Follow me

12月の映画の達人が選んだ9本

12月上旬の映画の達人セレクトはコレ!

これが現実逃避の究極形!? 人生に迷走する人々【岩永めぐみ】

【岩永めぐみプロフィール】「DVD&ブルーレイSTATION」に編集&ライターで参加。日頃仕事で映画に触れているのに、現実逃避にも映画を観てしまうのは職業病でしょうか。歴史についてのムック本を編集しているおかげで、最近は歴史ものの映画が楽しいです。

妄想が招く恐ろしい愛の迷宮

「クロエ」

キュートなアマンダ・セイフライドが絵に描いたような悪女を熱演。夫が浮気をしているのではと妄想する、ジュリアン・ムーア扮する中年の女医。娼(しょう)婦に夫を誘惑するよう依頼し、報告を受けては妄想を膨らませる。人をその気にさせる才能を持つこの娼(しょう)婦、一体何者なのか? 過去に「スウィート ヒアアフター」などでも、距離を置き静かに物語の成りゆきをとらえたアトム・エゴヤン監督。人間の底知れない妄想や嫉妬(しっと)心がもたらす愛の迷宮を、いてつくカナダの街並みの中に冷静なまなざしで映し出している。

酒に逃げる男に思わず共感!?

「昼間から呑む」

現実逃避の最も手短かな方法といえば酒、そして旅! ノ・ヨンソク監督が脚本、撮影、編集、美術、音楽を兼任して100万円ほどの資金で完成させたこの作品は、恋人と別れたうだつの上がらない青年が旅先で、見知らぬ人と酒を呑(の)んではひどい目に遭うロード・ムービー。散々な体験をするわりには、なんでもない様子の主人公。その流されるがままの姿が、熱い男が登場することの多い韓国映画としては新鮮。思わず共感を覚えたりもするのである。

夢が覚めなければいいのに……

「夜ごとの美女」

現実にほとほと嫌気が差した音楽家が夢の中で過去を旅し、美女たちとの恋を繰り広げる。「昔は良かった」と口走ってしまうのはいつの時代も同じ。音楽家は過去から過去へと夢をさかのぼり、夢と現実を行き来する。音楽家を演じるジェラール・フィリップのチャーミングさは、美女が何人かかってもかすむほど。「巴里祭」や「奥様は魔女」のルネ・クレール監督が軽妙なユーモアを発揮。予定調和なハッピーエンドが、かえって心のコリをほぐしてくれる。

12月中旬の映画の達人セレクトはコレ!

"闇"を抱えたティーンたち【相馬学】

【相馬学プロフィール】アクション&スリラーを愛するフリーライター。「DVD&ブルーレイでーた」「SCREEN」「GLAMOROUS」等で仕事中。初の民放テレビ出演でド緊張。カメラの前で自然な笑顔を見せられる人、尊敬します。

複雑な現代を生きる高校生の闇

「処刑教室」

試験の答案用紙がハイスクールの校長室から盗まれ、新聞部のオタクっぽい少年がその真相を探る。衝撃の真実とは? 1982年の同名邦題のバイオレンス映画とはまったく別物だが、このミステリーもなかなか味がある。ドラッグ、カンニング、生徒会、パーティー、生徒間のヒエラルキー、そして失恋。事件の真相を明かしつつ、複雑化している今の10代の痛みをリアルに伝える。軍隊かぶれの校長に扮したブルース・ウィリスの怪演も見逃せない。

張り詰めた日常に潜む闇

「エレファント」

カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝く、異才ガス・ヴァン・サントの意欲作。米オレゴン州のハイスクールで、いつもと同じように生徒たちの時間が過ぎてゆく。武装したいじめっ子コンビが銃を持って登校するまでは……。1999年に世界を震撼(しんかん)させたコロンバイン高校の銃乱射事件にヒントを得た本作で描かれるのは、高校生たちの当たり前の日常。一見、代わり映えのしない時間だが、静かに、確実に、風船が膨らむように緊張は張り詰め、やがて破裂する。生徒役の俳優たちのリアルなアドリブ演技と共に体感してほしい。

複雑な感情が渦巻く女子の闇

「少女たちの羅針盤」

4年前に突然、活動を停止した女子高校生たちの劇団、羅針盤。謎に包まれた、その真相は、一人の新進女優を脅かす……。水生大海の同名小説を映画化した青春ミステリー。4年前の羅針盤の活動をたどりながら、映画は衝撃の事実を解き明かしてゆくが、その過程で明らかになる少女たちの「リアル」にこそ本作の面白さがある。友情、同性愛、嫉妬(しっと)、怒りといった複雑に絡み合う感情がすくい取られ、どのキャラクターにも感情移入できる。広島県福山市でのロケによる、生活感あふれた描写も好感度大。

12月下旬の映画の達人セレクトはコレ!

陰鬱(いんうつ)な空の下で事件は起きる【中山治美】

【中山治美プロフィール】1969年茨城生まれ。スポーツ紙記者を経て映画ジャーナリストに。日本映画navi、週刊女性、デイリースポーツなどで執筆中。11月中旬からエストニアで開催されるタリン・ブラック・ナイト映画祭に初参加予定。

撮影を欧州で行いよりダークに

「ゴーストライター」

英国元首相の自伝を手掛けるゴーストライターが命の危険にさらされるサスペンス劇。原作は元政治ジャーナリストによる小説で、米国のイラク侵攻にまつわる機密がカギを握ることから、ブレア元首相がモデルでは? と言われており真実味に拍車が掛かる。「戦場のピアニスト」と同じ撮影はパヴェウ・エデルマン。グレーを基調とした、季節外れの海辺風景が印象的。設定は米国の孤島だが、撮影が行われたのはドイツ。エデルマンは「不気味な感じを加えるのに効果的」と語っているが、監督の過去の罪で米国入り出来ないのは衆知の事実。

別名"疑い深い人の州"が舞台

「ウィンターズ・ボーン」

米国版「バトル・ロワイアル」こと「ハンガー・ゲーム」も好評! ジェニファー・ローレンスがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされた出世作だ。家族の危機を救うため、失踪(そう)した父親を捜すわずか17歳の少女。だが、近隣住民はそろいもそろってワルで助けちゃくれない。非情な世界で孤軍奮闘するジェニファーのはすっぱぶりは、未来の極妻候補だ。山間部に住む人たちの厳しい生活は、ミズーリ州出身作家の世界観を再現している。同州は別名"疑い深い人の州"と言われているとか。本作を観ると、そのいわれもあながちウソではなさそうだ。

陰の主役・雪のためにノルウェーへ

「エッセンシャル・キリング」

アフガニスタンの兵士が、米軍から逃れるために、ただただ荒れた大地を逃げる! 説明は一切ナシ、ヴィンセント・ギャロにセリフなしの、ポーランド人監督イエジー・スコリモフスキ監督の野心作だ。場所は説明されていないが、監督は大雪の中を逃げるシーンを撮りたくて、ノルウェーを撮影地に選んだ。その過酷な撮影で、結果、腹をすかせたギャロが、乳飲み子を抱えた女性を襲い、母乳を吸って腹を満たそうとする衝撃シーンが誕生。まっ、現場でのギャロは、監督と相当やり合ったらしいが(苦笑)。

それでも何観るか迷うあなたは……WOWOWシネマラインナップカレンダーをCHECK!