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大会展望

男女とも波乱あり!? 全豪成功のカギは完璧な準備とモチベーション

R・ナダル/R・フェデラー/S・ウィリアムズ/クルム伊達公子

(写真左より)
R・ナダル Photo:ロイター/アフロ
R・フェデラー Photo:Action Images/アフロ
S・ウイリアムズ Photo:アフロ
クルム伊達公子 Photo:アフロ

 テニスほどシーズンオフの短いプロスポーツも稀だ。特に前年の最終戦まで戦うトップ選手にとって、シーズン開幕間もない全豪オープンは、地理的な不便さも相まって調整が難しい。下位プレーヤーにはそこがチャンス。過去の優勝者や準優勝者にいわゆる“一発屋”が多いのもわかる。誰しもまだ不安定なこの時期に本気で照準を合わせ、万全の準備を怠らないモチベーションの高さこそが、全豪で成功する条件だ。前哨戦からもやはり波乱の兆しがうかがえる。

 タイトル奪還へ並々ならぬ意欲と自信を漲らせる王者ロジャー・フェデラーは、「しっかり練習が積めたし、コンディションもいい。また無敵の時代を作りたい」と強気を覗かせたが、アブダビのエキシビション大会で過去12戦全勝していた相手ロビン・ソダーリングに敗退。翌週のドーハでは昨年のツアーファイナルで12戦目にして初黒星を喫したニコライ・ダビデンコに準決勝でまさかの連敗を許した。

 このダビデンコが今やかなり不気味な存在なのだ。昨年のツアーファイナル優勝がまぐれでないと誇示するように、ドーハの決勝でもラファエル・ナダルを破って優勝。スタミナを課題としてきた28歳が、猛暑の5セットマッチでどんな変化を見せるか興味深い。

 ナダルはアブダビの決勝ではソダーリングを破り、全仏とツアーファイナルでの2敗の雪辱を果たしたとはいえ、今年は準備期間が十分でないことを認め、「1位に戻ることが今の目標ではない。ケガせず、プレーできる幸せを感じたい」と控えめだ。1位にこだわるフェデラーの対決はやはり見たいが、一昨年優勝のノバク・ジョコビッチや昨年全米覇者のファン マルティン・デル ポトロ、世界2位を初めてマークしたアンディ・マレーといった若い王者予備軍からも目が離せない。

 また、全豪で4度ベスト4入りしている27歳アンディ・ロディックも気になる。第1シードで臨んだブリスベンではオーストラリアの初タイトルを手に入れた。昨年の後半は膝のケガに苦しんだが、「他の選手より休めたし、ハングリーな気持ちは負けない」と前向きだ。昨年のウインブルドンのプレーが蘇ればひょっとするかもしれない。

 女子はセレナ・ウイリアムズが昨年を含めた4度の全豪優勝でシーズン開幕の調整力の高さを証明しているが、注目はやはり復帰したばかりのジュスティーヌ・エナンか。そんな中、昨年全米優勝を果たしたキム・クライシュテルスとのベルギー・カムバック女王対決が、全豪を待たずにブリスベンの決勝でもう実現。クライシュテルスが「今シーズンのハードルを上げるような試合だった」と自負するハイレベルな戦いを制した。一方「ブランクを考えればこれ以上のスタートはない」と自身に合格点を与えたエナンだが、左大腿部を痛めて翌週のシドニーを欠場。2回戦でセレナと対戦するはずだったが、大事な全豪前に因縁のライバルとの早すぎる対決を避けたのか。駆け引きや心理戦に長けていたエナンだけに、そんな詮索もせずにいられない。

 全豪に限っていえばエナンと同じ2年ぶりとなるのが、08年優勝者のマリア・シャラポワ。昨年は右肩の故障で欠場したが、夏から徐々に調子を戻している。まだ22歳という若さでもあり、ティーン代表カロライン・ウォズニアッキら次のチャンピオンを狙う若手にも簡単に地位を譲るわけにはいかない。

 日本勢の本戦ストレートインはクルム伊達公子と森田あゆみ。ふたりだけというのは寂しいが、クルム伊達は第1戦のオークランドでベスト8、すぐにシドニーで予選を勝ち抜いて本戦入りと、唖然とするほどの勢いを開幕早々見せている。復帰後初のグランドスラム勝利には期待十分。また、グランドスラム出場7大会目の19歳森田にも今度こそ初白星をもぎ取ってほしい。

文・山口 奈緒美(やまぐち・なおみ)

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