装甲騎兵ボトムズ 高橋良輔監督 スペシャルインタビュー
Q 『ボトムズ』を作る上で影響を受けた作品はありますか?

映像を作る上で、あの当時はみんなの頭の中にどうしても『ブレードランナー』があったと思います。だから、どこを真似しているということではないんですが、一番最初の舞台となるウドの町はあのSF感に支配されていました。それとは別に、現実世界の中ではベトナム戦争。その影響が出ているクメン篇の方が僕には重いですね。キャラクターでいうなら、除隊してたキリコがどこかに帰還兵の心の傷を持ちながら、何も整っていない社会にいきなり放り出される。『ランボー』(第1作)も僕の中にはありました。
ものすごくわかりやすくミリタリーの部分だけを観ると『ボトムズ』はやっぱり陸軍。地べたを這いずり回る感じがあります。『ガンダム』のように、エンターテインメントとして間口が広く、空軍と海軍の格好良さが入っている作品もありますが、作品群としては両方あったほうが良いと思います。…どちらかといえば、空軍の士官の白い制服の方が格好良いですけどね(笑)。ですが、最近はカカオの含有量が色々違うチョコレートがありますし、カカオ70%を苦くても好きな人はいますよね。

高橋良輔監督
Q 今回は高橋監督の作品ではない新作が2本、テレビ初放送されます。

試みとして新しいものを引き出すなら自由に作ってもらった方がいいと思い、この2作品に僕はいっさい関わっていません。でも、観ると自由という風でもないですね(笑)。作っていただいた人の、前作品に対するいろんな思いが出ているように感じました。 『ボトムズファインダー』は、『ボトムズ』のアクションに対するプラスαが提示されていますし、『装甲騎兵ボトムズ Case;IRVINE』は『ボトムズ』の世界にまた違う角度を加えてくれました。アクションと物語性と、特徴がふたつ出ていると思います。

Q この放送を機会に『ボトムズ』に初めて触れる方へ作品紹介をしていただけますか。
高橋良輔監督

今、日本のアニメーションは成熟期に入っていると思います。振り返ると、『ガンダム』や『ボトムズ』はそれに至る中での青春期、作品をブラッシュアップする時期ではなく、まだ生の原石とか心意気みたいなものを出した時代の作品だと思います。あの時代の作品には、作り手の物語への思い、意見、考えて欲しい何かがいっぱい入っている気がします。今のアニメーションとは違い、まだアニメーションの方向性がわからなくて、うろうろしていたエネルギーを感じてもらえれば嬉しいです。
1983年から作り始めた作品ですが、今でも作り続けられていることで「ユーザーからの要望がないわけではない」というのはわかっていました。ですが、間口のあり方が狭い作品なので、30年近く作れるとは思っていませんでした。また、今回は物語の時系列に沿って放送されますが、もともと計画があってこういう形で観ていただける様に作ってきたわけではありません。なので、今回こういう形で放送していただけるのは凄く嬉しいことです。

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