エキサイトマッチスペシャル
"パウンド・フォー・パウンド"パッキャオ、6階級制覇に挑む!
WBC世界S・ウェルター級王座決定戦

5階級制覇チャンピオン
マニー・パッキャオ
(フィリピン)

元WBA世界ウェルター級チャンピオン
アントニオ・マルガリート
(メキシコ)
「パックマン」の6冠なるか
オッズは23対4で有利だが……
WBC世界S・ウェルター級チャンピオンだったセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)が今年4月、ケリー・パブリック(アメリカ)を破ってミドル級王座も獲得。それにともなってS・ウェルター級王座を返上したため、今回の王座決定戦が行われることになった。
もちろん主役はパッキャオである。フライ級、S・バンタム級、S・フェザー級、ライト級、そしてウェルター級の5階級を制覇してきたフィリピン出身のスーパーマンが、オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)に並ぶ史上2人目の6階級制覇を成し遂げるかどうか。偉業を達成しても歴史、敗れたら敗れたでそれも歴史になるという大勝負である。
身長169センチ、リーチ170センチ、95年1月のプロ初陣の体重が106ポンド(約48.0キロ)だった痩せっぽちの男が15年後の現在、20キロ以上重いクラスで世界一の座を争うとは当のパッキャオでさえ想像もしなかったはずだ。しかも5つのクラスで世界制覇したあと、6つ目のベルトを狙ってのリングなのだから驚異である。飛び級の4クラス(S・フライ級、バンタム級、フェザー級、S・ライト級)も加えれば、すでに現時点で事実上の9階級制覇ということになる。
パッキャオの偉業は過去の複数階級制覇者と比較しても傑出したものといえる。6階級制覇のデラ・ホーヤや5階級制覇のシュガー・レイ・レナード(アメリカ)、トーマス・ハーンズ(アメリカ)が約13キロの増量だったのに対し、すでにパッキャオは約16キロの増量をやってのけているのだ。今回、S・ウェルター級も制覇するとなるとフライ級から19キロのアップということになる。ボクシングに体重制が採り入れられてから120年近く経つが、その定義さえ根底から覆してしまう数字といえよう。
今回の試合のオッズ(賭け率)は11月2日時点で23対4、パッキャオが圧倒的に有利と出ている。つまり6階級制覇達成の可能性は限りなく高いと見られているのだ。
しかし、それはあまりにもマルガリートを軽視した危険な見方といえよう。「ティファナの竜巻」と呼ばれるマルガリートは、パッキャオが過去に対戦した誰よりも大きくて強いパンチを放ち、誰よりもタフでスタミナがある。ウェルター級で3度の世界タイトル獲得の実績もあり、勝負度胸も十分。高いモチベーションも持っている。実にリスキーな相手なのである。
マルガリートは全体的なスピード感こそないが、180センチの長身から打ち下ろす右ストレートと185センチのリーチを折り畳んで繰り出す左右のフック、アッパーに抜群の破壊力を秘めた好戦的な強打者である。加えてパッキャオにとってはマルガリートの大きな体そのものが文字どおりの壁になると思われる。試合は両陣営の合意によってS・ウェルター級リミットを3ポンド下回る151ポンド(約68.4キロ)の契約体重で行われることになっているが、パッキャオが体格面で大きなハンディキャップを負っていることに変わりはない。
それでも多くの関係者やファンは、スピードで勝るパッキャオが鋭く踏み込んで左ストレートをヒット、元ウェルター級王者を圧倒すると見ている。パッキャオが左構えから繰り出す左ストレートに対するマルガリートの反応が遅れるようだと、「試合は2回で終わるだろう」というパッキャオ陣営のフレディ・ローチ・トレーナーの予言が現実のものになる可能性もある。2回KOはともかくとしても、毎回のようにパッキャオがポイントを重ね終盤にストップ(TKO)勝ち、あるいは大差の判定勝ちという線がもっとも可能性としては高いといえよう。
その一方で、番狂わせの匂いもプンプンと漂っている。マルガリートの体格と圧力に押されたパッキャオが抗いきれなくなり、しだいにスタミナと体力を消耗。中盤から終盤にかけて連打にさらされてキャンバスに沈むというシナリオだ。マルガリートの執拗な攻撃の前に逃げ場を失い、ついには諦めたように膝をついたミゲール・コット(プエルトリコ)の姿がダブる。
さらに、パッキャオにとっては下院議員になって初の試合でもあり、多忙の煽りを受けて調整がいつもより遅れたという情報があるのも気になる。
こう見てくると、パッキャオ有利は不動としても、それは絶対的なものとはいえないようだ。たしかなことがあるとすれば、パッキャオが勝っても負けても、それがボクシング史に刻まれるということであろう。
Written by ボクシングライター原功
