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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第114回 テレビ観戦にも役立つテニス基礎講座 ダブルス編

サインプレーなど、作戦を実践しやすいのがダブルス。そこに醍醐味が

愛'S EYE

写真:ロイター/アフロ

 みなさんもダブルスでサインプレーをしている場面をご覧になったことがあると思います。「何のサインだろう?」と思われた方もいるでしょう。

 一番多いのは、サーブをするチームの前衛がサインを出すケースです。まず、サーブのコース、そして、前衛が動くか動かないか。つまり、一つのプレーで2回、サインを出します。

 まずはサーブのコース、ワイドかボディかT(=センター。サービスラインとセンターラインがTの字のように交わるエリア)のどこをねらうかというサインを出して、そのあと、例えば前衛が(ポーチに行くなど)動くのであれば「パー」、フェイクを入れてそのまましてステイするなら「チョキ」とか、そんなサインを送ります。ダブルスのサインプレーはこれに尽きると言ってもいいくらいです。

 リターンの時はサインではなく、毎回話し合ってプレーを決めます。ファーストサーブなら普通にクロスに返球するとか、セカンドサーブはダウンザラインで勝負する、あるいはファーストサーブからダウンザラインで勝負にいく、というようなことを私たちは常に話し合って決めていました。

 こうやって決めておくことによって、次の動きが違ってきます。ですから、毎ポイント、そのポイントが始まる前に作戦を話し合って確認する、というのがダブルスをプレーする選手の決まりごとになっています。

 ラリーになったら、二人のあうんの呼吸でプレーしたり、もともと持っているテクニックで戦うのですが、サーブとリターンだけは事前にプレーを決めることができます。逆に言うと、それしか決めていなかったと言ってもいいですね。

 私は作戦を立てる方でしたから、試合の状況を見て、例えば調子の悪い方の選手にボールを集めるとか、作戦を考えてパートナーに伝えます。相手チームのウイークポイントも前に対戦していれば分かっているし、初めてでも、いろいろな選手に特徴を聞いて作戦を立てていきます。

 シングルスより作戦が生きるのがダブルスです。シングルスは実力と実力のぶつかり合いの要素が強く、例えば相手がビッグサーバーでリターンが返らなければインプレーにならないし、こうやればうまくいくとわかっていても、やらせてもらえないことも少なくありません。実力に差があれば、力で封じ込められてしまうわけですね。その点、ダブルスはシングルスより作戦を実行しやすいところがあるのです。

 だから、本当に素晴らしいグラウンドストロークやボレーがなかったとしても、作戦や技、そのペアならではの良さで勝っていくダブルスチームが多いのです。

 もっとも、最近は個々の実力が上がってきて、作戦というより、サーブ力であるとか自分の持っているもので戦う選手も増えています。戦術を生かして戦うペアにとってはタフになっているのですが、それだけに、話し合ったりサインプレーを使うなど、しっかり作戦を立ててプレーすることが大切になっています。

 その時はポイントにつながらなくても、相手に考えさせることも重要です。「そっちにも打っていくよ」というのを知らせることができれば、前衛の動きを止めることができます。思い通りにプレーできるというのが一番楽なので、そうさせないように「次、何が来るんだろう?」と考えさせるわけですね。そういうところにダブルスの醍醐味、おもしろさがあると言ってもいいでしょうね。

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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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