愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!
杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】
第121回 ウインブルドン女子ダブルス4強、青山修子への期待
果敢にツアーに挑む青山選手。単複両方で頑張ってほしいです

写真:VI Images/アフロ
下部ツアーからスタートして、ランキングをとり、いざ世界のツアーに出ようと思ったときに、スケジュールの立て方や大会の選び方で迷うことがあります。下部ツアーのITFでじっくりやるのか、WTAツアーに挑むのかという選択は難しいところです。まして、彼女のようにダブルスの成績が先行すると、一層、選択が難しくなります。
でも、青山選手は果敢に攻めているというか、トライしています。だからこそWTAでもダブルスタイトルを2つ取ることができているのだと思います。ツアーの中で揉まれて、さらに力をつけていると感じます。また、いろいろな選手とダブルスを組んで常に好成績を残しているのは、彼女の幅の広さを表しています。
ダブルスプレーヤーとしてクローズアップされましたが、本人としてはシングルスで頑張りたいという気持ちも強いと思います。シングルスとダブルスのランキングに差があると、出場できる大会も違ってくるのですが、彼女自身、ダブルス1本にしぼるつもりはないようです。
シングルスではツアー大会に予選から出たり、下部大会に出たりということで、苦しい思いをしているところも正直あると思うのですが、今後、どうバランスをとっていくかですね。
単複両方に出るというのは−−これは私自身がやっていたから言えるのですが−−シングルスをプレーする上でもダブルスをする上でも、両方にメリットがあります。
もちろん、毎週毎週、両方で優勝にからんでいたら体力的に大変ですが、そこまでうまくいかないのがツアーです。逆に、シングルスでうまくいっていないときにダブルスで助けられたというか、ダブルスに精神的に引っ張られたということもありました。実際、ダブルスで勝ち残っていればホテルなどの経費も大会側から支払われるので、経済的に見ても大きなプラスです。
バランスは簡単ではないけれども、シングルスとダブルス、両方トライしてもらいたいなという気持ちが私にはあります。
フェドカップ代表での彼女の役割も大きなものになっています。フェド杯では、今年のワールドグループ1回戦のロシア戦もそうでしたが、ダブルスがキーになることが少なくありません。そこで、チームとしては、信頼できるダブルスプレーヤーが出てきてほしい、いいダブルスチームができてほしいという強い気持ちが常にあります。その中で、4月のスペイン戦で初出場した青山選手は重要な役割を果たしていくことになると思います。
国の代表であるフェド杯のメンバーになり、グランドスラムでも大活躍。体格に恵まれない選手でも前向きにトライしていけばチャンスが出てくるということを彼女は示してくれました。これは、あとに続く選手にも大きなモチベーションになると思います。もちろん、本人もさらにモチベーションを上げているでしょう。まだまだ若いですし、これからですよね。私も応援しています。
- 杉山 愛
- 生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。