愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!
杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】
第87回 デビスカップ・ワールドグループ決勝の展望
スペインvsチェコ。タイプの違うテニス大国同士の決勝です

写真:AP/アフロ
チェコの主力はベルディヒとステパネク。ベルディヒはグランドスラムでも上位に食い込んでいける実力者。全米でも爆発し、フェデラーを破って準決勝に進出しました。現在のランキングは自己最高に並ぶ6位と、好調です。ステパネクは33歳とキャリアが長く、本当にテニスをよく知っている選手です。特に今シーズンはダブルスでも大活躍、全豪ではパエス(インド)とのペアで四大大会初優勝を飾っています。この2人がいれば、決勝でも何が起きるか分からないという気がします。
ナダルのいないスペインですが、フェレールというエースがいます。今年はツアー優勝7度。もちろんデ杯でも主力としてチームを引っ張っています。彼の強さは、まず身体的な強さです。肉体的に、そして精神的にも、いいバランスだからこそ、あの体格でも、こうして長くトップ10にいられるのだと思います。また、熱さを内に秘めて、黙々と、淡々とプレーして、しかも観客のサポートを力にできる選手です。やはり、チームの団結力や、会場のエネルギーを自分のパフォーマンスにうまく生かせるか、というのは団体戦の醍醐味です。
一つ、キーになりそうなのはダブルスです。ステパネクとベルディヒのダブルスは、デ杯通算11勝1敗という成績を残しています。ステパネクはフレキシブルで幅がある選手。何でもできるからダブルスでも対応力があって、ベルディヒのサーブ力を生かした駆け引きも上手にできるのだと思います。仮に両チームのエースが初日に1勝ずつして、第2日のダブルスをチェコが取って2−1とリードすれば、相当、相手にプレッシャーをかけられます。
対戦はチェコのホームで行われ、サーフェスは屋内ハードコート。クレーコートでのスペインの強さは圧倒的なので、当然、この環境はチェコに有利に働くでしょう。ただ、特別速いサーフェスではないでしょうし、スペインの選手も苦にはしないと思います。
それにしても、チェコはフェドカップでも優勝し、男女含めて本当にテニス大国ですね。女子も、あふれるくらい、たくさんの選手が上位に並んでいます。決して大きな国ではないのに、指導法なのか、何かほかにも要因があるのか知りたいくらいですね。
ベルディヒや女子のクビトバのように、フラット系の「ドーン、ドーン」というタイプが多いのが特徴です。チェコの冬は寒く、インドアの速いサーフェスで練習することも多いため、フラット系の選手が比較的多く生まれるのかもしれません。一方のスペインは、比較的暖かく、屋外のクレーコートが多いため、スピン系のボールで攻める選手が多く生まれています。
同じヨーロッパでも、まったく異質のプレースタイルを生み出すテニス大国同士の対決というわけですね。
- 杉山 愛
- 生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。