2011年9月号

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魅力的な舞台人 インタビュー / 舞台レポート

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2010/8/9(月) レポート
『おくりびと』後編

『おくりびと』

©宮川舞子

 国内外で計89冠に輝いたという映画『おくりびと』。そこから7年後の物語とは言っても、舞台版の出演を決めた役者陣には、大きな決断が要ったことだろう。しかしもちろん、舞台版『おくりびと』のキャストは、その勇気だけが評価されるべきではない。主人公・小林大悟役の中村勘太郎は、誠実さ、清潔感、そして伸びやかな身体に宿る古典芸能仕込みの所作の美しさが魅力。それがこの舞台版では大いにプラスに作用している。世界中で大絶賛された、映画の納棺シーンの厳かな美しさ。指先のわずかな角度で印象がまったく違ってしまうその手順を、大勢の観客が見守る中、ライブで演じる。それができるのは、そう多くはない。


 また、妻の美香を演じる田中麗奈は、2年前、『想いでトランプ』で初舞台を踏み、悩みながらも妻であり母であろうとする女性をこまやかに演じて高い評価を獲得。二十代後半まで映画にしか出演しなかった田中だが、舞台女優としても高いポテンシャルを感じさせた。奇しくも『おくりびと』でも妻であり、幼い子供を持つ母親を演じているが、気品と生活感をうまく取り混ぜた存在感が、作品に落ち着きと華を添えている。


 子供が生まれ、成長し、小林家に生まれた新たな喜びと悩み。何もしなくても時は流れ、人は死んでいく。そこに丁寧に句読点を打つことは、生きる時間を大切にすることでもある。舞台版『おくりびと』は、改めてそのことを教えてくれる。


文:徳永京子(演劇ジャーナリスト)


舞台「おくりびと」
舞台「おくりびと」
〜あれから7年後の物語〜

日本映画念願の、第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した映画『おくりびと』が待望の舞台化! 映画版で初めて映画脚本を手掛けた小山薫堂が、映画では語りきれなかったその後のストーリーを描く注目作を独占放送。

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