愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!
杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】
第97回 フェド杯ロシアに挑む日本女子代表への期待
当たって砕けろではなく、ロシアを砕いてほしいと思います
写真:北村大樹/アフロスポーツ
日本代表は森田あゆみ(WTAランキング57位)、クルム伊達公子(77位)、土居美咲(84位)、奈良くるみ(153位)の4選手。ロシアはマリア・シャラポワ(3位)らランキング上位の2選手がメンバーに入らず、マリア・キリレンコ(13位)、エカテリーナ・マカロワ(20位)、アナスタシア・パブリウチェンコワ(31位)、エレナ・ベスニナ(33位)というチームになりました。
ワールドグループ優勝4回の強豪ロシアと、アウェーでの対戦ですから、正直、苦戦は覚悟しなければならないでしょう。それでも、楽しみな一戦であることは間違いありません。
現在、日本はトップ100に3人の選手が入っています。土居選手は、近くまで迫りながら100位に入れない時期が長かったのですが、昨年の終盤にこの壁を破り、いい形で2013年シーズンを迎えました。全豪オープンでは、この3人がそろって1回戦を突破しています。森田選手、伊達選手も好調で、それだけにこのロシア戦への期待も高まります。
伸び盛りの選手が多いチームですから、彼女たちには、フェドカップの経験を個人戦に生かしてステップアップしていってほしいと思います。前にも書きましたが、フェド杯でいい雰囲気が生まれ、それが個人戦にも生きた例はイタリア、チェコなど、たくさんあります。日本チームにも、そういう連鎖が生まれるといいなと思います。
相手はホーム開催のプレッシャーもあるはずです。逆に日本がアウェーで思いきってできる、ということも十分ありえます。相手は女子テニスを引っ張る強豪チームとはいえ、実績のあるシャラポワ、ナディア・ペトロワ、スベトラーナ・クズネツォワを欠いています。日本にもチャンスはあります。やりがいのある相手ですから、思い切りぶつかって、当たって砕けろではなく砕いてほしいと思います。
最近、日本は男子は勢いがあるが女子は……、と言われることが多くなっています。確かに、森田選手に続く若い世代が少し伸び悩んでいるようにも見えます。
この世代の強化は、日本テニス協会にとって大きな課題です。男子は添田豪選手や伊藤竜馬選手など、ナショナルチームとしての強化が成功していますが、女子はそこまで大きな成果は得られていません。ただ、注意して見なければいけないのは、女子と男子は性格面、メンタル面も違うので、強化体制も男子と同じようには考えられないということです。
例えば、男子選手はプライベートとオンコートを切り離して考えられますが、女子は一緒くたになりがちです。コーチとの関係やプライベートライフなど、すべてがバランスよくいっていないとパフォーマンスに直結しないところがあるのです。それだけに、コーチとの間により深い信頼関係を築き、そのコーチに伴走してもらう形で活動した方が良い結果を得られる場合が多い、と私は考えています。
ですから、若手の強化に関しては、日本協会やナショナルチームの「立ち位置」がとても大事になってくると思います。
もちろん、選手がナショナルチームに全部任せたいと希望すれば別ですが、基本的には、選手とそのコーチに「プラスアルファ」を与えることが、ナショナルチームの役割として一番大切なことではないかなと思います。
例えば練習環境を整えるとか、視野を広げられるようなアドバイスを与えるとか、何か今までとは別のエッセンスを必要としている選手にアイディアを与えるとか、ナショナルチームにできることはたくさんあると思います。
それぞれの選手がジュニア時代から重ねてきた歴史があったうえで、今の姿、今の実力があることを協会やナショナルチームは忘れてはいけないと思います。今の姿だけではなくて、今までの流れ、これからの流れと、一連で見ないことには選手は育たないと思います。そのために、プラスアルファとして協会の立場で何ができるか、ということを第一に考えてもらえることを望みます。
- 杉山 愛
- 生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。
