心が育つ――それもスポーツのすばらしさです

　新しい年度が始まりました。入園、入学や進級を期に、子供さんにテニスを習わせたい、親子でテニスをしてみたいと考えている方もいらっしゃることでしょう。

　テニスはラケットと靴さえ準備すれば、だれでも気軽に始められます。1〜2時間もプレーすれば、たっぷりできたなと“おなかいっぱい”感も得られます。家族との時間を楽しみたいという方には最適なスポーツだと思います。

　私は4歳でテニスを始めました。両親がテニスを楽しんでいて、そこに私もついていって、というのがきっかけです。最初からプロを目指すというより、家族で楽しく時間をすごせればいいね、というのがスタートでした。

　私はもう、テニスが好きで好きで、クラブでの練習も、みんなと遊びに行くような感覚で毎日楽しく通っていました。最初から世界レベルを目指すお子さんもいれば、家族で楽しめればいいや、という方もいらっしゃるでしょう。どちらにしても、本人に「やりたい」という気持ちがなければ、なかなか続くものではありません。ですから、最初はとにかくエンジョイしてほしいですね。テニスが好きになること、それが上達の一番の近道です。

「プロになりたい」と思いはじめたのは7歳の頃ですが、あまりにも遠い目標でしたから、半信半疑というか、そこまで明確なものではありませんでした。目標を持ち、自分を信じることは大切ですが、そこはやってみなければわからないし、わからないからこそ、やりがいもあるのだと思います。

　母も、私がどんな成績を出そうと、それをボーナスというか、「あら、うまくいったわ」というくらいに受けて止めていました。子供って、ある程度、まわりに期待されるのはうれしいけれど、過度に期待されるのは得意じゃないんですよね。母は、ぐいぐい引っ張るということがなく、少し離れた所から支えてくれていたので、それが子供の私には心地よかったのです。なにかの理由で私が選手になるのをあきらめたとしても、それならそれで、家族で楽しむという原点に戻ればいい、母はそんなふうに思っていたようです。

　ただ、テニスをやっているからこそ、やっていない人より素敵であってほしい、というのはあったと思います。例えば、人に対するやさしさとか、ほかの選手への思いやりを持つというようなことですね。ですから、思いやりのない行動をするとすごく怒られました。テニスをやることで人間としても成長してほしい、という考え方が母の中では強かったのだと思います。

　わかりやすい例を挙げるなら、試合中のマナーですね。小さい子供なら、ポイントを失って悔しい時は、相手にボールを渡す時も、ポンと放り投げたくなると思うのですが、どんな時もキチンとボールを渡さなければいけない。セルフジャッジのラインコールもそうですね。「アウトになってほしい」と思っていると、インのボールもアウトに見えてしまうことがあるんです。でも、正直に、フェアにコールしなければいけない。そうしたマナーを守ることで、心がトレーニングされるのだと思います。

　相手に対するリスペクトだったり、思いやりというのはテニスをしているから、スポーツをしているから育つ部分ですよね。私は、そういうところもスポーツのすばらしさだと思っています。

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