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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第133回 ラケットについての素朴な疑問に答えます

コートに持ち込むラケットは6本。ストリングスは全部、張り立ての新品です


 選手はみな、ラケットを何本も入れた大きなラケットバッグをコートに持ち込みます。プロはずいぶんたくさんラケットを持っていくんだな、試合の時は一体、何本くらいコートに持ち込むんだろう、と興味を持たれた方もいるかもしれません。

 私自身は、遠征に持っていくラケットは6本くらいでした。試合に入るときは、そのラケットをすべて新品のストリングス(ガット)に張り替えてコートに持ち込みました。

 普段の練習ではストリングスのテンション(張りの強さ)というのはそれほど細かく気にしないのですが、試合は別です。もちろん自分にとっての最適テンションで張ってもらうのですが、試合会場によって、同じポンド(キロ)数で張ってもらっても実際にボールを打つとかなり感覚が違うことがあるんです。そこで、試合会場に行ったらすぐにストリングスを張りに出して、この会場では何ポンドが自分にとっての適正テンションなのかというのを見つけます。それが分かったところで、試合前にすべて新しく張り替えるのです。

 天候が大きく変わった場合、例えば気温がすごく上がっているなとか、すごく寒いなとか、今までの環境と極端に違う時はそれに応じてテンションを調整します。私は、3本は今まで通りのテンションで張って、残りの3本は少し硬めにしたり緩めにしたりというようにギャップを持たるようにしていました(暑い時は少し硬めに、寒い時は少し緩めのテンションで張るようにします)。

 試合の途中で「思ったより飛んでいかないな」とか「飛びすぎてしまう」というので、コート上で張り替えを頼む選手もいます。私はそうやって二通り用意していたので困ることはなかったのですが、男子選手には比較的、途中で張りに出す選手がいますね。会場にはストリンガー(選手のストリングスを張る専門家)が必ずいて、15分とか20分で張り上げてくれるので、「あ、違うな」と感じたら張り替えを頼むわけですね。

 選手たちがストリングスを張り立てのラケットを使うのは、時間が経ってストリングスが伸びてテンションが変わるのを避けるためです。

 そういえば、最近は見かけませんが、前はストリングスが伸びないようにコートサイドのクーラーでラケットを冷やしている選手もいましたね。当時はナチュラルガットを高いテンションで張る選手が多かったので、クーラーで冷やさなければ伸びてしまう(テンションが保てない)ということだったのだと思います。

 今ではストリングスの素材が変わり、シンセティック(合成繊維)が主流になっています。昔のように縦も横もナチュラルガットという選手はいなくなりました。ストリングそのものの進化もあって、クーラーで冷やす必要はなくなったのです。

 次回は、ラケットのほかに選手がコートに持ち込む持ち物について書いてみたいと思います。

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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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