KO率84%の王者 VS 元4階級制覇王者
サーマンのスピードと強打か ゲレロの経験と手数か
5月2日(日本時間3日)、ラスベガスで行われるマニー・パッキャオ(フィリピン)対フロイド・メイウェザー(アメリカ)のウェルター級頂上対決を前に、同じクラスのWBAレギュラー王者、サーマンは内容のともなった勝利で存在感をアピールしておきたいところ。一方、2年前にメイウェザーと対戦して敗れているサウスポーのゲレロは、復活を印象づけるには返り咲きが絶対条件となる。
25戦無敗(24勝21KO1無効試合)の26歳、サーマンがスピードと強打を生かして王座を守るのか、それともウェルター級を含め4階級制覇を成し遂げているゲレロが経験を生かして勝利をつかむのか。
サーマンは13年7月、ディエゴ・チャベス(アルゼンチン)に10回KO勝ちを収めてWBA暫定世界ウェルター級王座を獲得。初防衛戦ではヘスス・ソト・カラス(メキシコ)に苦戦を強いられたが、9回TKOで撃退。V2戦では元ライト級王者フリオ・ディアス(メキシコ)を寄せつけず3回終了TKOで一蹴。昨年12月のレオナルド・ブンドゥ(イタリア)戦では判定まで粘られたが、大差をつけて3度目の防衛を果たした。今年1月には正王者に昇格している。最大のセールス・ポイントはKO率84パーセントの強打だが、スピードと足を生かしたボクシングもできるのが強みだ。大きな傷を負うことなく経験値を上げてきたが、今回はキャリア最難関の試合といっていいだろう。
ゲレロは10年1月に白血病の妻を看病するために世界王座を返上したという泣かせるエピソードの持ち主だが、地力もある。06年にフェザー級、09年にスーパー・フェザー級、11年4月にライト級(暫定王座)、そして12年にはウェルター級(暫定王座)も制覇。
現在の階級に上げてからも3年が経ち、すっかり馴染んだといえる。13年5月、メイウェザーには敗れたが、昨年6月に亀海喜寛(帝拳)を判定で下して再起を飾っている。サウスポーのボクサーファイター型だが、近年は自ら接近戦を仕掛けるなどファイター化の傾向もある。12ラウンドを8度、フルに戦い切った経験もあり、スタミナや配分という点でも問題はない。むしろ、この点ではサーマンを上回っているといっていいだろう。
ハンドスピードとパワーではサーマンが勝ると思われるだけに、王者はこの利点を生かして戦おうとするはずだ。前後左右に動きながら主導権掌握を狙うことだろう。左構えから忙しく動きつつ圧力をかけて出るゲレロのスタイルに戸惑うようだと黄色信号が灯るが、サーマンが前半をダメージなしで乗り切れば、中盤でスピードの差が出てくるのではないだろうか。サーマンの若さと潜在能力がゲレロの手数、経験を凌駕するとみる。
Written by ボクシングライター原功
フロイド・メイウェザー
ウェルター級トップ戦線の現状
WBA SC:フロイド・メイウェザー(アメリカ)
WBA SC:キース・サーマン(アメリカ)
WBC :フロイド・メイウェザー(アメリカ)
IBF :ケル・ブルック(イギリス)
WBO :マニー・パッキャオ(フィリピン)
5月2日(日本時間3日)、ラスベガスで拳を交えるWBA&WBC王者フロイド・メイウェザー(アメリカ)と、WBO王者マニー・パッキャオ(フィリピン)を筆頭に、いま最もホットで層が厚い階級といっていいだろう。
ふたり以外にも知名度、実績、実力を兼ね備えた猛者が揃っている。WBAのレギュラー王者、キース・サーマン(アメリカ)は高い潜在能力を秘めた好選手で、経験値が上がればこのクラスの主役に躍り出る可能性もある。IBF王者のケル・ブルック(イギリス)も同様だ。
ベテラン組では5階級制覇を狙う41歳のファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)、前WBA王者のマルコス・マイダナ(アルゼンチン)、前WBO王者ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)、さらには元スーパー・ライト級王者のアミール・カーン(イギリス)、そして4階級制覇の実績を持つロバート・ゲレロ(アメリカ)がいる。比較的若いランカーとしては21戦全勝(13KO)の26歳、サダム・アリ(アメリカ)、捲土重来を期す前IBF王者ショーン・ポーター(アメリカ)らが控えている。さらにマイク・アルバラード(アメリカ)とのラバーマッチを制したブランドン・リオス(アメリカ)も面白い存在だ。また、この階級で日本初の王者を目指す亀海喜寛(帝拳)もいる。
存在感示したい元3階級制覇王者
強打で番狂わせ狙うモリナ
11年〜13年の短期間でライト級からウェルター級までの3階級を制覇した実績を持つブローナーが、無冠になってから3度目の試合を迎える。相手のモリナも強打者だけに序盤からスピーディーでスリリングな展開になりそうだ。
ブローナーは「メイウェザーの後継者」として売り出し、それに見合った活躍と実績を残していたが、13年12月のマルコス・マイダナ(アルゼンチン)戦で2度のダウンを喫して判定負け。図らずも急停止を強いられた。昨年5月に再起して2連勝を収めているが、いずれもフルラウンドを戦うなど必ずしも周囲を納得させる内容ではなかった。かつてのような防御と攻撃が戻っているかどうか、いわば今回の試合は追試験といった位置づけか。
モリナは12年9月、アントニオ・デマルコ(メキシコ)の持つWBC世界ライト級王座に挑戦して44秒TKO負けを喫しているが、この試合はモリナの負の一面でしかない。13年7月に現IBF世界ライト級王者ミッキー・ベイ(米)を最終回残り59秒の大逆転TKOで破った試合や、昨年4月にルーカス・マティセ(アルゼンチン)から2度のダウンを奪った試合(11回KO負け)などがプラスの一面といえよう。179センチの長身からクロス気味に被せる右と、下から突き上げる左アッパーは脅威だ。
スピードと大舞台の経験値などで勝るブローナー有利は不動だが、モリナが警戒を擁する危険な相手であることは間違いない。戦績はブローナーが31戦29勝(22KO)1敗1無効試合、モリナは32戦27勝(22KO)5敗。
Written by ボクシングライター原功