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我々でも出来る! マレーシア・ボレ 笑ってる場合ですよ! な国「タイ」

笑ってる場合ですよ! な国「タイ」

誰が言ったか知らないが、タイを表すフレーズがある。それは「微笑みの国」。近年の政情不安から非常事態宣言、反政府デモ、政権交代とニュースで度々取り上げられているが、それでもタイはやっぱり微笑みの国である。いや、「笑ってないと生きてゆけない国」かもしれない。「微笑みの国」を実感できる、数々の事例をここに記そう。

出発前から、笑ってる場合ですよ

出発の5日ほど前、コーディネーターの相田さんから不穏な情報が入った。

「現在、ハートヤイの空港が封鎖されています。ハートヤイからバンコクまでの鉄道もストで動いていません!」。しかし続けてこう言う。「でも大丈夫だと思います。戒厳令が出されても戦車の前で記念写真を撮っている国民ですから、ストも飽きたら終わると思います」。 半笑いで電話を切った私であったが、実際マレーシア撮影中にストは解消され、問題なく微笑みの国の撮影は始まった。タイには「蓮の茎を折るときはすじを残せ」という諺がある。「人と争うときは修復の余地を残しておけ」というニュアンスだとか。仏教国らしい諺だが、ストや反政府運動さえも、どこか思いやりを残した対決姿勢と笑顔でやり過ごす国民なのかもしれない。

コーディネーター相田氏・D牧野・カメラマン・小島氏

ハートヤイやバンコクの市場で、逞しく働くオバちゃんたちの笑顔と出会い、寝台列車では足の踏み場もない満員の車内で、笑いかけてくれる子どもたちを撮影することもできた。一度タイを訪れたことのあるツーリストで、「タイは嫌い!」という人を、私は知らない。美しいビーチに森林でのトレッキング、美味い料理にお手頃料金のマッサージ。語り尽くせない魅力が数々あるが、やはり一番の観光資源は、旅人を癒すタイ国民の笑顔だと思ってしまうのである。

帰国後は、タイのハニカミ王子と呼ばれるアイドル『アイス・サランユー』のCDを聞きながら、ひたすら編集作業を進めるのであった♪

仏像までも笑ってる場合ですよ

タイ国民の王様に対する親愛の思いは、並ではない。そんな中でも、絶大な人気を誇る3人の王がいる。

1人目は、現国王ラーマ9世(プミポン王)。タイでは多くの人々が黄色のシャツを着ているが、それは国王のラッキーカラーだから。最近は、国王がテレビ会見にピンクのシャツで登場したため、目の覚めるようなショッキングピンクの服が流行中なのだとか。

2人目は、近代化の父ラーマ5世(チュラーロンコーン王)。鉄道の建設、裁判制度の確立、奴隷制度の廃止などさまざまな施策を実現した。周辺国が列強に支配される中、東南アジアでは唯一タイが独立を守り抜いたのも、その政治手腕によるものといわれている。そんな彼は、生涯38人の女性との間に96人の子をもうけたそうで、恋の神様としても親しまれている。ちなみに、ミュージカル『王様と私』や映画『アンナと王様』は彼をモデルにした物語であるが、タイでは上演が禁止されている。

3人目は、タイ発祥の地スコタイの王様ラームカムへーン。今でも「ラームカムへーン王の時代は良かった。川に魚あり、田に米あり」とその豊かさを称えるそうだ。スコタイのアチャナ仏と呼ばれる仏像は、この名君をモデルにしたともいわれている。優しい眼差しで微笑む大仏を見ると、その優しき人柄を感じ取れる。

我々は仏教が息づく様子を伝えるため、スコタイ市場で僧侶の托鉢を撮影した。そこではお布施をするための托鉢セット(ご飯、カレー、水)も売られている。数年前、別の番組で撮影に来たことを店のオバちゃんが覚えていて、笑顔で撮影に協力してくれた。 誰かが覚えていてくれる幸せ。誰かが待ってくれている幸せ。

名君ラームカムへーン王の微笑と、市場のオバちゃんの笑顔、 ここスコタイに、何故か故郷を重ねてしまうタイの撮影であった。

三人の王様の像ファランポーン駅・構内 スコタイ市場・托鉢の様子

時代に逆行していると言われようとも、断然おススメ普通列車

世界的な鉄道の現状を見据えると、それは「高速化」の一言に集約される。エアトラベルと対抗すべく、車両の高速化、路線インフラの整備など、多様な対策を講じて世界中で鉄道大復権が唱えられている。タイでも、飛行機やバスに対抗すべく「スプリンター」という特急列車が運行している。イギリス製と韓国製のディーゼルカーで、バンコクとチェンマイ間750kmを約10時間半で結ぶ。全車冷房完備で静かで乗り心地もよく、各車両にスチュワーデス乗務という飛行機並みのサービス。我々が乗ったピサヌローク〜チェンマイ間でも、多くの外国人旅行客を見かけた。

だが私“乗り鉄ディレクター”からすると、あまりおススメできない。スプリンターには食事や飲み物、スナック類のサービスまで付いている。しかし我々はそんなことを望んではいない。日本の鉄道では亡びつつある食堂車へ向かい、ビール片手に車窓からの風景を望み、他の旅人と出会い、また自分自身を見詰め直す…なんてことが、鉄道の旅の特権だと思うからだ。しかし、そんな鉄道ファンのためだけに世界の鉄道は運行しているわけではない! と今さらながらに考えさせられる。

場面写真ではどうしたらいいか? 簡単である。鉄道ファンは普通列車や寝台列車に乗ればいいのだ。普通列車は停車の度に売子が乗り込んでくる。鶏の唐揚げ、麺料理、アイスなどのデザートにいたるまで、まるで動く屋台村。食堂車では、東京のレストランで1500円はしそうなメニューが100円ほど。お願いすれば料理を席まで届けてもくれる。
これからタイ鉄道の旅を計画中の視聴者には、ぜひ普通列車に乗って旅を満喫していただきたい。


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