歴戦の強打者コット、復帰戦で技巧派王者フォアマンに挑む!
WBA世界S・ウェルター級タイトルマッチ

WBA世界S・ウェルター級チャンピオン
ユーリ・フォアマン
(ベラルーシ)

元2階級制覇チャンピオン
ミゲール・コット
(プエルトリコ)
STADIUM SLUGFEST コットの3階級制覇なるか
なにかと話題の豊富な試合だ。まず1976年の世界ヘビー級タイトルマッチ、モハメド・アリ(アメリカ)対ケン・ノートン(アメリカ)第3戦以来、34年ぶりにヤンキー・スタジアムで挙行されるボクシング・イベントであることが挙げられよう。歴史を遡れば野球場でのボクシング興行は数多く記録されている。ヤンキー・スタジアムも例外ではなく、1930年のマックス・シュメリング(ドイツ)対ジャック・シャーキー(アメリカ)戦は7万9000人、38年のジョー・ルイス(アメリカ)対シュメリングII戦は7万人、55年のロッキー・マルシアノ(アメリカ)対アーチー・ムーア(アメリカ)は6万1000人もの大観衆を集めているのである。
拳を交える両者が、リング内外で強烈な個性を放つ選手ということも盛り上げの大きな要因となっている。
チャンピオンのフォアマンはベラルーシ(当時はソ連)生まれの29歳。ボクシングを始めて2年後の9歳時に家族でイスラエルに移住し、同国の国籍も取得。イスラエルでは3度、ナショナル・チャンピオンになるなどアマチュアで80戦75勝5敗の戦績を残している。01年、20歳のときにニューヨークに渡り、店舗の掃除などをしながら英語とボクシングの腕を磨いたと伝えられる。02年のプロ転向後は29戦28勝(8KO)1無判定と無敗をキープ。昨年11月、ダニエル・サントス(プエルトリコ)を破り、イスラエル国籍を持つ初の世界チャンピオンとなった。アニメ好きの親日家とも伝えられる。
一方のコットはシドニー・オリンピックに出場するなどアマチュアで116戦(93勝23敗)後、01年にプロ転向。これまでS・ライト級のWBO王座、ウェルター級のWBA、WBO王座を獲得している。一昨年はアントニオ・マルガリート(メキシコ)に、昨年はマニー・パッキャオ(フィリピン)に苦杯を喫したが、現在もその実力は高く評価されている。すでに世界戦だけで16戦(14勝11KO2敗)を経験している。
1年前には内輪揉めからトレーナーの叔父(エバンヘリスタ・コット)を解雇。以来、以前から栄養面の管理を担当していたホセ・サンティアゴ・トレーナーとコンビを組んでいたが、今回の試合に備えて名伯楽の誉れ高いエマニュエル・スチュワート・トレーナーを招聘した。スチュワートは「コットは格段にバランスが良くなった。そのため以前よりもパンチ力も増した」と話し、プエルトリコ5人目(ヘクター・カマチョを含めれば6人目)の3階級制覇を狙うコット自身も「ものすごく調子がいい。クラスを上げたけれど体重調整も順調にいった」と話している。
ジャブと足で距離を保ち、タイムリーなカウンターでポイントをピックアップしていくフォアマンに対し、コットはガードを固めた覗き見スタイルで重圧をかける好戦的なスタイルを持っている。身長で10センチ、リーチでは13センチ、チャンピオンが上回っていることもあり、離れればフォアマン、接近してしまえばコット有利ということがいえるだろう。賭け率は2対1で挑戦者コット有利と出ている。
Written by ボクシングライター原功

セルヒオ・マルチネス
S・ウェルター級トップ戦線の現状
WBA:ユーリ・フォアマン(ベラルーシ/イスラエル/アメリカ)
WBA暫定:石田順裕(金沢)
WBC:セルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)
IBF:コーリー・スピンクス(アメリカ)
WBO:セルゲイ・ジンジルク(ウクライナ)
セルヒオ・マルチネスの活躍が目立つものの、全体的にはやや寂しい状況といえる。欧米を中心に強豪がひしめくクラスだが、ここ数年はタイトル戦が不活発な状態にあるからだ。IBF王者スピンクスは1年以上も実戦から遠ざかっており、WBO王者ジンジルクは今年5月の防衛戦が実に1年半ぶりの試合だった。WBA暫定王者・石田も試合枯れが続いている。石田は正王者との統一戦を希望しているが、フォアマン対コットでは両者の報酬総額が300万ドル(約2億7000万円 ※そのうちコットが200万ドル)と伝えられるだけに、割って入るのは難しそうだ。
むしろランカーに元気な選手が多い。近い将来にミドル級制覇を狙うポール・ウィリアムス(アメリカ)、戦線復帰を果たしたアントニオ・マルガリート(メキシコ)、全勝のバーネス・マーティロスヤン(アメリカ)、「伝説の継承者」フリオ・セサール・チャベス・ジュニア(メキシコ)、さらにカーミット・シントロン(プエルトリコ)、アルフレド・アングロ(メキシコ)らもいる。これに状況次第ではマニー・パッキャオ(フィリピン)が加わる可能性もあるのだから、しばらく目が離せないクラスといえよう。
WBA暫定世界S・フェザー級タイトルマッチ

WBA暫定世界S・フェザー級チャンピオン
ホルヘ・ソリス
(メキシコ)

WBA世界S・フェザー級9位
マリオ・サンチャゴ
(プエルトリコ)
兄弟世界王者 VS カリブの実力者 接戦は必至 終盤に抜け出すのは?
WBAのS・フェザー級タイトルは日本とは縁深いものがある。古くは柴田国明(ヨネクラ)、上原康恒(協栄)、90年代後半には畑山隆則(横浜光)が君臨していたし、近年はホルへ・リナレス(帝拳)がベルトを所持していた。そのリナレスがファン・カルロス・サルガド(メキシコ)に衝撃の初回TKO負けを喫し、王座を明け渡したのが昨年10月のこと。王座は今年に入ってサルガドから内山高志(ワタナベ)に受け継がれている。
今回争われる暫定王座は昨年11月、サルガドが在位のときに設けられたもので、今年2月、リカル・ラモス(コロンビア)を倒したソリスが継承者となっている。
そのソリスは2歳下の弟ウリセス・ソリス(元IBF L・フライ級王者)とともに、兄弟世界王者として歴史に名を刻んでいる。早くから世界チャンピオン候補として注目されてきたが、3年前にマニー・パッキャオ(フィリピン)に敗れてからは勢いがストップしてしまった。昨年7月にはクリストバル・クルス(メキシコ)の持つIBF王座に挑んだものの12回判定負け。ラモス戦は再起戦でもあったが、ここで本領発揮するあたり、まだまだ運があるということだろう。
スタンスを広くとった構えからアッパー気味のフックを叩きつける右のボクサーファイター型。中間距離での戦いを得意としている。
対するサンチャゴはサウスポーの好戦的なボクサーファイター。上体を寝せた状態から伸びのある左を打ち込んで攻めるタイプで、ラフファイトもこなせる。世界初挑戦となった2年前のスティーブン・ルエバノ(アメリカ)戦ではダウン応酬の派手な戦いをみせたが、引き分けに終わっている。
経験値ではソリスが勝るが、総合力に大差は見られない。そう簡単に勝負がつくカードとは思えない。ソリスには地の利、サンチャゴにはサウスポーの利があり、そのアドバンテージを生かした方に流れが行くだろう。勝負の行方は終盤まで混沌としそうだ。最後に抜け出すのはソリスか、それともサンチャゴか。
Written by ボクシングライター原功
