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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第137回 全日本選手権で活躍した若手選手たち その1

自分のことのようにうれしい穂積絵莉選手の初優勝でした

愛'S EYE

写真:アフロスポーツ


 今年の全日本選手権は若手の活躍が目立った大会でした。女子はベスト4が全員、21歳以下。男子も18歳の西岡良仁選手が準優勝するなど、若い選手たちの成長を感じさせる大会となりました。

 女子シングルス優勝は19歳の穂積絵莉選手。私のホームコートでもあったパーム・インターナショナル・テニス・アカデミーでテニスを始め、去年、プロになった穂積選手の優勝は、自分のことのようにうれしかったというのが正直な気持ちです。

 世界で活躍したいと思っている選手も含め、全日本はだれもが取りたいタイトル。私自身がそうでした。ですから、自分が優勝したときのことを思い出し、自分と重ねながら見ていました。穂積選手は決勝こそ3セットでしたが、そこまですべてストレートで勝ち上がり、この舞台でこういう力が出せるんだなと正直、驚かされました。

 穂積選手は第5シードで、優勝して当たり前というよりはチャレンジャーの立場で臨めたことも幸いしたと思います。ただ、準々決勝で第1シードの瀬間詠里花選手を破ってからは、どれだけチャレンジャーになりきれるかがキーになると見ていました。

 準々決勝や準決勝は内容もすごくよかったと思います。そのまま優勝できたらそれにこしたことはないのですが、自分自身に置き換えても、決勝では硬くなることが予想できました。準決勝までがよかったからこそ、「あれ? 今日はおかしい」とパニックに陥ってしまう恐れがあると見ていました。テニスはメンタルスポーツなので、「どうしたんだろう? こんなはずじゃない」と思いながら終わってしまうことが結構あるのです。私自身、若い頃、そういう悔しい試合をいくつも経験しています。

 ですから、決勝の前に「そういうこともあるよ」ということだけは彼女に言っておくつもりでした。パフォーマンスが落ちてしまっても、「あ、このことを言っていたのか」と落ち着いて対処し、「よし、この中で頑張るぞ」と思ってほしかったからです。硬くなりながらでも、その日のベストを尽くしてほしかったし、そうすることで、もし負けたとしても足りないところも見えてくると思ったのです。

 やはり、決勝は硬くなっていて、本人も「もっとできた」と話していました。課題も与えられたと思うのですが、それでも全日本で優勝するというのは並大抵のことではありません。自分にとっては赤ちゃんの頃から知っている「絵莉」なので、親心というか姉心というか、特別な感情もあります。「よくやったな」と感動しました。

 穂積選手は全日本ジュニア12歳以下で初めて日本の頂点に立ちました。ハードヒットするタイプでしたし、当時から体にも恵まれていたので、パワーで押し切ることができたのです。14歳以下、16歳以下になると、全般的にディフェンス力が攻撃力を上回る傾向が出てきます。それまではガンガン打っていたのに、ディフェンス主体に方向転換する選手もいます。でも彼女は、将来も見据えながら、アグレッシブなテニスを続けました。思うように勝てず、大変な時期だったと思うのですが、杉山芙沙子コーチとも話し合いながら、「これで行く」と信じてやってきたからこそ今があるのだと思います。

 準優勝の今西美晴選手は今年、東レPPO(予選)など何度か試合を見る機会がありました。ディフェンス力があるし、早いタイミングでライジングをとらえて攻撃したり、頭のいい選手だなと思って見ていました。気持ちがぶれない選手でもあります。全日本の準決勝もそうでしたが、先行されてもコツコツと自分のやるべきことを見つけ出す力があります。こういうしっかりしたところ、冷静さやメンタルは、海外の選手と戦うときにも流れを引き寄せる力につながると思います。

 女子のベスト4は誰が勝っても初優勝でしたから、選手たちが硬くなっているのもわかりました。みんな世界を目指して頑張っている選手たちですし、今回優勝できなかった選手も、また「次」があるはずです。



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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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