

感情類語辞典

[増補改訂版]

アンジェラ・アッカーマン, ベッカ・パグリッシ(著)
滝本杏奈, 新田享子(訳)
フィルムアート社

感情類語辞典

えらんだ理由

 ジョーカー演じるホアキン・フェニックスの名演は、複雑な心情を映し出す表情にも見て取れます。持病の笑いには苦しさや辛さ、やるせなさが垣間見え、おどけたピエロメイクにこぼれる涙には何とも言えない物哀しさが。ジョーカーの精神は妄想と現実の世界をも往来し、そのことがさらに観賞者の心をも複雑にします。「笑う」、「怒る」等といった一言では表せない多面的な表情の図鑑ができそうです。
 と、そんな時に紹介したい『感情類語辞典』は130の感情について、「由来」や「反応」を心理描写に使える「類語」として紹介するユニークな本。たとえば「怒り」であれば、目玉が飛びだしそうなほど目を見開く、口をゆがめる、結論を急ぐ、作り笑いをする、アイコンタクトを避けるなど、約70の反応が細かく挙げられています。小説などの創作者向けに作られた辞典ですが、ジョーカーの深層に潜りたいときにも役立つはずです。

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No.5

学校では
教えてくれない本当のアメリカの歴史

(上・下)

ハワード・ジン(著)
R.ステフォフ(編著)
鳥見真生(訳)
あすなろ書房

学校では<br>教えてくれない本当のアメリカの歴史

学校では<br>教えてくれない本当のアメリカの歴史

えらんだ理由

 ジョーカーが殺したのがエリートサラリーマンだったために、富裕層への不満を募らせていた貧困層はジョーカーを支持、この殺人がトリガーとなって街では略奪・暴動が広がっていきます。「誰も僕を見てなかった」、「自分が存在するのかわからなかった」というジョーカーのフラストレーションは、ゴッサムシティの多くの貧困層が同様に持っていたものでしょう。
 アメリカ社会が富者と貧者とに引き裂かれている問題点に言及し、若い世代に向けてわかりやすく書いた本が『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』です。為政者側からでなく、社会的に弱い立場として扱われてきた人々の立場からアメリカの歴史を振り返ります。最近、白人警官によって黒人市民が暴行死するという事件からデモや暴動が全米に拡大していますが、背後にあるのは根深い人種差別問題。この本では、人種差別が自然な感情から発生したものではなく、特殊な条件のもと歴史的に生まれてきたものであることを紐解きます。貧困や差別に関する正史とは違った視点のアメリカ史を知ることで、映画「ジョーカー」の世界だけでなく、現実世界の至る所で沸き起こっている運動の根幹もわかるはずです。

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No.6

空が青いから
白をえらんだのです

―奈良少年刑務所詩集―

寮美千子(編)
新潮文庫

空が青いから<br>白をえらんだのです

えらんだ理由

 古びたアパートで年老いた母親と二人暮らしのジョーカーには、いつも母親の存在が身近にあります。富豪のウェインに生活を助けてもらえるよう書いた手紙の返事を期待する母の気持ちをジョーカーも一緒に背負って、返事が来ないことを悲観する日々を過ごします。映画後半でジョーカーの母に対する思いが大きく変化しますが、それは彼にとって母との関係が揺るぎないものだったがゆえでしょう。
 『空が青いから白をえらんだのです』この本のタイトルは、奈良少年刑務所の受刑者が書いた詩のひとつです。刑務所の更生教育プログラムで行われた詩の授業で書かれたもので、本書には受刑者の書いた57編の詩が編まれています。その中でも母について書かれたものが多く載せられており、母の存在、母との関係性が子にとってどれだけ大きいものかが感じられます。彼らの心の声は、ジョーカーの心情とつながるものもあるのではないでしょうか。受刑者たちは、加害者であると同時に、この社会の被害者なのかもしれない、詩の授業の講師である編者は本書の中でそう語ります。

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No.7

子どものための
哲学対話

永井均(著)
内田かずひろ(絵)
講談社文庫

子どものための<br>哲学対話

えらんだ理由

 バットマンシリーズのスーパーヴィランであるジョーカーの真の恐ろしさは、目的やイデオロギーの無さにあります。超能力や人為を超えた力を持っているわけではないただの人間なのに、何をしでかすのかわからない不気味さがヒーローに不意打ちをくらわせ、人を恐怖に陥れます。
 哲学者の永井均さんが書いた『子どものための哲学対話』は、14歳の「ぼく」と哲学するネコ「ペネトレ」の対話集。「人間は遊ぶためにできている!」、「こまっている人をやたらに助けちゃいけない」、「学校に行かなくていい理由」、「へんなしごとの意味」など、エッ!と驚くペネトレの言説を、ぼくと一緒に会話しながら理解していきます。まるでプラトンが対話から哲学を始めたように。そして、物事の芯について考える練習をしていくのです。
 さて、そんな本の中でぼくはペネトレに「左翼と右翼のちがい」について尋ねるのですが、彼は「どっちもおなじようなものだよ」と答え、「そもそも対立っていうのは、ほとんど前提を共有しているもののあいだでしか、起こらない」と説きます。バットマンとジョーカーの対決が勝負にならない理由が少しだけわかりました。

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R15+指定に相当する場面があると思われるもの
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