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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第103回 出場するトーナメントはこうして決める

ランキング、サーフェス、自分との相性。いろいろな要素から大会を選びます

愛'S EYE

写真:ロイター/アフロ

  前回のコラムでも書きましたが、大会の回り方はランキングによって大きく変わってきます。このランキングなら「プレミア」「インターナショナル」などと決まってくるのですが、実際は同じグレードでもドローがタフなところと比較的楽なところがあります。そこで、去年のデータを元に「ここだったら本戦に入れる」「こっちは予選からだな」などと計算して大会を選びます。もちろん、データ通りにいくとは限らないので、一つの賭けではありますね。

 今年の全豪オープンの前哨戦、シドニーの大会では、森田あゆみ選手もクルム伊達公子選手も予選を勝ち上がり、本戦で戦いました。たくさん試合をこなして調子に乗っていったことで全豪で活躍できた、という見方もできます。ですから、必ずしも本戦から出られることがベストというわけではなく、予選からでも試合数をこなして調子を上げていけるというプラス面もあるのです。

 私自身は、大会数ではなく試合数を目安にしていました。大会数は意外にあてになりません。勝ち上がれる大会もあれば早く負けてしまう大会もあるので、必ずしも試合数をこなすことにつながらないのです。そこで、実際に試合をした数、私は年間60試合はやりたいと思っていて、その数をこなすために、時にはグレードが一つ下で、賞金額も少ない大会に出ていました。

 ただ、下部ツアー(ITFサーキット)には出ていませんでした。選手によっては試合数をこなすために下部ツアーもスケジュールに入れていますが、下部ツアーには下部ツアーの戦い方、勝ち方というのがあって、それに慣れてしまうのはマイナスです。何が一番違うかと言えば、攻撃の早さですね。下部ツアーだと「あっ、いけない、決められてしまう」というボールを打っても、普通のラリーになってボールが返ってくる場合があります。WTAの上位選手なら間違いなくノーチャンスなのですが。そういうプレーの質の違いがあります。

 ですから、森田選手は割合早い段階からWTAを中心に回っていました。若かったこともあって、ポイントを求めるより高いレベルでもまれたいと考えたのです。また、今はもまれていても、このテニスができていれば絶対に上に行けるという自信もあったのだと思います。今、彼女はすごく力をつけてきて、ここ2〜3年で、やってきたことが形になってきたなと感じます。

 選手にとってはグランドスラム(四大大会)が最大の目標ですから、開幕が近づくと、前哨戦に出ながら調整していきます。経験のある選手ほど、グランドスラムに照準を合わせてピーキングを行います。私の場合、グランドスラムの前週は、試合に出ながらもトレーニングで追い込んでいましたね。もちろん、その試合は勝ちにいくのですが、並行して次週のために調整していました。

 長いシーズンですから、このように「強弱」をつけることも必要です。ずっと試合に出ていたら、オフシーズンにいくら良いトレーニングができていても、1年は持ちません。私も、ベテランと呼ばれるようになってからは、ヨーロッパのクレーコートシーズンに入る前に短いトレーニング期間を作って体に刺激を入れ、もう一度出直すようにしていました。どこでしっかり休んで、どこでしっかりトレーニングするのか。ベテランに限らず、そこは一つのカギですね。

 あとは、その選手が住んでいる地域とか、プレーしやすいサーフェス、相性のよさなど、いろいろな要素を考えながらコーチや自分のチームと話し合って、出場する大会を決めていきます。

 選手には自分のプレーしやすい場所というのがあって、私の場合、サンディエゴ(アメリカ)の大会が相性抜群でした。シュテフィ・グラフ、アマンダ・クッツァー、ジェニファー・カプリアティといったトップ10選手を破ったのが、この大会です。リラックスできて居心地がよい場所というのがどの選手にもあって、そういうところではいいプレーができますね。

 私の場合、成績がよかったのはリゾート地の大会ですね(笑)。会場の中にゴルフコースがある大会が一番調子よかったかな?

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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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