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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第119回 ダブルスはコミュニケーション その2

四大大会ダブルス初優勝の原動力はパートナーとのコミュニケーションでした

愛'S EYE

写真:ロイター/アフロ

 ツアーでは、毎週のようにダブルスパートナーを代える選手もいますが、そうしているとその場限りの関係になってしまい、一貫したコミュニケーションがとれません。でも、半年間、あるいは1シーズン、ずっと組んでいこうと決めたパートナーであれば、徐々にコミュニケーションがうまく取れるようになります。

 現役時代の2000年、私はダブルスにも力を入れようと考え、ジュリー・アラール デクージス(フランス)とチームを組みました。全豪の前哨戦でいきなり優勝したのですが、全豪はベスト8に終わり、その後、3月の大会でも、ふがいない試合をして負けてしまいました。

 その時、私のコーチとジュリーのコーチが話し合い、「このチームはグランドスラムを取れるよね」という話で一致しました。そこで、この機会に各自が思っていることを−−何を目標に、どういうプレーを目指したいかというのを、それぞれ紙に書いて見せ合おうということになりました。会話だと相手の意見に引っ張られたりするので、一人一人が紙に書いてそれを見せ合うことにしたのです。

 4人が思っていることを書いて、パッと見せ合うと、みんな、書いたことは同じでした。

〈グランドスラム優勝〉

 それが全員の夢でした。そうして「この目標に向かっていこう」と、進む方向が決まったのです。

 当時、シングルスと同じようにダブルスを重視していた選手は多くなかったので、そんなふうにオフコートでミーティングをするチームもなかったと思います。でも、こうしてコミュニケーションをとって取り組んだからこそ、私たちはこの1年、ツアー9タイトルを獲得し、全豪のベスト8から全仏ベスト4、ウィンブルドン準優勝と一つずつ階段を上り、全米で初優勝することができたのだと思います。

 会社ではないけれど、パートナーと同じ方向を向くために、また、そこにどうやって到達するかという戦略を話し合うために、コート外でのミーティングは大切だと思います。ダブルスのチームを組むということは、組織で何かをするのと同じなのかもしれませんね。

 お互いシングルスもありますから、そろってダブルスを練習する時間は取りにくいのですが、だからといって試合の時だけ一緒にプレーするのではなく、オフコートでプレースタイルについて、または二人のダブルスの位置づけといったことを話し合うのです。

 私の場合、そうすることでお互いの意思が理解できて、エネルギーのベクトルが同じ方向を向き、結果が伴っていったのだと思います。

 ダブルスをプレーする一般愛好者の方々にも参考にしていただけるとうれしいです。

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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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