生中継! エキサイトマッチスペシャル
6階級制覇王者パッキャオ vs 3階級制覇王者マルケス、三度目の激突!
WBO世界ウェルター級タイトルマッチ

WBO世界ウェルター級チャンピオン
マニー・パッキャオ
(フィリピン)

WBA・WBO世界ライト級チャンピオン
ファン・マヌエル・マルケス
(メキシコ)
究極のライバル対決 最終決着戦
パッキャオの左 VS マルケスの右カウンター
「ラバーマッチ」とはトランプのブリッジの決着法で、先に2勝した者が勝利を握る決まりになっている。したがって第3戦は1勝1敗の場合にのみ行われることになる。ボクシング界では近年、これを都合よく解釈して単に第3戦を指すコピーとして好んで使用されることが多い。
いずれにしてもパッキャオの1勝1分で迎える今回の3度目の対決は、「究極のラバーマッチ」といってもいいだろう。
両者の初戦は04年5月8日、今回と同じアメリカ・ラスベガスのMGMグランド ガーデン・アリーナで行われた。WBA・IBF世界フェザー級王者マルケスにパッキャオが挑んだものだが、波瀾はいきなり初回に訪れた。挑戦者の左ストレートが再三突き刺さり、マルケスが立て続けに3度もキャンバスに落ちたのだ。マルケスにとって幸いだったのは、スリー・ノックダウン・ルールが適用外だったことであろう。余談だが、この1ラウンドの採点は試合後に検証されることにもなる。ふたりが10対6と採点したのに対し、結果的に113対113でドローとしたジャッジは明記されているWBCルールに則って10対7とつけていたのだ。このスコアリングが第2戦、そして今回の第3戦の伏線となっているともいえる。
2回以降はマルケスが盛り返し、やや王者優勢の印象を残して試合終了。しかし、ふたりが115対113で割れたため三者三様の引き分けに終わった。
再戦は4年後の08年3月15日のこと。同じラスベガスながら会場をマンダレイベイ・イベントセンターに移して行われた。先手をとったのはWBC世界S・フェザー級王者のマルケスだったが、パッキャオは3回に左をヒットしてダウンを奪い流れを変えた。以後は流血に悩まされながらも両者は激しくパンチを交換。互角のまま試合は終了。またも勝負は判定に委ねられたが、今度はひとりが115対112で王者を推したものの残るふたりが115対112、114対113でパッキャオを支持。こうしてパッキャオは3階級制覇を達成したわけだ。
その後の両者の足跡についても触れておこう。3ヵ月後にライト級も制して4階級制覇を成し遂げたパッキャオは、2年前にWBOのウェルター級王座も獲得。1年前にはS・ウェルター級でも戴冠を果たし、オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)と並ぶ史上2人目の6階級制覇王者となっている。目下14連勝中(8KO)だ。
マルケスはパッキャオとの再戦から約1年後の09年2月、WBA・WBO世界ライト級王座を獲得し、遅ればせながら3階級制覇を達成。フロイド・メイウェザー(アメリカ)には敗れたものの、ライト級の2冠は2度防衛中だ。
2度の対戦で計24ラウンドにわたってパンチを交換している両者は、当然のことながら相手の戦力を熟知している。マルケスからみれば最も警戒を要するパッキャオのパンチは鋭い踏み込みから放たれる左ストレートということになるだろうし、パッキャオからすれば巧みな位置どりから矢継ぎ早に繰り出してくるマルケスのワンツーやカウンターは要注意となるはずだ。
注目すべきは、ウェルター級タイトルマッチながらリミットを3ポンド下回る144ポンド(約65.3キロ)契約で行われる点である。元々がフライ級のパッキャオだが、この3年間で5度も140ポンド超で試合を経験している。対するマルケスはメイウェザー戦の一度だけである。コンディション調整と体重増への対応力も勝敗を分ける要素のひとつになる可能性がある。
もうひとつ、両者の参謀を含めた分析力、策略にも注目したい。パッキャオにはフレディ・ローチ・トレーナーが、マルケスにはイグナシオ・ベリスタイン・トレーナーがつく予定で、ふたりの名匠の采配ぶりも楽しみだ。
さらに加えるならば、「もう決着はついているはず」と考えても不思議ではないパッキャオには、次戦でメイウェザーとの決戦の噂も出ている。あと数試合で引退の報もある。一方、「2度も判定を盗まれた」と憤るマルケスには、この試合にかける意欲は並々ならないものが感じられる。このモチベーションの差も無視できないものがあるように思えるのだ。オッズは11月に入って8対1から11対1に開いたが、その不利の数字をマルケスの執念が埋めてしまう可能性もありそうだ。
マルケスが仕掛け、パッキャオが押し返す。パッキャオが左ストレート、右フックを狙えばマルケスがカウンターを合わせる――そんな緊迫した展開のまま、中盤からはさらなる盛り上がりが待っているのではないだろうか。
最高1,200ドル(約9万6,000円)の値がついた入場チケットは早い段階で完売状態と伝えられる。そんな高い注目度に違わぬ熱戦を期待したい。
両者の比較
| パッキャオ | マルケス | |
|---|---|---|
| 1978年12月17日/32歳 | 生年月日 | 1973年8月23日/38歳 |
| キバウェ(フィリピン) | 出身 | メキシコシティ |
| 95年1月 | デビュー | 93年5月 |
| 169cm | 身長 | 170cm |
| 170cm | リーチ | 170cm |
| 96cm | 胸囲(平常時) | 102cm |
| 104cm | 胸囲(呼吸時) | 104cm |
| 71cm | ウェスト | 74cm |
| 40cm | 首周り | 41cm |
| 33cm | 二頭筋 | 35cm |
| 30cm | 前腕 | 30cm |
| 51cm | 大腿部 | 48cm |
| 33cm | ふくらはぎ | 33cm |
| 20cm | 手首周り | 17cm |
| 25cm | 拳周り | 29cm |
| 左ボクサーファイター型 | タイプ | 右ボクサーファイター型 |
| 58戦53勝(38KO)3敗2分 | 戦績 | 59戦53勝(39KO)5敗1分 |
| 15戦12勝(8KO)1敗2分 | 世界戦 | 15戦11勝(5KO)3敗1分 |
両者の獲得したタイトル
| パッキャオ | マルケス | |
|---|---|---|
| ヘビー級 | ||
| クルーザー級 | ||
| L・ヘビー級 | ||
| S・ミドル級 | ||
| ミドル級 | ||
| S・ウェルター級 | ||
| ウェルター級 | ||
| S・ライト級 | ||
| ライト級 | ||
| ※マルケスから奪取 | S・フェザー級 | |
| ※マルケスに挑戦、ドロー | フェザー級 | |
| S・バンタム級 | ||
| バンタム級 | ||
| S・フライ級 | ||
| フライ級 | ||
| L・フライ級 | ||
| ミニマム級 |
※赤に網掛けた部分が獲得したタイトルです。
パッキャオの対メキシカン全戦績
※13戦11勝(7KO)1敗1分
| 対戦相手 | 結果 | 備考 | |
|---|---|---|---|
| 99年4月 | ガブリエル・ミラ | ○4回TKO | ※世界戦 |
| 03年7月 | エマヌエル・ルセロ | ○3回TKO | ※世界戦 |
| 03年11月 | マルコ・アントニオ・バレラ | ○11回TKO | |
| 04年5月 | ファン・マヌエル・マルケス | △12回引き分け | ※世界戦 |
| 05年3月 | エリック・モラレス | ●12回判定 | |
| 05年 9月 | エクトール・ベラスケス | ○6回TKO | |
| 06年1月 | エリック・モラレス | ○10回TKO | |
| 06年7月 | オスカー・ラリオス | ○12回判定 | |
| 06年11月 | エリック・モラレス | ○3回KO | |
| 07年4月 | ホルへ・ソリス | ○8回KO | |
| 07年10月 | マルコ・アントニオ・バレラ | ○12回判定 | |
| 08年3月 | ファン・マヌエル・マルケス | ○12回判定 | ※世界戦 |
| 10年11月 | アントニオ・マルガリート | ○12回判定 | ※世界戦 |
Written by ボクシングライター原功

フロイド・メイウェザー
ウェルター級トップ戦線の現状
WBA:ビアチェスラフ・センチェンコ(ウクライナ)
WBA暫定:イスマエル・マサーディ(フランス)
WBC:フロイド・メイウェザー(アメリカ)
IBF:アンドレ・ベルト(アメリカ)
WBO:マニー・パッキャオ(フィリピン)
パッキャオ、メイウェザーの2強時代といっても過言ではないだろう。このクラスのみならず、このふたりが現在のパウンド・フォー・パウンドのトップ2ということに異論を挟む者はいないはずだ。
既にひと足早く9月にビクター・オルティス(アメリカ)に圧勝してWBCの指定席についているメイウェザーとパッキャオの頂上決戦を期待するファン、関係者は多い。順当にいけば来年5月に実現かと報じられるが、その前にパッキャオはマルケスという関門をクリアしなければならない。
IBFで返り咲きを果たしたベルトもトップ戦線に踏みとどまっており、さらに全勝のホープ、マイク・ジョーンズ(アメリカ)、2階級制覇を狙うデボン・アレキサンダー(アメリカ)らも面白い存在だ。
こうしたなか、遠からず下のクラスから転級が噂されるアミール・カーン(イギリス)、ティモシー・ブラッドリー(アメリカ)、マルコス・マイダナ(アルゼンチン)らも存在も不気味感を増している。
