怒涛のビッグマッチ タイムリーオンエア!
大巨人ワルーエフに豪腕ヘイが挑む!
WBA世界ヘビー級タイトルマッチ
WBA世界ヘビー級チャンピオン
ニコライ・ワルーエフ
(ロシア)
元3団体統一世界クルーザー級チャンピオン
デビッド・ヘイ
(イギリス)
史上最巨人王者 VS 英国の破壊王 最重量級に「チェンジ」は起こるか!?
「最近のヘビー級の試合は退屈で仕方ない。俺が参入してファンにKOの醍醐味を教え、人々の興味を惹きつけてみせる」――1年前、ヘイはそう宣言してクルーザー級の3団体王座を放り出してヘビー級に転じた。身長191センチ、体重97.5キロ(08年11月のモンテ・バレット戦)。いまの最重量級ではレギュラー・サイズの挑戦者は、ヘビー級に革命を起こすことができるのだろうか。
ヘイはアマチュアの世界選手権(01年)で銀メダルを獲得後、02年にプロデビュー。英国タイトルや欧州タイトルを手中に収めた後、07年にジャン・マルク・モルメク(仏)を逆転 TKOで破ってWBA&WBC世界クルーザー級タイトルを獲得。昨年3月、WBOチャンピオンのエンゾ・マカリネリ(英)との統一戦でも豪快な2回TKO勝ちを収め、3団体統一を果たした。
ヘビー級転向後は元世界タイトル挑戦者のバレットを5回TKOに下したが、以来、試合をしないまま1年が経ってしまった。6月に予定されたIBF&WBO王者ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)への挑戦を自分の負傷で流し、9月にセットされかかったWBC王者ビタリ・クリチコ(ウクライナ)戦も蹴ったためだ。
ヘイは23戦22勝(21KO)1敗の戦績からも分かるように、相手に積極的にアプローチしていって強引に攻め落とすファイター型。クロス気味に放つ右が決め手だ。強打の反面、自身も耐久面で課題を抱えており、これまでも何度かトラブルに陥ったことがある。自分にとって有利であれ不利であれ、常にエキサイティングな状況をつくりだす選手といえる。
そんな危険な挑戦者を迎えるワルーエフは、身長2メートル13センチ、体重145キロ〜150キロという史上最長身、最重量の世界チャンピオンである。ヘイよりも身長で22センチ、体重では45キロ〜50キロ程度重いことになる。
これだけの巨体をもちながらワルーエフは俊敏とはいえないながらも決して鈍重ではない。丹念に左ジャブを突いておいて機を見て右に繋げるオーソドックスの戦闘スタイルを身につけている。相手にとって最も厄介なのは長い左といえよう。サイズの違いがそのまま射程距離の差となっているからだ。また、体の大きさは耐久面でもプラスに作用している。大巨人攻略がいかに難しいか。それは、過去52人が挑んで、成功したのがルスラン・チャガエフ(ウズベキスタン)だけというデータでも分かるだろう。
ヘイは“2人目”になれるのか。この挑戦者がヘビー級に「チェンジ」をもたらすとしたら、スピードの利を生かした戦い方をしたときであろう。大巨人の正面に留まらず、前後左右に揺さぶりながら飛び込み、右ストレート、フック、アッパーを叩き込めるかどうか。
賭け率は2対1でヘイ有利と出ているが、これは期待度をこめたものと思われる。ワルーエフが挑戦者を一蹴するのか。それともヘイが大木をなぎ倒すのか。KO決着は必至だ。
Written by ボクシングライター原功
ビタリ・クリチコ
ヘビー級トップ戦線の現状
WBA:ニコライ・ワルーエフ(ロシア)
WBC:ビタリ・クリチコ(ウクライナ)
IBF:ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)
WBO:ウラディミール・クリチコ(ウクライナ)
歴史的にみてヘビー級の長いアメリカ支配が幕を下ろしたと思ったら、旧ソ連圏選手の時代が到来した。3人の現王者だけでなく、各団体のランキングを見ても旧ソ連、東欧勢の名前が目立つ。
そんななか、ここにきてエディ・チェンバース、ケビン・ジョンソンのアメリカ勢がクローズアップされている。ジョンソンは12月にビタリへの挑戦が決定。サミュエル・ピーター(ナイジェリア/米)を破っているチェンバースも遠からずタイトルに挑むことになるはずだ。ともにパワーの点で物足りなさはあるが、王国復活に期待がかかる。
ヘビー級に新風を吹き込めるか、元3団体統一クルーザー級王者のデビッド・ヘイ |
身長213cm体重143kg、“ロシアの大巨人”ニコライ・ワルーエフが入場 |
身長差22cm体重差45kgの体格差をヘイは克服できるのか!? |
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序盤、ヘイがスピードでワルーエフを圧倒する |
5回、ヒットアンドアウェイを繰り返すヘイ |
7回、ワルーエフも反撃に出る |
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7回、ヘイの右アッパーがワルーエフを捉える |
8回終了、ダメージはないが覇気のない表情のワルーエフ |
9回、ヘイの右ストレート。終盤になってもヘイ優勢は変わらず |
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12回、ヘイがこの試合一番の左フックを放つ |
ついに“大巨人”がよろめいた |
ラッシュをかけるヘイ。勝利は目前だ |
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試合終了、うなだれるワルーエフの背中が結果を物語る |
スコアは2-0(116-112、116-112、114-114)。ヘイが喜びを爆発させる |
2階級制覇を果たしたヘイ。次の標的はクリチコ兄弟だ |
Written by ボクシングライター原功