オッズは5対2でパッキャオ有利
勝敗のカギ握る参謀の手腕、戦略
接戦や激闘を受けてのリマッチ(再戦)、1勝1敗の決着戦としてセットされるラバーマッチ(第3戦)は珍しくないが、同じカードの第4戦となると決して多くはない。世界トップ級での試合となると、最近ではファン・マヌエル・マルケスの弟ラファエル・マルケス対イスラエル・バスケスのメキシカン対決が印象に残っている程度だ。ただし、このときはバスケス2勝、マルケス1勝を受けて行われたもので、今回のように一方(パッキャオ)が2勝1分というケースは稀といえる。裏を返せば、それほどにこのカードが魅力的であるということがいえよう。
第一戦は04年、再戦は08年、第三戦は11年。階級もフェザー級、S・フェザー級、ウェルター級(144ポンド≒65.3キロ)と上がってきた。今回はWBOが勝者に「CHAMPION OF THE DECADE」(10年間の最優秀王者)なる称号を授けるというが、通常の世界タイトルはかかっていない。それにもかかわらず大きな注目を集めるのは、今回も歴史に残るような激闘が期待されているからに他ならない。
戦う両雄も期待の高さは承知のうえだ。試合の9日後に34歳になるパッキャオが「もう接戦はイヤだ。25歳のころのように戦い、KOを狙う」とぶち上げれば、39歳のマルケスもKO宣言で応じる。「3回も判定を盗まれているのでジャッジに勝負を委ねるわけにはいかない。今度こそKOで決着をつける」
ともに抜群の攻撃力を誇るが、一発で仕留める能力となるとパッキャオが上だ。リッキー・ハットン(イギリス)を失神させた、鋭く踏み込んで放つ左ストレート、さらにデビッド・ディアス(アメリカ)やミゲール・コット(プエルトリコ)を倒したインサイドからのアッパーもある。マルケス自身、パッキャオの左には計4度のダウンを喫しているほどだ。
マルケスは右のカウンターや左フックに卓越した技術力を感じさせる。もちろんパワーもある。計36ラウンドにわたって手合わせしているパッキャオもマルケスの強打とテクニックには十分な敬意を払っているはずだ。
そのうえで互いがKOを狙うとなると、どんな展開になるのか。「より攻撃的に出ていく」と話すパッキャオは、さらに踏み込みを深くし、マルケスはカウンターからの迎撃を強めることになるのか。ともに足をつかったボクシングもできるだけに、そう簡単に決まる勝負にはならないはずだ。ともに手の内は十分に知り尽くしており、そのうえでの虚々実々の駆け引きにも注目したい。
同時に、パッキャオ陣営のフレディ・ローチ・トレーナー、マルケス陣営のナチョ・ベリスタイン・トレーナーの手腕、戦略も見ものといえよう。ちなみに第三戦時のオッズは11対1だったが、今回は、パッキャオ有利は変わらないものの5対2と接近している。
Written by ボクシングライター原功
フロイド・メイウェザー
ウェルター級トップ戦線の現状
WBA:ポール・マリナッジ(アメリカ)
WBA暫定:ディエゴ・チャベス(アルゼンチン)
WBC:フロイド・メイウェザー(アメリカ)
WBC暫定:ロバート・ゲレロ(アメリカ)
IBF:デボン・アレキサンダー(アメリカ)
WBO:ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)
フロイド・メイウェザー(アメリカ)を筆頭に、マニー・パッキャオ(フィリピン)、ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)、ロバート・ゲレロ(アメリカ)、デボン・アレキサンダー(アメリカ)とスター選手が揃っている。これにWBOのS・ライト級王者ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)が加わるのだから壮観だ。
ランカー陣では、アレキサンダーへの挑戦が内定しているイギリスのホープ、ケル・ブルック、S・ライト級から上げてきた「ハンマーパンチ」マルコス・マイダナ(アルゼンチン)にも注目したい。元王者ビクター・オルティス(アメリカ)の巻き返しにも期待したい。
<資料1> パッキャオVSマルケス 3度の対決結果
★第1戦 04年5月8日 @ラスベガス
<WBA&IBF世界フェザー級タイトルマッチ>
※初回にマルケスが3度ダウン
△王者マルケス | 12回引き分け | △挑戦者パッキャオ |
---|---|---|
110 | 対 | 115 |
115 | 対 | 110 |
113 | 対 | 113 |
★第2戦 08年3月15日 @ラスベガス
<WBC世界S・フェザー級タイトルマッチ>
※3回にマルケスがダウン
○挑戦者パッキャオ | 12回判定 | ●王者マルケス |
---|---|---|
115 | 対 | 112 |
114 | 対 | 113 |
112 | 対 | 115 |
★第3戦 11年11月12日 @ラスベガス
<WBO世界ウェルター級タイトルマッチ>
※144ポンド契約
○挑戦者パッキャオ | 12回判定 | ●王者マルケス |
---|---|---|
115 | 対 | 113 |
116 | 対 | 112 |
114 | 対 | 114 |
<資料2> 両雄が制覇した階級
パッキャオ | 獲得王座 | マルケス |
---|---|---|
ミニマム級 | ||
L・フライ級 | ||
フライ級 | ||
S・フライ級 | ||
バンタム級 | ||
S・バンタム級 | ||
※マルケスに挑戦ドロー | フェザー級 | パッキャオとドロー防衛 |
※マルケスから奪取 | S・フェザー級 | パッキャオに王座奪われる |
ライト級 | ||
S・ライト級 | ||
※マルケス相手に防衛 | ウェルター級 | パッキャオに挑戦 |
S・ウェルター級 | ||
ミドル級 | ||
S・ミドル級 | ||
L・ヘビー級 | ||
クルーザー級 | ||
ヘビー級 |
<資料3>
TALE OF THE TAPE
パッキャオ | マルケス | |
---|---|---|
1978年12月17日/33歳 | 生年月日 | 1973年8月23日/39歳 |
キバウェ(フィリピン) | 出身 | メキシコシティ(メキシコ) |
95年1月 | デビュー | 93年5月 |
169センチ | 身長 | 170センチ |
170センチ | リーチ | 170センチ |
96センチ | 胸囲(平常時) | 102センチ |
104センチ | 胸囲(呼吸時) | 104センチ |
71センチ | ウェスト | 74センチ |
40センチ | 首周り | 41センチ |
33センチ | 二頭筋 | 35センチ |
30センチ | 前腕 | 30センチ |
51センチ | 大腿部 | 48センチ |
33センチ | ふくらはぎ | 33センチ |
20センチ | 手首周り | 17センチ |
25センチ | 拳周り | 29センチ |
左ボクサーファイター型 | タイプ | 右ボクサーファイター型 |
60戦54勝(38KO)4敗2分 | 戦績 | 61戦54勝(39KO)6敗1分 |
17戦13勝(8KO)2敗2分 | 世界戦 | 17戦12勝(5KO)4敗1分 |