愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!
杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】
第150回 楽しみな「ワールド・テニス・デー」A
サンプラスやレンドルのプレーが見られる貴重な機会です!

写真:AP/アフロ
「ワールド・テニス・デー」は、テニスの楽しさを子どもたちに伝えようと、現役のトップ選手であるジョコビッチやマレー、さらにアガシとサンプラスといったレジェンド(伝説の名選手)が参加、世界3都市で同じ日に開催されるエキシビションマッチです。
その中でも、楽しみにしていたのはサンプラスのプレーです。
今年の全豪では表彰式のプレゼンターをつとめたサンプラスですが、以前はほとんどテニス界の表舞台に姿をあらわすことがありませんでした。マッケンローなどはATPワールドツアーの「チャンピオンズツアー」に出場したり、グランドスラムで開催されるシニア(レジェンド)トーナメントに参加しますが、サンプラスはそういう機会が極端に少ない選手です。
ですから今回、エキシビションでプレーを披露するのは、とてもめずらしいことだと思います。
2002年の引退から10年以上経っていますが、全盛時のプレーが今でも脳裏に蘇ります。なんと言っても、あのサーブ。また、フォアハンドも速いし重いしで、ドカンというボールです。動きの面ではブランクがあるため以前のようなスムーズさはないかもしれませんが、出場するからには、あの高速サーブと鋭いショットを見せてくれるでしょう。
対戦相手はアンドレ・アガシ。ほれぼれするようなグラウンドストロークは健在だと思います。サンプラス対アガシ! 絶対に見てみたい顔合わせですね。
この時期に、これだけ豪華なメンバーが集合するのは、やはり参加する選手たちの意識の高さなのだと思います。特に現役選手は、個人のツアーだけでも大変なスケジュールなのに、それに加えてエキシビションマッチに時間を割くというのは、意識が高いことと、ツアー生活を丸ごと楽しもうという気持ちのあらわれだと思います。
レンドルは、どういうプレーを見せてくれるか、ちょっと不安もありながらも(笑)、楽しみです。
彼のプレーには動きが重要な要素ですが、ここ数年のレンドルは体型的にもかなり大きくなっていて、スリムだった現役時代とは別人のようです。ストイックに現役生活を送った人なので、ギュッと押しつけられていた反動なのでしょうか。現役時代のような動きは難しいかもしれませんが、そのギャップを、どうカバーしてくるか。準備期間が短いので急激な変化は難しいかもしれませんが、プロフェッショナルとして、やるというからにはやるでしょう。ある程度、調整はしてくると思います。
マレーのコーチとしては、教え子のプレーに一喜一憂しない姿、アイスマンのように何も表情に出さない姿が印象的です。ただ、それをエキシビションマッチでやられると怖いものがありますが(笑)。
レンドルはパット・キャッシュとプレーします。キャッシュは日本に来たときに茅ヶ崎(神奈川県)の私たちのアカデミーまで取材に来てくれました。すごく気さくな方で、優しさにはびっくりしました。
彼は典型的なサーブ&ボレーヤーで、ファーストボレーで組み立てて次のボレーで決める形を持つ選手でした。ファーストボレーをコントロールして深く打ったり、あるいはオープンコートにコントロールしたりと、力だけでなく「技」を見せてくれました。キャッシュのようなボレーヤーと、グラウンドストローカーのやりとりには見応えがありましたね。
今はスピードテニスの時代で、打ち方もテニスの内容も変わってきましたが、エキシビションの楽しさは、キャッシュのサーブ&ボレーのように、レジェンドたちが昔のままのプレースタイルで登場するところです。確固たるものとして、あくまでも自分のスタイルでやり通すのか、もしかしたら、少し現代風になっている選手もいるかもしれません。テレビの解説などで今のテニスを見る機会もあると思うので、それが自分のテニスにも生きていたりすると、それも面白いですね。
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- 杉山 愛
- 生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。