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愛’S EYE WOWOWテニス・スペシャルコメンテーターの杉山愛が、 世界を舞台に戦ってきた経験を基に、 試合を分けたポイント分析から、 テニスを通じて得たさまざまな知識・経験まで、 独自の視点を披露する!

杉山愛 オリジナルコラム 【愛'S EYE】

第1回 私の「ライバル論」 と2010年の男子テニス界を振り返って

ライバルの存在によって、自分を知る ----私の「ライバル論」

ラファエル・ナダル,ロジャー・フェデラー

写真左より ラファエル・ナダル 写真:アフロ、 ロジャー・フェデラー 写真:ロイター/アフロ

 テニス界、そして現在のスポーツ界を通じても、最高のライバル関係と言えるのが、ラファエル・ナダルとロジャー・フェデラーです。

 彼らは、性格も、育った環境も違う、正反対のタイプです。その二人が、お互い認め合い、リスペクトしている。そのことが、言葉ではなくて、彼らの試合から伝わってきます。二人のスポーツマンシップが、試合を見ている私たちにも感じられるのです。勝った負けたというところを超えて、スポーツの素晴らしさ、テニスの素晴らしさを、二人が伝えているように思います。

 現役生活を振り返ると、私にはライバルとして意識する選手はいませんでした。日本選手の間では、ライバル視というより、仲間同士、お互い世界を目指して頑張ろう、切磋琢磨しようという意識が強かったのです。  私自身、人に勇気をもらったことはたくさんありますが、あの人がこうだから、と自分のパフォーマンスを人と比較するタイプではありません。それよりも、自分らしさってなんだろう、というふうに常に考えながらテニスに取り組んできました。  ライバルがいたら、それはそれで面白かったのかな、とは思いますが、かといって、ライバルがいないからつまらないとか、やる気が出ないなどと思ったことはありません。

 もちろん、人と比べて「あの人が頑張っているから私も頑張ろう」と意欲を燃やすタイプの人もたくさんいます。ライバルに刺激されて、それが自分を高めることにつながれば最高ですよね。ナダルとフェデラーが素晴らしいのは、彼らがお互い高め合う関係だからです。

 スポーツだけでなく、お仕事をしていくうえでもライバルの存在は大切なのでしょうね。ライバルがいた方が張り合いがある、刺激されて、もっと頑張れるという方も少なくないと思います。ただ、そこはタイプによるというか、自分の哲学にかかわる部分ですよね。要は、自分がどうしたら成長し続けられて、チャレンジし続けられるか。ライバルがいた方が闘争心とか向上意欲が沸くという人は、何が何でもライバルを見つけたほうがいいでしょうし、人のことより、自分をしっかり持って、自分はどうしていきたいのか、と常に向き合うことで力を発揮できるタイプの方もいらっしゃると思います。

  私は、どちらにしても自分を知ることがすごく大事なのかなと思います。  私は「Be The Best You Can Be」という言葉が大好きです。自分のなりうるベストを目指す、現役時代の後半はこれが私のモットーでした。ですから、自分を知り、自分と戦うことによってパフォーマンスを上げていくというのが、私のやり方でした。自分の力をどうやったら発揮できるかと考え、それには、まず自分を知ることだと考えたのです。

 ライバルを通して自分を知るということもあるでしょう。「相手に攻められることで、そこが自分の弱点と見られていると気づき、集中して練習した。相手があるからこそ自分が高められるんだよ」。これはフェデラーの言葉です。  ライバルと比べるのか、自分と会話するのか。そのちがいはあっても、結局は自分を知ることが大事なのではないか、それが自分を高めることに結びつくのではないか。私はそう考えています。

2010年の男子テニス界を振り返って

 今回と次回は2回に分けて、2010年のテニスシーンを振り返っていきます。まず、男子テニスについてお話しします。  やはり、勢いを感じたのはナダルですね。クレーコートの全仏オープンで2年ぶり5度目の優勝。続くウィンブルドンも優勝しました。全仏で優勝した次の日にはもうウィンブルドンに向けてグラスコートで練習しているのですから、頭が下がります。そして、これまでベスト4が最高だった全米オープンで初優勝し、史上7人目の生涯グランドスラムを達成しました。

 力をつけたな、と思いますし、王者の風格が出てきましたね。以前から彼のプレーは並外れたエネルギーを感じさせるものでしたが、それに加えて、今の彼には何かオーラを感じます。楽天ジャパンオープンでは初めて日本のファンにプレーを披露し、来日を待ちわびていたファンを熱狂させました。やはり、彼のパフォーマンスは見る人を魅了し、感動を与えてくれますね。

 一方、フェデラーもまだまだトップで戦えることを証明しました。各メディアでは、そろそろ彼も終わりなのではないかという話題も出るようになっていました。確かに、マッチポイントを握りながら逆転を許すなど、彼らしからぬ試合もあって、ファンを心配させる雰囲気も一瞬、漂いました。ただ、他の選手に話を聞くと「なに言ってるの。彼はいまだに王者だよ」という声が多かったのです。もちろん私も彼らと同じ意見です。  フェデラーには、何度か1対1のインタビューをお願いしました。大会中のインタビューですから、時間的な制限があり、2つか3つの質問しかできないのですが、彼は気を利かせて、いつもこちらが期待した以上の答えを返してくれます。これは、よほど精神的な余裕がなければできないことでしょうね。また、インタビュアーである私に対する配慮も感じます。こうした人間性が、彼が王者として長く君臨できるひとつの要因なのかなと思います。

 その他に今季の男子テニスで興味深かったのは、ロビン・ソダーリングやトーマス・ベルディヒといった大型プレーヤーの台頭です。彼らはスケールの大きなプレーヤーだけに、以前は粗さも見られたのですが、それも消え、うまさが出てきたと感じます。ナダル、フェデラーの「2強」に対抗できる選手が出てきたことで、男子テニスはさらに興味深いものになっていくでしょう。

グランドスラム現地特派員第1弾!
「全豪オープンテニス特派員募集」への出題テーマを発表!


2011年のグランドスラムすべてにご招待決定!WOWOWご加入者の皆様の中から各大会1組2名様を特派員としてご招待いたします。現地速報ブログなどで、「グランドスラムの魅力をお伝えいただく」まさに「特派員」としてのご招待です。番組での紹介も予定しています。
第1弾は、全豪オープンテニスを現地で観戦して、世界最高峰の熱戦をレポートしてくれる方を募集いたします。
今回の「全豪オープンテニス特派員募集!」に必要なレポートのテーマは:
「2010年のテニス界を振り返っての感想、及び2011年のテニス界に期待すること」
テニスを観てその感動を伝えたい、というテニスファンの方のご応募をお待ちしています!特派員の方は杉山さんと現地メルボルンでお会いできるチャンスもあります。

■応募要項■
日時:2011年1月15日(土)出発、3泊5日(予定)
   ※開幕戦からのご招待になります。
   ※詳細は決定次第発表いたします。
会場:オーストラリア・メルボルン メルボルンパーク
募集人数:1組2名様

応募締切:2010年12月27日(月) 24:00

ご応募はこちらから>>

勝負をこえた生き方
好評連載中の杉山愛オリジナルコラム「愛’s EYE」が、
書き下ろしを加え書籍化!!

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杉山 愛

杉山 愛
生年月日:1975年7月5日
出身:神奈川県
主な戦績:
WTAツアー最高世界ランク シングルス8位 ダブルス1位
国際公式戦勝利数:シングルス492勝 ダブルス566勝
WTAツアー:シングルス優勝回数6回
ダブルス優勝回数38回
公式戦通算試合数:1772試合(シングルスとダブルス)
グランドスラム62大会連続出場のギネス記録を持つ。

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