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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第71回 ウィンブルドンのみどころ

芝への適応がカギ。日本選手のスタイルは芝向きです

愛'S EYE

写真:AP/アフロ

 選手にとってウィンブルドンは最も調整の難しい大会です。全仏はクレーコートの前哨戦が4月から開催されていますが、芝の大会は年間を通して数大会しかありません。選手は全仏が終わるとすぐに2大会ほど芝の大会で調整し、ウィンブルドンに臨みます。

 時間がないことに加え、サーフェスの特徴でも一番ギャップが大きいのがクレーと芝です。フットワークも違いますし、ボールの質も、クレーではスピン系が有効ですが、芝ではフラット系と、大きく違います。だから、クレーの全仏からウィンブルドンへの移行はアジャストが一番難しいところなのです。

 でも、選手にとって芝でプレーする機会は貴重です。私自身、楽しみにしていて、アジャストもそんなに苦にしていませんでした。

 ウィンブルドンというと、サーブ1本で決まってしまうというイメージをお持ちの方もいるかもしれません。特に男子はそういう傾向が強かったのですが、今はそうでもありません。

 近年は、かなりバウンドも高くなったと感じます。すぐにポイントが決まってしまうサーブ&ボレーより、たくさんラリーが見られるようにというので大会側も工夫して、かなりグラウンドを固めているからです。しっかりグラウンドストロークができるようにという配慮ですね。もちろんリターンの質も上がっているのですが、サーブ1本でというより展開でポイントを取るシーンが多くなり、10年前、20年前の芝の大会より面白みが増していると思います。

 男子の優勝争いは、いつものメンバー、BIG4が中心であることは間違いありません。それに加えて、どうしてもサーブ力のある選手の名前を挙げたくなりますね。デル・ポトロ(アルゼンチン)、ベルディヒ(チェコ)、イズナー(アメリカ)といった選手たちです。彼らが上位4選手にどう挑むか。こうした選手たちが実力をつけているだけに、波乱が起きそうな予感もします。

 女子は昨年準優勝で、全仏を制してランキング1位になったシャラポワ(ロシア)と、昨年の優勝者クビトバ(チェコ)が中心でしょう。

 彼女たちはともに、最も芝に適したプレースタイルの持ち主です。シャラポワは直前のグランドスラムを取っていますし、大舞台で自分の力を発揮できる選手の筆頭ですね。クビトバは左利きの有利さに加え、フラットの重いボール、長い球足も武器になります。去年の強さもみんなの頭に刻み込まれていると思います。全仏では力を出せなかったセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)の巻き返しもありそうですね。

 日本選手に目を移しましょう。腹筋を痛めて全仏を欠場した錦織選手も、ウィンブルドンはなんとか間に合いそうですね。錦織選手はどんなサーフェスでも自分のプレーができますが、他の日本選手はクレーより断然、芝が合っていると思います。添田豪選手も伊藤竜馬選手、クルム伊達選手もフラット気味のボールで早い展開を武器にしていて、芝向きのスタイルです。中でも伊藤選手はフラットで球足は長く、ドカンドカンという攻撃的なテニス。ウィンブルドンでも積極的なプレーが見たいですね。添田選手もプレーが攻撃的になっているので期待が高まります。

 今年ならではの興味と言えば、同じオールイングランドクラブの会場でオリンピックのテニス競技が開催されることです。ウィンブルドンが終わって約3週間後にオリンピックが始まります。芝を張り替えると聞いていますが、どれだけキレイに仕上げるのか、それも見てみたいですね。


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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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