「あの緊張感の中で自分のテニスを出すのはすごいなと」（滝川）
「憧れのセンターコート。アドレナリンが出てきました」（杉山）

杉山愛　もうすぐウィンブルドンの開幕です。ウィンブルドンは芝の大会なので、自然との戦いという一面があります。全豪や全米はハードコートの大会ですからイレギュラーバウンドもないのですが、芝は違います。開幕直後はふかふかの絨毯の上でやっているような感覚なのですが、第2週になるとベースライン上などはほとんど芝がない状態です。そこは選手の対応力が問われるところですね。雨も多く、試合がよく中断することでも知られています。中断があると、選手がどれだけ気持ちを続けられるかがキーになりますね。

滝川クリステル　試合が中断すると、選手は集中力が要求されますよね。

杉山　天気次第ですから、どれだけ中断するか分かりません。その間、選手はロッカールームで待機するのですが、ずっとスイッチをオンにしたままではいられません。どこかでスイッチを切らないと、集中力には限りがありますからね。そうして、再びコートに入った時に、どれだけうまく「オン」にできるか、オン・オフの切り替えというのもすごく大切ですね。

滝川　敗れた選手が「中断さえなければ」と思ったりすることも…。

杉山　ありますね。恵みの雨となるか、自分に不利なターニングポイントとなるか、勝敗の分かれ目になりますね。

杉山　ウィンブルドンではナダルとフェデラーが何度も素晴らしい試合をしています。滝川さんはナダルがお好きとおっしゃっていましたが、2人とも本当に素晴らしい選手で、対照的というか、それぞれ良さが違います。

滝川　その良さとは？

杉山　フェデラーの良さは、紳士的で、いつも冷静な判断ができて、動きもアートのようにスムーズで、見ていると、テニスってなんてシンプルで簡単なんだろうと思わせてくれるほどです。出来ないショットがないんじゃないかという、多彩さにも惹かれますね。

滝川　ナダルはどうですか？

杉山　あれだけの気持ちの熱さを持ち、ファイトする選手はほかにはいません。本当に情熱的で、またハートの強さはピカイチだと思います。そこは、やはりナンバーワンだなと感じさせてくれますね。

滝川　実際、二人にお会いになってお話しされたり？

杉山　もちろん、インタビューもさせていただいて。

滝川　印象はそのままですか？

杉山　そうですね。たいてい質問は3問と決められているのですが、フェデラーは一つの質問に対して3つくらい答えてくれます。こちらに気をつかってくれて、期待している以上のことを答えてくれる選手ですね。前からファンではあったのですが、その人間性に惹かれ、もっとファンになりました。

杉山　滝川さんはウィンブルドンというと？

滝川　やはりあの緊張感ですね。私も試合をしたことがありますから、試合の緊張感も少しは分かります。レベルは違いますが…（笑）。あの舞台で自分のテニスを出すというのはすごいなと思うのですが、ものすごい緊張感なのでしょうね。

杉山　そうですね。ただ、私自身、プロになりたての頃はセンターコートなど大きなコートに入ると自分のパフォーマンスができなかったのですが、四大大会、特にウィンブルドンのセンターコートへのあこがれはすごく強かったので、あのコートでプレーできたときは、アドレナリンが出るというか、ワクワクするのと同時に「ここで自分の力を出せなかったら一生後悔する。なにがなんでも自分の持っているものを出してくるぞ」という思いがありました。

滝川　逆に燃えるのですね？

杉山　やはり気持ちいいですね。あれだけの観客の応援の中でプレーできて、いいショットのときにみんながワーッと雰囲気を作ってくれるので。ナイスショットがあっても、自分だけで「イエス！」と言っているのと、ワーッとみなさんが後押ししてくれるのとでは、別ものですね。観客のサポートがあって、選手があれだけ気持ちよくプレーさせてもらえるんだなと感じますね。

滝川　ウィンブルドンは歴史が長くて、観客も試合の盛り上げ方に慣れているのでしょうね。

杉山　滝川さんがテニスがお好きというのは存じ上げていたのですが、今日初めて長くお話しさせていただきました。

滝川　年齢も近いんですよね。25歳でのターニングポイントとか、引退のこととか、すごく似たところがあって。

杉山　それを知って、なにかすごくご縁があるなと感じました。今日はどうもありがとうございました。


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