エキサイトマッチスペシャル “THIS IS BOXING”
“スピードキング”西岡利晃、5度目の防衛戦に臨む!
WBC世界S・バンタム級タイトルマッチ
WBC世界S・バンタム級チャンピオン
西岡利晃
(帝拳)
WBC世界S・バンタム級1位
レンドール・ムンロー
(イギリス)
究極の日英サウスポー対決 西岡の5連続KO防衛に期待
2年前、5度目のチャンスをものにして世界最高峰に上り詰めた西岡のV5戦。過去4度の防衛戦と同様、KOで刺客を斬って落とすことができるか。
ここ5年ほどの西岡の充実ぶりは特筆に値するものといえよう。並べた白星は13(9KO)。5度の世界戦を含めての数字だから価値は高い。
内容に関しても文句のつけようがない。初防衛戦のヘナロ・ガルシア(メキシコ)戦は、タフ男を終始圧倒したすえの12回TKO勝ち。敵地メキシコでのV2戦では、世界的強豪として知られる元バンタム級王者ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)を3回KOで撃退。初回に不覚のダウンを喫したものの落ち着いて対処し、最後は鋭い踏み込みからの左ストレートでけりをつけている。V3戦は1年前の「WOW FES!」でのこと。これまた元世界王者イバン・エルナンデス(メキシコ)が相手だったが、挑戦者のアゴを打ち砕いて3回終了TKO勝ち。そして今春、無敗の新鋭バルウェグ・バンゴヤン(フィリピン)を戦慄的な5回TKOに下して4度目の防衛――。
「モンスター・レフト」の形容も、いまや違和感なく受け入れられる次元にきたといえる。
いうまでもなく西岡の切り札は左ストレートだが、そこに繋げる右リードも多彩になった。長年の取り組みで課題とされていたバランスが矯正され、攻防の切り替えも速くなった。経験値が増したことも大きくプラスに作用している。
「もう40戦以上(43戦36勝23KO4敗3分)やっているので、どこでやろうとなんとも思いません。34歳?いや、24歳ですから伸び盛りです。ボクはもっともっと強くなります」と、常に前を見据えている。
今回の相手ムンローはゴンサレスに次ぐWBCの指名挑戦者となる。ジャマイカの血を引くイギリス人で、これまでの22戦(21勝9KO1敗)はすべてイギリス国内でこなしてきた。イギリスの国内タイトルはもとよりヨーロッパ、英連邦タイトルも獲得した実績を持っている。
身長170センチ、リーチ173センチと数字は西岡とほぼ同じだが、全体的な体のボリューム感はムンローの方が勝る。その体を利して相手と対峙し、上体を小さく左右に振りながらリズムを刻む。ペースを掴むとガードしながら前進し、左右のパンチを細かく繰り出す。攻めるところは攻めるが守るところは守る傾向があり、防御はなかなか堅牢だ。12ラウンドを6回戦い切っていることからスタミナにも自信があるものと思われる。
「ガードがしっかりしていて、グリグリ前に出てきて手数の多い選手」というのが西岡のムンロー評だ。
西岡とすれば序盤でムンローを勢いづかせることは避けたい。早い段階で破壊力十分の左カウンターがあることを意識させ、前進を抑え込みたい。そういった意味でも互いの右リード・パンチがカギを握ることになりそうだ。
緊迫した前半の主導権争いを経て、両者がエンジンの回転を上げる中盤に大きなヤマが訪れるのではないだろうか。
Written by ボクシングライター原功
S・フェザー級10回戦
元2階級制覇チャンピオン
ホルヘ・リナレス
(帝拳)
元2階級制覇チャンピオン
ヘスス・チャベス
(メキシコ)
ゴールデン・ボーイ VS メキシコの闘牛士 リナレスは3冠への足掛かりを掴めるか?
昨年の「WOW FES!」でまさかの初回TKO負けを喫してWBA世界S・フェザー級タイトルを失ったリナレスが、再起3戦目に臨む。相手は元WBC世界S・フェザー級&IBF世界ライト級の2階級制覇者ヘスス・チャベス(メキシコ)。リナレスはスピードと技巧を武器にメキシコのタフ男を完封することができるのか。
ファン・カルロス・サルガド(メキシコ)の左フックによってデビューからの連勝を27でストップされたリナレスだが、今年3月に粘着型のフランシスコ・ロレンソ(ドミニカ共和国)を故国ベネズエラで下して再起。7月にはアメリカ・ラスベガスで強豪リカルド・フアレス(アメリカ)からダウンを奪って判定勝ちを収めている。
この2戦、リナレスは以前よりも重心を落としながらガードに細心の注意を払いながら戦っている。3階級制覇、4階級制覇に向け課題克服に余念がない。持ち味のフットワーク、スピード、テクニック、強打に鉄壁の防御が加われば夢の実現は近づくはずだ。
チャベスは03年にWBC世界S・フェザー級、05年にIBF世界ライト級タイトルを獲得した実績を持つ実力者。このところ3戦続けて武運から見放されているが、相手はマイケル・カチディス(オーストラリア)、デビッド・ディアス(アメリカ)、ウンベルト・ソト(メキシコ)と、いずれも世界王者経験者。11月に38歳になるが、経験値の高さではリナレスを大きく上回る。
165センチの短躯ながら頑強な体を利して前進、インサイドに入り込み上下にパンチを打ち分ける好戦的なスタイルを持つ。「マタドール」(闘牛士)の異名があるが、これはその勇敢さを讃えての称号であろう。
技術をベースに戦う長身のリナレスと、勇敢さを身上とする小柄なチャベス。当然のことながら得意とする距離が異なるため、まずはポジショニングを軸にした主導権争いに注目したい。リナレスが序盤で出遅れなければ自然にペースは掌中に転がり込んでくるのではないだろうか。中盤あたりに「ゴールデン・ボーイ」の見せ場が訪れるとみる。
Written by ボクシングライター原功
WBA世界L・フライ級暫定王座決定戦
WBA世界ミニマム級チャンピオン
ローマン・ゴンサレス
(ニカラグア)
WBA世界L・フライ級3位
フランシスコ・ロサス
(メキシコ)
驚異の強打者 VS 無類のタフ男 ゴンサレスが2階級制覇か?
当初、ゴンサレスはWBA世界L・フライ級王者ファン・カルロス・レベコ(アルゼンチン)に挑戦する予定だったが、レベコが腎臓結石の手術のため出場がかなわず、ロサスとの暫定王座決定戦に変更された経緯がある。
この両者、昨年2月に一度拳を交えている。ゴンサレスが新井田豊(横浜光)から奪ったWBA世界ミニマム級タイトルの初防衛戦にロサスを迎えたもので、試合はメキシコで行われた。王者の圧勝が予想された試合だったが、ゴンサレスは減量にともなう胃痛のため大苦戦。116対112、115対113、114対114という僅差判定で辛うじてベルトを守っている。
ゴンサレスはスピード、パワー、テクニックなど高いレベルで均整のとれた万能型の選手。26戦(全勝22KO)中、3ラウンド以内のKOが18もあるが、一方で10ラウンド以上を4度経験しており、スタミナ面でも問題はないとみていいだろう。23歳と若く、まだまだ伸びる要素はたっぷりある。
対するロサスは30歳。アマチュアで60戦(53勝7敗)後、98年にプロ転向。05年に来日して大阪で行った2戦を含め、これまで30戦21勝(12KO)7敗2分のレコードを残している。156センチと小柄ながら積極的に相手に迫り、左右のフックを叩きつけて勝負する好戦的なタイプだ。7つの敗北があるがいずれも判定まで粘ってのもので、タフネスにも定評がある。
ゴンサレスの強打が火を噴くのか、それともロサスが耐えて番狂わせを起こすのか。ゴンサレスが2階級制覇を成し遂げる可能性が高いが、いずれにしても軽量級ながら迫力ある打撃戦が見られそうだ。
Written by ボクシングライター原功