愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!
杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】
第54回 テニスプレーヤーはどうしてゴルフが好きなのか
共通点はメンタルスポーツであること。技術的にも似ています

写真提供:Getty Images
今回は、読者の方から寄せられた、こんな質問に答えてみたいと思います。
確かに、ゴルフ大好きというテニスプレーヤーは多いですね。一つには、プレーしやすい環境にあることが理由だと思います。北米シリーズでは、パームスプリングスや女子はラコスタといったリゾート地でも大会が行われます。これらの会場はテニス施設とゴルフ場がセットになっていて、そこに泊まって試合をします。ですから、ゴルフクラブ持参という選手も結構多いんです。春の北米シリーズは10日間のトーナメントが2大会続くので、時間にも余裕があり、ゴルフをする選手が多いですね。
私自身、ゴルフを始めたのは20歳の頃なので、デビューは意外に早いほうですね。道具を使ってボールを捕らえるスポーツなので、テニスと似ているところもたくさんあるし、私も始めた時から「楽しい」って思えました。若い頃は、アメリカでトーナメントがある時は時間があればコースに出ていました。アメリカのゴルフコースは気軽にできるのが一番いいですね。きれいな景色も楽しめるし、リラックスできる。ハードではないけれど、歩けるのでいい運動にもなります。リフレッシュには最高ですね。
ウォズニアッキとローリー・マキロイなど、ゴルファーとテニスプレーヤーのカップルも多いですよね。マキロイは、テニスの大会に来てプレーヤーズラウンジでみんなとビリヤードをしたりしています。ほかにもイバノビッチとアダム・スコットとか。以前はヒンギスとセルヒオ・ガルシアというカップルもありましたね。
ガルシアもウィンブルドンやUSオープンを見に来たり、テニス選手の知り合いも多いんです。以前、会場で彼がフィッシュとラリーしているのを見ていたら、ガルシアがコートの中から「見ないでよ、アイ」と。「え? 私のこと知ってるの?」と思ったのですが、彼もテニスが好きで、試合も相当見ているんだろうなと思いました。
私自身、ゴルフが好きなので、スコットのような選手がテニスの会場に来ると、ちょっと興奮します。テニス選手に会うのは当たり前だから、興奮もしないんですけど…。コート際で見ていたりすると、自分のことを見ているわけじゃないんだけど、ちょっとドキドキしたり。ミーハーなところが出てきちゃうんです(笑)。
テニスとゴルフはどちらも個人競技で、ツアーでは1週間単位であちこち転々として、というので、よく似た環境下での競技なんですね。だから、通じ合える部分がすごく多いと思います。「わかりあえる」ということで、カップルがたくさん誕生するのかもしれませんね。
相手との駆け引きがあるのがテニスで、ゴルフは対コース、対自然というスポーツですよね。一見、違うように見えて、実は両方ともメンタルスポーツなんですね。メンタル面が80%、90%占めると言われるくらい、精神的にタフでなければ戦えないのがテニスでありゴルフなんです。そういうところで、すごく似ているなと思います。
技術的にも、両方ともボールを面で捕らえるスポーツなので、似ていますね。アプローチのタッチなど、けっこうテニスと似ているところが多いですね。だから男子選手など、ハンディキャップはシングルという人が多いんです。私も90台のスコアで回っています。
テニスでは動いているボールを打つのだから、止まっているボールならもっと簡単では、という人もいますが、ボールを捕らえる面が小さいので難しいですよ。手元の角度の1度の狂いが、先に行ったら何メートル、何ヤード違う、という繊細さがあるし、しかも、それをダイナミックな動きの中でやらなくてはいけない。となると、ゴルフも本当に真剣に取り組んだら難しいだろうなと思います。
- 杉山 愛
- 生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。