11月の映画の達人が選んだ9本
11月上旬の映画の達人セレクトはコレ!
復讐するは我にあり……!【なかざわひでゆき】
【なかざわひでゆきプロフィール】古今東西のホラー映画と映画女優をこよなく愛し、海外ドラマや和洋クラシック映画にも精通したライター。新作ドラマ「TOUCH/タッチ」のプロモーションで来日したキーファー・サザーランドにインタビューしました。約3年ぶりの再会でしたが、相変わらず穏やかで優しかったっすよ~!
荒くれ保安官と生意気少女のあだ討ち
無法者に父親を殺された少女が、悪評高い連邦保安官を雇ってあだ討ちに挑むという西部劇。粗野で飲んだくれ保安官を演じるジョン・ウェインの貫禄もさることながら、少女マティを演じるキム・ダービーがすこぶるよろしい。まるで男の子みたいなショートカットで、生意気なくらいにしっかり者。しかし、その一方でたくましい保安官に亡き父親の姿を投影しているようないじらしさもあって、なんとも憎めない。さわやかでみずみずしいタッチの映像も、1960年代末の時代の空気を感じさせて魅力的。実に気分のよろしい作品です。
極悪マスクの中年ヒーロー見参!
見るからにヤバそうな顔つきのコワモテ俳優ダニー・トレホが、麻薬王に妻子を殺されたメキシコ人捜査官の復讐(ふくしゅう)劇を怪演するハードなバイオレンス・アクション。アメリカで依然として根深い中南米からの移民問題を絡めながら、腐敗した権力に対する名もなき庶民の復讐(ふくしゅう)を描いた作品でもあります。チンピラに殺し屋と脇役一筋だった苦労人トレホが、ロバート・デ・ニーロやスティーヴン・セガールなどのビッグネームを脇に回し、さらには天下の美女ジェシカ・アルバと濃厚な愛を交わすという大盤振る舞い。そのオヤジ・パワーにシビレます。
11月中旬の映画の達人セレクトはコレ!
カッコ悪い生き様もいい!? もっと楽に生きるヒントが欲しい方に【古川 祐子】
【古川 祐子プロフィール】映画を中心に、取材やインタビューをこなすライター。「アウトレイジ ビヨンド」は最近観た邦画の中でピカイチ。前作よりスケールが増して笑いの要素もいっぱい。桐谷健太さんのチンピラぶり、塩見三省さんのすごみあふれる存在感は必見です。
ナタポがプロデュースも兼ねて出演
母親を事故で亡くしたショックから立ち直れず悶々(もんもん)と暮らす父子が、突如現れて家に転がり込んだヘビメタ男の破天荒な行動に巻き込まれ、やがて前向きな一歩を踏み出していく姿をコメディータッチで描くヒューマンドラマ。ジョセフ・ゴードン=レヴィットが下品だけど憎めないヘビメタ男、ナタリー・ポートマンが主人公の少年からおばさん呼ばわりされてしまう地味な女性、というユニークな役柄に挑んでいるのも見どころ。ナタリーがプロデュースも兼ねて出演しているのも納得の、人生に立ち向かう勇気を与えてくれるパワフルな作品だ。
グッチが修復を支援した名作
「インディペンデント映画の父」と称され、1989年に亡くなってから今もなお、世界中の映画監督に影響を与え続けているジョン・カサヴェテス監督。本作はカサヴェテス監督が脚本と監督を手掛け、実生活で監督の妻だった女優ジーナ・ローランズが主演を務めた1974年製作の家族ドラマ。仕事柄、突然家を空けることが多い夫を持つ主婦が、次第に精神のバランスを崩していくさまを描く。母親がどんな醜態をさらそうと、彼女を必死に支える家族の姿にぐっとくる。イタリアの高級ブランド、グッチの支援のもと、近年復元ニュープリント版として復活した傑作だ。
11月下旬の映画の達人セレクトはコレ!
ブラッド・ピットのアッパレな作品選択眼【斉藤 由紀子】
【斉藤 由紀子プロフィール】テレビ番組・ウェブコンテンツなど、エンタメ系を中心に活動中の放送作家・フリーライター。某映画番組の仕事で、「仁義の墓場」ほか往年の任侠映画を大量に鑑賞。深作欣二監督と五社英雄監督の演出に今さらながらシビレました!
ブラピが選択した運命の一本
若かりしブラピを一躍スターダムへと押し上げ、デヴィッド・フィンチャー監督の才能を広く世に知らしめた1995年製作のサイコスリラー。後のエンタメ業界に多大な影響を与えた美しくも陰うつな映像表現や、ヘタすりゃトラウマになりかねないほどのダークな世界観は、今なお映画ファンの心をつかんで離さないはず。当時、ロン・ハワード監督の超大作「アポロ13」のオファーを断り、未知数の低予算映画だった「セブン」の刑事役を選んだブラピ。現在はプロデューサーとしても活躍する彼の独特の選択眼に、改めて拍手を贈りたい。
あわや、お蔵入りの危機に!
常識破りの理論でメジャーリーグの弱小貧乏球団を再生させた実在のGMビリー・ビーンの半生を映画化。原作にほれ込んだブラピの主演・プロデュースで製作に着手したものの、脚本の問題で撮影中断を余儀なくされ、監督がスティーヴン・ソダーバーグからベネット・ミラーに交代。そんなお蔵入りの危機を乗り越えて完成させた意欲作だ。この最後まで諦めずに映画製作に臨んだブラピの情熱は、信念を貫いて野球界の金銭問題や古い慣習を打ち壊そうとした劇中のビリーと絶妙にリンクする。人生に迷いを感じている人は観るべし!