カネコアツシ ドラマ版「SOIL ソイル」について語る 原作者の想像を超えてねじれた謎が、今、紐解かれる

「SOIL」はミステリーという形式を取りつつも、物語が進行するにつれ“謎”は紐解かれるどころか更にねじれこんがらがっていく、という構造をもった作品でありまして、そこいらへんがツイステッド・ミステリーと銘打っている所以だったりします。
現時点で原作のマンガは進行中で、程近いラストに向けてなだれ込んでいっている真っ只中なのですが、その行く先は今のところ僕の頭に中にしか存在しません。

ではドラマ版「SOIL」は何処に向かい、何処に辿り着くのでしょうか?

果たして、シナリオを拝見すると、清水さん、山口さん両監督は原作とは全く違ったオリジナルのラストを目論んでいるようです。
お二人は原作とお渡ししたプロット(マンガ「SOIL」は実はあらかじめ全体を構築したプロットに沿って進行しているのです。)を読み込んでいただいた上で換骨奪胎、独自の解釈を以って、原作者も度肝を抜かす驚天動地の展開を作り上げておりました。
「ああ、この手もあったか」と唸ったり、「そこまで深読みしたか」と恐れ入ったり、「SOIL」は僕の手を離れ、原作のエッセンスを生かしつつも、全8話のドラマとして見事に「すげえ面白く」成立していました。
つまりこのドラマ版は、原作と出発点を同じくして迷宮をそれぞれの方向に迷い、別々のゴールに辿り着いた、もうひとつの「SOIL」といえます。

原作があっても、映像化されるならばそれは監督のもの、と思います。
そういった意味でドラマ「SOIL」は間違いなく清水さん、山口さんの作品になっており、それはとても正しく、幸福な在り方だと思うのです。

ちなみに、撮影の現場に何度かお邪魔させていただいたのですが、監督はじめキャスト、スタッフの方々が皆、ざっくばらんで楽しげな雰囲気の中でものづくりをされていて、このような場で僕の「SOIL」が受け入れられ、育まれることは生みの親としてとても幸せなことだと、感動しきりでした。

さて、ドラマ版「SOIL」、ねじれこんがらがったまま手繰り寄せる「謎」のその先が、どんな深淵へと繋がっているのか、僕も視聴者の一人として胸騒ぎとともに待ち構えたいと思います。

カネコアツシ


© 2010
ENTERBRAIN, INC.

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原作の[SOILソイル]も連載中です。

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© カネコアツシ/エンターブレイン


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