強打者ダルチニャン、無敗のホープ マレスを迎え撃つ!
IBOバンタム級タイトルマッチ

元2階級制覇チャンピオン
ビック・ダルチニャン
(アルメニア)

WBC世界バンタム級4位
アブネル・マレス
(メキシコ)
豪打の闘牛 VS 無敗のエリート戦士 ダルチニャンのパワーかマレスの若さか
アメリカのテレビ局「SHOWTIME」が企画し、チャンピオンを含むトップ戦線の4選手と各プロモーターが協力して実現することとなったバンタム級最強決定トーナメント。WBC・WBO王者フェルナンド・モンティエル(メキシコ)とノニト・ドネア(フィリピン)は2月に直接対決するため不参加となったが、いずれは勝者同士が最終決戦として拳を交えることになるはず。今回のダルチニャン対マレス、ヨニー・ペレス(コロンビア)対ジョセフ・アグベコ(ガーナ)、さらにモンティエル対ドネアと、しばらくはバンタム級から目が離せない状況が続きそうだ。
フライ級とS・フライ級で王座獲得の実績を持つダルチニャンは西アジアのアルメニア出身の34歳。8歳でボクシングを始め、一時はアマチュアでの活動拠点をロシアに移したこともあった。当時からプロ向きのスタイルだったらしく、99年にアメリカのヒューストンで開催された世界選手権出場時には現地のマネージャーやプロモーターから熱心な勧誘を受けたという逸話が残っている。2000年のシドニー・オリンピックにはアルメニア代表として出場。これが縁となってオーストラリアでプロに転向したという経緯がある。アマ戦績は176戦158勝(105KO、RSC)18敗。
04年に獲得したIBF世界フライ級王座は3年間に6度防衛(5KO)。このベルトはドネアに奪われたが、08年にはS・フライ級でIBF王座を獲得。このクラスではWBAとWBC王座も吸収した。その後、アグベコの持つIBF世界バンタム級王座(当時)に挑戦したが、これは惜敗。以後、再びS・フライ級に戻ったが、昨年になって正式にバンタム級に転向を決めた。
サウスポーの変則的かつ好戦的なファイター型で、パンチの強さは左右とも群を抜いている。ことに相手の肩越しに被せるように打ち込む左は強烈だ。この試合に備えオーストラリアでスパーリング中心のトレーニングを積んだ後にアメリカ入りした。「より速く、よりパワフルに戦う。俺は14度の世界戦を経験しているがマレスは1度だけだろ? 力の違いを見せつけてやるよ。彼にとって俺は強すぎると思うよ。これはミスマッチさ」と、いつもどおり自信満々だ。
対するマレスは11人兄弟のひとりとしてメキシコで誕生し、現在はアメリカのカリフォルニア州に住んでいる25歳。7歳のときに兄にボクシングジムに連れられて行ったのが契機となってグローブを手にし、元プロボクサーの父親の指導で腕を上げていった。03年のパンナム大会ではギジェルモ・リゴンドー(キューバ ※現WBA暫定世界S・バンタム級王者)にポイント負けで銀メダル。翌04年の世界ジュニア選手権も銀に甘んじた。同じ年に18歳でアテネ・オリンピックに出場したが、ここでは初戦でゾルト・ベダック(ハンガリー ※WBO世界S・バンタム級6位)に27対24でポイント負けを喫している。アマ戦績は120戦112勝(84KO、RSC)8敗。
しかし、こうした実績がゴールデン・ボーイ・プロモーションズの目にとまり、05年1月にプロ転向を果たした。ここまでの戦績は21戦20勝(13KO)1分。10年5月にはペレスの持つIBF王座に挑戦、引き分けて株を上げている。スピードを身上とする右のボクサーファイター型で、今回の試合に備えてプロ6戦目までコンビを組んだクレメンテ・メディナ・トレーナーを呼び戻して練習を重ねた。パワーのあるダルチニャンを想定して、フェザー級のダニエル・ポンセ・デ・レオン(メキシコ ※元世界王者)らと126ラウンドのスパーリングを消化したという。「ダルチニャンが危険なファイターだということは十分に分かっている。でも怖れてはいない。スピードがパワーを凌駕するということを証明してみせる」と、こちらも揺るぎない自信を口にしている。
経験とパワーで勝るダルチニャン有利は誰もが認めるところ。加えてサウスポーというアドバンテージもある。マレスは序盤で2階級制覇者のスタイルに戸惑うようだと厳しい戦いを強いられるだろう。逆に持ち味のスピードを生かして戦うことができれば、ダルチニャンをコントロールすることは可能と思われる。
Written by ボクシングライター原功
IBF世界バンタム級タイトルマッチ

IBF世界バンタム級チャンピオン
ヨニー・ペレス
(コロンビア)

前IBF世界バンタム級チャンピオン
ジョセフ・アグベコ
(ガーナ)
コロンビアの実力派王者 VS ガーナのキングコング 因縁の再戦は今回も接戦必至
ダルチニャン対マレスとともに組まれたバンタム級トーナメントの準決勝戦。この試合にはペレスが保持するIBF世界タイトルがかけられる。
この両者は09年10月、当時の王者アグベコにペレスが挑戦するかたちでグローブを交えている。序盤から競った激しい試合になったが、10回にダウンを奪ったペレスが3対0の判定で勝利を引き寄せた。しかし、ダウンはバッティングの直後にアグベコが横を向いた際にパンチがヒットしたためで、もうひとつスッキリとしない部分が残ったのも事実だった。その後、ペレスはマレスと引き分けで初防衛に成功。アグベコは以後、1年以上もブランク状態が続いている。
こうした流れのなかで実現することになった再戦だが、実力に差がないだけに今回も接戦が予想される。
ペレスはコロンビア生まれの31歳だが、現在はアメリカのカリフォルニア州を生活拠点としている。アマチュアで247戦(勝敗数は不明)を経験後、05年に26歳でプロ転向を果たした。ここまで2度の世界戦を含めて21戦20勝(14KO)1分と無敗を誇っている右のボクサーファイター型。無駄のない動きから左ジャブを飛ばし、適度に粗く、適度に洗練されている選手だ。ガードも堅く、大崩れすることはないタイプといえるだろう。
今回の試合に備えてカリフォルニア州サンタフェ・スプリングスで8週間の集中トレーニングを敢行したという。バンタム級の選手だけでなく大きな選手も相手に合計100ラウンド以上のスパーリングをこなしたと伝えられる。
一方のアグベコはアフリカのガーナ生まれの30歳。現在はアメリカのニューヨークを拠点としている。「キングコング」という名は親から授かったミドルネームで、アグベコによればパスポートにも記載されているのだとか。
アマチュアを経てプロ転向を果たしたのは98年のことで、以来29戦27勝(22KO)2敗のレコードを残している。特筆すべきは07年9月にIBF世界バンタム級王座を獲得していることで、ダルチニャンらを相手に2度の防衛も果たしている。しかし、09年10月にペレスに判定負け、ベルトを手放してしまった。天性のバネや高い潜在能力を持つ攻撃型の右ボクサーファイター型で、タフネスにも定評がある。
雪辱と王座奪回に向けアグベコはニューヨークのブロンクスにある「JOHN'S GYM」で10週間の集中トレーニングを行い、自信を深めている。こちらもS・バンタム級やフェザー級の大きな選手を相手に1日14ラウンドのスパーリングを週3〜4回繰り返したという。
手の内を知った者同士の再戦だけに、今回も競った試合になるだろう。初戦をベースに考えるならば、前戦でやや集中力を欠いた感のあるアグベコの方により上積みが期待できそうだ。忙しくプレッシャーをかけながらスピードを生かして戦えばベルトを取り戻すことは可能とみる。
Written by ボクシングライター原功

フェルナンド・モンティエル
バンタム級トップ戦線の現状
WBAスーパー:アンセルモ・モレノ(パナマ)
WBA:亀田興毅(亀田)
WBC:フェルナンド・モンティエル(メキシコ)
IBF:ヨニー・ペレス(コロンビア)
WBO:フェルナンド・モンティエル(メキシコ)
フェザー級やS・ライト級と並んで実力者がズラリと揃った注目のクラスだ。軸となるのはWBC・WBOふたつのベルトを保持するモンティエルだが、3階級制覇を狙うノニト・ドネア(フィリピン)、ビック・ダルチニャン(アルメニア)も総合力で差はないものとみていいだろう。今回のトーナメントに出場するIBF王者ペレスと前王者ジョセフ・アグベコ(ガーナ)、無敗のアブネル・マレス(メキシコ)も高い戦力を持っている。誰が最後に笑うのか、しばらくはこのクラスから目が離せない状況が続きそうだ。
そんななか技巧派のV7王者モレノとともに、日本初の3階級制覇者・亀田が蚊帳の外なのが少し寂しい。
ランカーでは27戦26勝(25KO)1敗のウーゴ・ルイス(メキシコ)、かつて日本のジムに在籍したサーシャ・バクティン(ロシア)らに注目したい。
