エキサイトマッチスペシャル ダブル世界タイトルマッチ
帝拳ジム所属の2人の王者が凱旋防衛戦!
WBC世界S・バンタム級タイトルマッチ
WBC世界S・バンタム級チャンピオン
西岡利晃
(帝拳)
提供:ボクシング・ビート
WBC世界S・バンタム級5位
イバン・エルナンデス
(メキシコ)
王者の左 VS 挑戦者の右 西岡のKO防衛なるか
西岡は昨年9月、5度目の挑戦をものにして悲願の世界タイトル獲得を果たした。94年12月、高校3年でプロデビューしてから14年目、32歳での戴冠だった。今年1月の初防衛戦ではしぶといヘナロ・ガルシア(メキシコ)を最終12回でストップ。そして元世界王者の指名挑戦者ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)との2度目の防衛戦では鮮やかな3回逆転KO勝ちを収めている。この一戦は日本人としては24年ぶり2度目の海外防衛という付加価値もついた。西岡のみならず日本人選手の相対的評価を上げたという意味でも価値の高い勝利だった。
「スピードキング」を名乗る西岡のボクシングは、その名の通りスピードと左ストレートの切れが最大の特徴といえる。小刻みなステップで位置取りをしておいて瞬時に踏み込んで左を一閃。ゴンサレスを夢の国に送り込んだように、左ストレートは速さ、鋭さとも抜群だ。今回は挑戦者がその左を警戒してくることを前提に右を磨いたという。左右のコンビネーションがどこで火を噴くのか、注目したい。
挑戦者のエルナンデスは29戦25勝(15KO)3敗1分の戦績を持つ26歳。プロデビューは2000年4月で、翌年にWBCユース(23歳以下)フライ級タイトルを獲得。02年にはWBA中米フライ級タイトルも獲得。そして04年にはマーク・ジョンソン(米)を8回KOに屠ってWBO世界S・フライ級チャンピオンになっている。初防衛戦でのちの3階級制覇者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)に敗れて王座を失ったが、これはエルナンデスを責めるよりも相手の力量を讃えるべきだろう。バンタム級に転向後、06年にはNABF北米タイトルを獲得。余勢を駆ってイスラエル・バスケス(メキシコ)の持つWBC 世界S・バンタム級タイトルに挑んだが、出血のため4回TKO負けという結果に終わった。以後は3連勝(2KO)と復調。西岡に勝てば2階級制覇となり、自身がビッグマッチの主役になる可能性があるだけに高いモチベーションを持ってリングに上がるはずだ。
エルナンデスはテクニックと強打を併せ持った右のボクサーファイター型で、パンチの威力は西岡のそれに匹敵するものがある。サウスポーのジョンソンを右で沈めた経験を持っており、西岡もこのパンチには警戒が必要だ。
ともに切り札となるパンチを持っているだけに、試合はスタートからピリピリとした緊張感をともなったものになりそうだ。注目すべきは西岡の左ストレート、エルナンデスの右ストレートだが、その前に繰り出すであろう両者の崩しのパンチにも注目したい。
西岡が前後左右に動きながら主導権を握り、ボディブローで揺さぶってから左に繋げれば、ゴンサレス戦のような鮮やかなKO防衛が見られるのではないだろうか。
Written by ボクシングライター原功
WOW FES!のイベントの一つとして行われるダブル世界タイトルマッチ。直前の会見は10/8に行われた |
5月に日本人24年ぶりの海外防衛を果たした西岡。王者の風格が漂う |
2007年2月以来、久々の日本での試合にもリラックスした表情を見せるリナレス |
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ダブル世界タイトルマッチに出場する4選手が並ぶ |
会見には「あしたのジョー」の作者ちばてつや先生も激励に訪れた |
前日計量。西岡は121ポンド3/4(55.2kg)でクリア |
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リナレスも129ポンド3/4(58.8kg)でクリア。準備は整った |
代々木第二体育館で行われる今回のイベントは“HOMECOMING”と銘打たれた |
リナレスが第二の故郷日本のリングに久々に上がる |
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1回、開始直後に放ったサルガドの左フックがリナレスを捉える |
誰もが予想しなかったリナレスのダウン |
朦朧とするリナレスが連打を浴びレフリーがストップをかける |
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まさかの結果、初黒星を喫したリナレス。この経験を糧にして欲しい |
大番狂わせで無敗のまま王者に駆け上がったサルガドは涙を見せた |
リナレス敗戦で会場が騒然とする中、元WBO世界S・フライ級王者エルナンデスが入場 |
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「負けられない」西岡が緊張の面持ちで入場する |
序盤、落ち着いた戦いぶりを見せる西岡。リナレス敗戦にも動揺はないようだ |
2回、偶然のバッティングで西岡が減点となる |
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3回、西岡の強烈な左フックがエルナンデスを捉える |
3回終了後、エルナンデスがアゴの違和感を訴えて試合終了。その後、骨折が判明した |
エルナンデスのアゴを砕いた西岡は3度目の防衛に成功 |
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愛娘の小姫ちゃんを抱くシーンも定番となった。今後は「世界の西岡」を目指す |
Written by ボクシングライター原功
WBA世界S・フェザー級タイトルマッチ
WBA世界S・フェザー級チャンピオン
ホルヘ・リナレス
(帝拳)
提供:ボクシング・ビート
WBA世界S・フェザー級6位
ファン・カルロス・サルガド
(メキシコ)
万能型の王者 VS 切れと勢いの挑戦者 中盤〜終盤のKO防衛濃厚
「2年8ヵ月ぶりの日本での試合だから頑張る。ゼッタイ、ゼ〜ッタイに勝つよ」リナレスの必勝宣言には力がこもっている。
アマチュアで161戦155勝6敗の戦績を残して02年に大阪でプロ初陣を飾ったリナレスは、これまで27戦全勝(18KO)の快進撃を続けている。その活躍は日本の枠に留まらない。母国ベネズエラはもちろん本場アメリカ、メキシコ、パナマなど多くの国で高い技量を見せつけてきた。9月には元6階級制覇王者オスカー・デラ・ホーヤ(米)主宰のゴールデン・ボーイ・プロモーションとも契約を交わし、世界的なスーパースターへの準備は着々と進んでいる。
デラ・ホーヤをして「高い潜在能力を持った逸材」といわしめるリナレスは万能型の右ボクサーファイター。ハンドスピードのみならず身のこなしの速さも群を抜き、右ストレートを中心にしたパンチの切れや破壊力も十分。ディフェンス力、駆け引き、判断力など個々の能力は極めて高い。試されていない面があるとすれば耐久力だろうか。
一方、挑戦者のサルガドは1984年12月生まれの24歳。アマチュアで38戦34勝(5KO、RSC)4敗の戦績を残して 03年3月にプロ転向。以来6年半に21戦20勝(14KO)1分を記録している。04年にWBC中米カリブ・フェザー級タイトルを獲得し、06年には WBA米大陸S・フェザー級タイトルを手にした実績を持っている。この3年ではマルコス・リコナ(メキシコ)、イバン・バジェ(メキシコ)といった強豪を下した星が光る。左ジャブからのコンビネーションを得意とする右のボクサーファイター型で、柔軟な体と切れのあるパンチに特徴を見てとることができる。
しかし、リナレスが最も警戒しなければならないのは、怖さ知らずのサルガドの勢いかもしれない。このメキシカンを序盤で勢いづかせるようだとリナレスは思わぬ苦戦を強いられるかもしれない。
ただ、スピード、パンチ力、テクニックなど個々の能力ではチャンピオンが勝っており、まずベルトを明け渡すことはないとみる。
リナレスは相手の力量と自分自身の調子を確認し、そのうえで組み立てを考えるタイプだけに、決着をつけるまでに多少の時間を要するかもしれないが中盤あるいは終盤には大きなヤマをつくるのではないだろうか。こちらもチャンピオンのKO防衛が期待できる。
Written by ボクシングライター原功