大会第10日

女子シングルス準決勝

解説：坂本 正秀　実況：河路 直樹

　上位シード勢が早々に姿を消したことで、誰が出て来てもおかしくなかった下の山を勝ち進んできたのはこの二人。予想もしなかった準決勝カードだ。第15シードのバルトリは07年のファイナリストの実績があるが、今大会は格上と一度も戦っておらず、この準決勝もまたしかり。対する第20シードのフリプケンスは、今年の全豪オープンで果たしたグランドスラム自己最高成績のベスト16を一気に上回っての準決勝進出。アザレンカの消えた山から出てきたとはいえ、準々決勝では一昨年優勝のペトラ・クビトバに逆転勝ちした価値あるベスト4だ。

　ベルギーといえば、かつてジュスティーヌ・エナンとキム・クライシュテルスの2強が一時代を作ったが、彼女たちが揃って準決勝で敗れた03年のウィンブルドンで、フリプケンスはジュニアの部を制している。そのこともあり、ベルギーではエナン／クライシュテルスのポスト的存在だったが、プロになってからは伸び悩んだ。ここでジュニアを制してから10年目の今年、初めてトップ20入りを果たし、今大会の快進撃へとつなげた。165センチの小柄な体ながら隙がなく、どこからでも攻撃に転じるプレースタイルを「手品師」と呼ぶ声も。

　バルトリの持ち味は両サイド両手打ちの強打。長年父親との二人三脚で取り組んできた独特のトレーニングの成果は、そのスピードと根性に表れている。父はもうコーチではなくなったが、ここで再び大きな恩返しができるだろうか。

大会第10日

女子シングルス準決勝

解説：神尾 米　実況：鍋島 昭茂

　トップ3シードがいなくなり、今や優勝候補の筆頭はラドバンスカだ。第4シードという今回のシード順だけがその根拠ではない。昨年準優勝した実績、そして芝に適したカウンター気味のフラットなショットだ。準々決勝では一昨年の全仏覇者で今年は全豪で準優勝したリー・ナをフルセットの接戦で下した。自慢の美脚には広い範囲にテーピングが施され、腰にも貼っているのが見える。決してコンディションは万全ではないが、追い込まれてもミスがなく、ラリー戦に強い。バウンドの低いボールには座り込むような体勢で対応するが、とにかく巧みだ。

　対するリシツキは4回戦で女王セレナ・ウイリアムズを破って勝ち上がってきたが、そのセレナ戦もまぐれではない。ツアートップクラスのビッグサーブを武器とし、芝と相性のいいリシツキが、その年の全仏チャンピオンをウィンブルドンで破るのはこれで4回目だ。09年にスベトラーナ・クズネツォワ、2011年はリー・ナ、昨年はマリア・シャラポワ、そして今年はセレナ。優勝候補筆頭を破っても気を緩めず、準々決勝はノーシードで勝ち上がってきたカイア・カネピに快勝。2年ぶりの準決勝進出を決めた。

　過去の対戦は1勝1敗でいずれもハードコート。ラドバンスカはもう一つの準決勝の二人にはいずれも負けたことがない。バルトリには7勝、フリプケンスには2勝。この試合がヤマだ。