“パッキャオ2世”ドネア、無敗のナルバエスを迎え撃つ!
WBC・WBO世界バンタム級タイトルマッチ
WBC・WBO世界バンタム級チャンピオン
ノニト・ドネア
(フィリピン)
WBO世界S・フライ級チャンピオン
オマール・ナルバエス
(アルゼンチン)
3階級制覇の絶対王者 VS フライ級V16王者
ドネアのスピードとパワーに優位性
この2月、ドネアは衝撃的な2回TKOでフェルナンド・モンティエル(メキシコ)を下し、WBC・WBO2団体のバンタム級王座を獲得。同時に3階級制覇を成し遂げた。「モンティエルの癖を読んでいたので、あの左フックを狙っていた」という一撃は、今年のボクシング・シーンのなかでも極めて印象深いパンチといえる。
強烈なアピールをした直後にブランクをつくることになってしまったのは、なんとも惜しまれるところだ。オスカー・デラ・ホーヤ率いるゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(GBP)への移籍問題がこじれたためだった。結局、トップランク社との契約を継続することで一件落着。今回の試合が8ヵ月ぶりの実戦となる。
ドネアはフィリピン出身ながら少年時代に家族でアメリカに移住。11歳でグローブを手にし、アマチュアでは全米選手権で優勝するなど86戦78勝(8KO、RSC)8敗の戦績を残している。KO・RSC(プロのTKOに相当)が少ないのは「打っては忙しく動くタイプで、パワーのないスピードだけの選手だったから」とドネアは説明している。
01年のプロデビュー後は、2戦目に拳の負傷が響いて判定負けを喫した以外は順調に白星を重ねてきた。ことに07年7月のビック・ダルチニャン(アルメニア)で5回TKO勝ち、IBF世界フライ級王座を獲得してからの活躍は特筆ものといえる。先のモンティエル戦をはじめ6度の世界戦を含め8戦全勝(7KO)という凄まじさなのである。「現実的にはライト級までのタイトルを狙うつもりだけれど、もしかしたらウェルター級ぐらいまで上げるかもしれない」というが、そのプランが大袈裟に聞こえないほどの勢いと地力がある。今後は年齢やコンディション調整、慢心が最大の敵になりそうだ。
ナルバエスはそんな一流王者に挑むことになるが、こちらも実力、実績は十分だ。アマチュア時代は96年のアトランタ五輪、2000年のシドニー五輪に連続して出場した経験を持ち、プロ転向後も37戦35勝(19KO)2分と不敗をキープしている。02年に獲得したWBO世界フライ級王座は8年間に16度防衛。昨年5月に獲得したWBO世界S・フライ級王座も3度防衛中だ。世界戦だけでも21戦を数え、20勝(8KO)1分という数字を残している。フランスやスペインでの試合経験はあるがアメリカ初登場とあって賭け率は19対1で不利と見られているが、それは単に知名度不足が響いてのことと思われる。巧みな防御とサウスポーからの歯切れのいい攻撃に定評があり、その実績と実力は決してドネアに見劣りするものではない。
ナルバエスを過小評価することは極めて危険だが、ここはドネアのスピードとパワー、そして瞬間的な対応力をより高く評価すべきだろう。左右に自在にスイッチできるのも強みだ。「最も自信がある」という左フック、「コブラが噛み付くように速い」と自賛する右のカウンターがナルバエスを粉砕する可能性は高いといえそうだ。
体格やパワーで劣るナルバエスは先に動いて的を絞らせず、王者の大振りを誘ってカウンターアタックを狙いたいところ。リスクの高い策ではあるが、ハイリターンを狙うには覚悟も必要だ。
序盤から虚々実々の駆け引きを含めたハイレベルの攻防が展開されることになりそうだ。
Written by ボクシングライター原功
NABF北米フェザー級タイトルマッチ
NABF・NABO北米フェザー級チャンピオン
ミゲール・ガルシア
(アメリカ)
メキシコ・S・フェザー級
ファン・カルロス・マルチネス
(メキシコ)
26戦全勝(22KO)のホープ VS 29歳の雑草派
スター候補ガルシアのパフォーマンスに注目
フェザー級の大型ホープ、ガルシアがノニト・ドネア(フィリピン)対オマール・ナルバエス(アルゼンチン)の注目ファイトのアンダーカードに登場する。それだけでもトップランク社の期待のほどが感じられる。
ガルシアは父エドゥアルド・ガルシアがトレーナー、兄ロベルト・ガルシアが元IBF世界S・フェザー級王者というボクシング一家の出身。生来の右利きだが機を見て左構えにスイッチする器用さも備えており、ここまで26戦全勝(22KO)をマークしている。各団体で上位にランクされていることから、2012年にはさらなるブレークが期待される。
対するマルチネスはアントニオ・デマルコ(メキシコ=現WBC世界ライト級王者)やグティ・エスパダス・ジュニア(メキシコ=元WBC世界フェザー級王者)らと拳を交えた経験を持つ29歳。今年5月、世界挑戦経験者バーナベ・コンセプション(フィリピン)に判定勝ちを収めて存在感を示した。勝てば一気に上位進出が望めるだけに高いモチベーションを抱いてリングに上がるはずだ。
マルチネスは耐久力にも優れているが、スピード、パワー、機動力で勝るガルシアが持ち味を発揮すればジャッジの手を煩わせることなく試合は終わりそうだ。
Written by ボクシングライター原功