[an error occurred while processing this directive]

愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第123回 全米オープンへの誘い

スポーツ大国、エンタテイメント大国で開催されるグランドスラム

愛'S EYE

写真:アフロ


 全米オープンの開幕が近づいてきました(本戦は26日スタート)。そこで今回は大会の特徴や舞台となるニューヨークについて書いてみます。
 全米オープンの会場は同市のクイーンズ地区にあります。少し移動に時間がかかりますが、選手や関係者はマンハッタンに泊まります。車を使って、道路が空いていれば20分、渋滞に巻き込まれると1時間くらいでしょうか。

 マンハッタンに泊まる利点は、オンとオフのメリハリが作りやすいことです。高層ビルの街並みを歩き、カフェに行ったり、お店を見たり。行きつけの日本食レストランもあります。そうやってリフレッシュできるだけでなく、この街は歩いているだけでなにかエネルギーを与えてくれるような気がします。パリなどもそうですが、大都会だけが持つエネルギーが心地よく感じられるのです。

 翌日に試合がない時はブロードウェーにミュージカルを見に行ったり、結構、エンジョイしていました。松井秀喜選手がヤンキースにいた頃、行きつけのレストランでたまたまお会いして、ヤンキース対レッドソックス戦のチケットを手配していただいて観戦に行ったこともあります。こういう楽しみもニューヨークならではですね。

 会場は「やはりスポーツとエンタテインメントの国だな」と感じさせる雰囲気です。スケールの大きさとテニスファンの層の厚さを感じますね。みんなテニスを楽しんでいるし、全米ならではの特徴は、この大会以外にもいろいろな会場を回ってテニスを見ている方が多いことです。

 ウィンブルドンは1年にウィンブルドンだけ見る方も多く、極端に言えばテニスファン以外の方も見に来ています。でも、全米は、観客席で隣同士で見ていても、話していることが評論家みたいで(笑)。話を聞いていると、全米以外の大会も見に行っていることがわかります。みんな、よくテニスを知っているな、テニスを愛する国民だなと感じますね。

 開幕前日は「キッズデー」のイベントで盛り上がります。毎回、一流歌手が登場するので、今年は誰が来るんだろう、というのもテニスファンの楽しみの一つです。テニスだけの大会ではなくて、まさに祭典、本当にスケールが大きいなと感じますね。

 試合に関しての大きな特徴は、最終セットもタイブレーク方式で行われることです。ほかのグランドスラム大会では採用していませんが、これは見ている者をよりエキサイトさせる試合形式ですね。私自身、見る立場になって、最終セットのタイブレークもいいなと感じています。運が左右するところもあるにせよ、そこまで十分競ったのだから、最後はタイブレークでいいんじゃないか、という考え方ですね。試合が最高に盛り上がったところでタイブレークだから、選手と観客はさらにテンションが高まります。アドバンテージ方式とはまた違った面白さですね。

 気候はかなりの厳しさです。暑さというと全豪オープンがよく話題になりますが、それと同じくらい暑い夏もありました。ニューヨークは比較的湿度が高く、カラッとしていないので、選手にとってはキツイんです。雨にもよく悩まされますね。デコターフのサーフェスは少しの雨でも滑って、芝と同じくらい雨に弱いのです。

 雨と言えば、つらい思い出も……。スキアボーネとの対戦が雨で何度も途中順延になり、1試合が4日がかりになったのです(03年4回戦)。逆転負けという結末でしたから、つらい思いになってしまいました。

 ただ、選手はこうした気候の問題にも対処しなければなりません。雨で日程がずれ込むと、スケジュールはどうしても地元選手に有利に運ばれます。なかなか全員にフェアにというわけにはいかないのですが、それも全て受け入れ、自分本来のパフォーマンスを発揮して、最終的に勝たなくてはいけない。グランドスラムで1試合を勝ちきるのは大変なことですが、そこに気候がからむとさらに難しくなります。その意味では、相当タフなグランドスラムということもできますね。

勝負をこえた生き方
好評連載中の杉山愛オリジナルコラム「愛’s EYE」が、
書き下ろしを加え書籍化!!

購入はこちらから>> 

杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

[an error occurred while processing this directive]
[an error occurred while processing this directive] [an error occurred while processing this directive]