昨年4月はサリドが大番狂わせの8回TKO勝ち
オッズは13対8でロペス有利だが…
ロペスにとっては待望のリマッチである。昨年4月、ロペスはWBO世界フェザー級王座の3度目の防衛戦で地元にサリドを迎えた。戦前のオッズ(賭け率)は12対1、圧倒的にロペス有利と出ていたが、不安要素が多かったのも事実だ。減量苦に加え試合を直後に控えた時点での離婚など、集中力を欠く材料は身辺に少なくなかったのである。
試合ではそんな不安が的中。ロペスは乱戦の中でダウンを喫し、必死に追い上げたが8回にストップされてしまった。採点上はイーブンだったが、内容的にはサリド優勢の試合だった。
その後、サリドは7月に山口憲一を11回TKOで下して初防衛に成功。12月のノンタイトル戦でも8回TKO勝ちを収めている。しかし、この無冠戦では2度のダウンを喫しており、決して近況は良いとは言い切れない。もともとタフネスには定評があるサリドにとって格下に喫した2度のダウンは不安材料として残っていることだろう。今回の再戦では前回以上にディフェンスに留意する必要がありそうだ。
挑戦者の立場に変わったロペスは昨年10月の再起戦で元世界ランカーのマイク・オリバー(アメリカ)に2回TKO勝ち。こちらは無難な勝利で戦線復帰を飾っている。前回は体重調整にも苦しんだだけに今回は初戦よりも早めに減量を開始し、1ヵ月前の時点で7.7キロ超過と伝えられる。再び地元での試合ということでベルト奪還は最低ノルマといえそうだ。KOあるいはTKOでしっかりと借りを返し、再びスター戦線に戻りたいところだ。今年下半期にはS・フェザー級に上げて3階級制覇の足掛かりをつかみたいというだけに、絶対に落とせない試合だ。
13対8のオッズが示すとおり、両者の戦力を比較するかぎりロペス有利はうなずけるところ。本来の力を発揮すればサウスポーからの右フック、左ストレート、アッパーで宿敵をキャンバスに沈める可能性も十分といえる。
ただし、前回の勝利で自信を増しているサリドを甘く見るのは危険だ。頑丈な体を利してインサイドに入り込み、執拗な攻撃でじわじわとダメージを植えつけていく戦法はロペスのようなタイプには極めて有効といえる。初戦はロペスに大きなマイナス要因があったのは事実だが、それは敗因の一部でしかない。サリドにはサリドなりの勝因があったことを忘れてはなるまい。
中距離で破壊的なブローを打ち込むロペスと、中近距離で回転の速い細かいパンチを繰り出すサリド。ロペスが力んで大味な試合をするようだと、再びサリドに付け込まれる危険がある。
Written by ボクシングライター原功
ジョニー・ゴンサレス
フェザー級トップ戦線の現状
WBAスーパー:クリス・ジョン(インドネシア)
WBA:セレスティーノ・カバジェロ(パナマ)
WBC:ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)
WBC休養:エリオ・ロハス(ドミニカ共和国)
IBF:ビリー・ディブ(オーストラリア)
WBO:オルランド・サリド(メキシコ)
日本に馴染み深い選手がトップに並んでいる。V14王者クリス・ジョン(インドネシア)は来日経験もあり、5月には木村章司(花形)の挑戦を受けることになっている。
WBAのレギュラー王者セレスティーノ・カバジェロ(パナマ)は昨年大晦日に横浜で細野悟(大橋)の挑戦を一蹴。スーパー王者のジョンに統一戦を呼びかけている。
WBC王者ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)は昨年4月、長谷川穂積(真正)を4回TKOに屠って2階級制覇を達成。その後8ヵ月間に3度の防衛をいずれもKO(TKO)で終わらせている。休養王者エリオ・ロハス(ドミニカ共和国)との統一戦が正念場となりそうだ。これもクリアすると、スーパー・フェザー級への転向が具体化するはずだ。
ランカーのなかではWBA1位、WBCとWBOで2位にランクされる24歳、27戦全勝(23KO)のミゲール・ガルシア(アメリカ)の存在が際立っている。今回のサリド対ロペスの勝者に挑戦という青写真もあるだけに、要注目だ。