チャベス・ジュニア、世界王者への道!
WBCシルバー・ミドル級タイトルマッチ
WBCシルバー・ミドル級チャンピオン
フリオ・セサール・チャベス・ジュニア
(メキシコ)
アメリカ・ミドル級
ビリー・ライル
(アメリカ)
伝説の継承者 VS オハイオの曲者
親子王者への最後の関門
かつての3階級制覇王者の息子としてデビュー当初から大きな注目を集めてきた「伝説の継承者」チャベス・ジュニアが、いよいよ世界挑戦に向けて最終段階に入った。このライル戦をクリアすれば大舞台が準備されるはずだ。
チャベス・ジュニアは03年9月に17歳でプロデビューを果たし、ここまで負けなしの41連勝(30KO、1分1無判定試合)を飾っている。一時は苦戦を強いられて伸び悩みと伝えられた時期もあったが、それらが経験となってボクシングに厚みが出て、この2年ほどで逞しさを増した感がある。直近の試合に限ってみれば5勝1無判定試合で、KO勝ちはひとつに留まっているが、タフで好戦的な世界ランカー、ジョン・ダディ(アイルランド)に打ち勝つなど収穫は多い。左の上下打ちに加え右ストレートにも破壊力があり、攻撃のバリエーションも増えている。一定以上の耐久力も身についてきた様子だ。
一方のライルは、レイ・マンシーニ(元世界ライト級王者)やグレグ・リチャードソン(元世界バンタム級王者)、最近では元世界ミドル級王者ケリー・パブリックらを輩出したオハイオ州ヤングスタウンの出身。チャベス・ジュニアより2ヵ月早い03年7月デビューの26歳で、これまで30戦22勝(4KO)8敗という戦績を残している。チャベス・ジュニアの戦績と比べると見劣りしてしまうが、対戦相手の質という点ではむしろ勝っているといえる。ジェームス・カークランド(アメリカ)、ヨリ・ボーイ・カンパス(メキシコ)、バーネス・マーティロスヤン(アメリカ)、そして1年前にはIBF世界ミドル級王者セバスチャン・シルベスター(ドイツ)に挑戦した経験も持っているのだ(10回TKO負け)。チャベス・ジュニアとの共通対戦相手としてはジョン・ダディがいるが、このダディに初黒星をつけたのがライルなのである。
両ガードを比較的高めに置いて距離を詰め、得意の左フックを引っかける好戦的な右ボクサーファイターで、パンチ力はないがしぶとい戦いをみせる。
身長、リーチで大きく勝り、スピードやパンチ力などでも上回るチャベス・ジュニアの優位は動かしがたい。世界挑戦経験者を豪快に屠って存在感をアピールする絶好の機会であろう。
Written by ボクシングライター原功
フェリックス・シュトルム
ミドル級トップ戦線の現状
WBAスーパー:フェリックス・シュトルム(ドイツ)
WBA:ゲナディ・ゴロフキン(カザフスタン)
WBA暫定:ハッサン・ナダム・ヌジカム(フランス)
WBC:セバスチャン・ズビック(ドイツ)
IBF:セバスチャン・シルベスター(ドイツ)
WBO:ディミトリー・ピログ(ロシア)
このクラスでもヘビー級と同様の現象が起こっている。伝統的に強かったアメリカから王者が消え、ドイツを中心にした欧州勢が王座を独占しているのだ。
このなかで実績、総合力でトップを行くのはシュトルムだろう。耐久面に問題を抱えてはいるが、正確な左ジャブを軸にした堅実なボクシングは健在だ。これを全勝のズビック、変則強打のピログ、アマ実績豊富な強打者ゴロフキン、攻防兼備のシルベスターが追う展開。
若手ではチャベス・ジュニアのほか「カナダの倒し屋」デビッド・レミュー、捲土重来を期す「デラ・ホーヤの秘蔵っ子」ダニエル・ジェイコブス(アメリカ)らに注目したい。また、元王者ケリー・パブリック(アメリカ)、4月にレミューと対戦するマルコ・アントニオ・ルビオ(メキシコ)も怖い存在だ。
WBOインターコンチネンタル・S・フェザー級王座決定戦
元WBO世界S・バンタム級チャンピオン
ダニエル・ポンセ・デ・レオン
(メキシコ)
WBA世界S・フェザー級8位
エイドリアン・ブローナー
(アメリカ)
変則強打の元王者 VS 19戦全勝16KOの俊英
オッズは7対5でブローナー有利
WBO世界フェザー級1位に名を連ね、指名挑戦権を有するデ・レオン。世界上位進出を目論む19戦全勝(16KO)のブローナー。どちらの立場から見てもリスクの高いカードといえる。デ・レオンの変則強打が勝るのか、それともブローナーがスピードと高い潜在能力で元世界王者を翻弄するのか。
デ・レオンは43戦41勝(34KO)2敗の戦績が示すとおりのスラッガーで、左構えからの変則的なタイミングで繰り出すパンチを得意とする。無骨なファイター型だが、最近は時折コンパクトなフックを捻じ込むこともあり、技術的な進歩も示している。
対するブローナーはオスカー・デラ・ホーヤ率いるゴールデン・ボーイ・プロモーションズ(GBP)が高い期待を寄せる21歳の俊英だ。アマチュアを経てプロ転向を果たしたのは08年5月のこと。まだプロキャリアは3年にも満たない。腰を落とし左ガードをルーズに構えた独特のスタイルから相手の懐に飛び込んで攻撃する右のボクサーファイター型で、秀でた運動能力を有している。その潜在能力が高く買われ、オッズ(賭け率)は7対5でブローナー有利と出ているほどだ。
スピードで勝るブローナーが忙しく出入りして元王者に攻撃の糸口を与えない可能性がある一方、デ・レオンの変則リズムと間合いをずらして放たれる強打が新鋭をトラブルに陥れるという見方もできる。
様子見の序盤、ペースアップの中盤を経て、勝負は終盤までもつれる可能性が高いとみる。
Written by ボクシングライター原功