大陸横断鉄道や初取材のアセラ・エクスプレスでフロンティア・スピリットをたどる旅。
鉄道大国アメリカ
大統領選が注目される今、「自由、平等、フロンティア・スピリット」の源泉を訪ねてアメリカ合衆国を縦横断します。東海岸に建国の軌跡を訪ねてフロリダへ南下。そして西部開拓史に思いを馳せつつ大陸横断鉄道で西海岸へ。コロンブス・デーなど秋の祭も楽しみながら、アメリカの文化と歴史を俯瞰する旅です。
大陸横断鉄道や初取材のアセラ・エクスプレスでフロンティア・スピリットをたどる旅。 鉄道大国アメリカ大統領選が注目される今、「自由、平等、フロンティア・スピリット」の源泉を訪ねてアメリカ合衆国を縦横断します。東海岸に建国の軌跡を訪ねてフロリダへ南下。そして西部開拓史に思いを馳せつつ大陸横断鉄道で西海岸へ。コロンブス・デーなど秋の祭も楽しみながら、アメリカの文化と歴史を俯瞰する旅です。 熱帯のフロリダへ向かって リッチモンド〜チャールストン〜オーランド〜マイアミリッチモンド 戦渦の歴史を刻む南部連合の首都バージニア州議事堂バージニアはイギリスから最初に独立した13州の1つ。「Mother of Presidents」と呼ばれ、8名もの大統領を輩出しています。州議事堂は建国の祖の1人、第3代大統領トーマス・ジェファーソンがギリシア神殿を模して1785年に設計。後の各地の議事堂のモデルとなりました。州旗の図案は、剣を持った女性が州の象徴で、組み敷かれているのが専制君主。独立国のプライドを強く意識したデザインです。 バージニア州議事堂 トーマス・ジェファーソン像 バージニア州シンボルマーク 南部連合博物館とホワイトハウス南北戦争時、南部連合の本部だったリッチモンド。1861年に国を二分する事態となった戦争の顛末を、博物館では時系列で詳細に解説しています。隣接するのは、連邦から離脱した南部が擁立した大統領、ジェファーソン・デイビスの官邸。こちらが本当のホワイトハウスというわけです。1階の公邸は豪華な装飾を施しているのに対し、2階の私邸は丈夫で安価な建材を使い、節約を旨としていたようです。 南部連合博物館 博物館内部 南部軍の軍服や軍装品 ジェファーソン・デイビス官邸、通称ホワイトハウス ホワイトハウス会議室 ジェファーソン・デイビス執務室 コロニアル・ウィリアムズバーグ1699年、イギリス政府がバージニア植民地の主府とした場所。町にあった500余りの公共施設、民家、店、酒場などが復元され、住民が当時の生活をし、丸ごと生きた博物館となっています。職人さんに話しかけると当時の言葉で仕事の話を聞かせてくれたり、午後5時には総督公邸前から大砲の合図で楽隊が行進を始めます。兵隊が空に向けて放つ空砲は大迫力。歴史に残る議事堂も一見の価値ありです。 コロニアル・ウィリアムズバーグ カツラ職人 銀細工職人 総督公邸 鼓笛隊のパレード 1776年にイギリスからの独立を決議した議事堂 ジェームズタウンウィリアムズバーグよりさらに古い史跡がジェームズタウン。アメリカ最古の入植地、大陸に初めてヨーロッパ人が住み着いた場所です。1607年、スーザンコンスタント、ゴッドスピード、ディスカバリーの3隻の船で、キャプテン・スミス率いる104人が黄金を求めて入植しました。そのとき飢えに苦しみ、先住民の娘に助けてもらったのがポカホンタス伝説です。現在は船や当時の砦が復元されています。 復元された3隻の船 当時の船員のコスチューム パルメット号アムトラックのパルメット号で、リッチモンド・ステープルズ・ミルロード駅を出発。一路チャールストンへ向かいます。パルメットはニューヨークとジョージア州のサバンナを結ぶ路線で、サウスカロライナの州旗に描かれている椰子の木を名前に冠しています。長距離路線なので、コーチクラスでも2-2配置のゆったりシート。リクライニングしてフットレストを上げれば寝台のようになり、枕も貸してもらえます。 パルメット号 ジェームズ川を渡るパルメット号 チャールストン 古き良き南部情緒あふれる古都サムター要塞南北戦争の火蓋がまさに切られた場所。1861年4月12日、チャールストン沖の小島の砦を南軍が攻撃、これを発端に、4年におよぶ内戦に突入しました。現在、要塞跡は博物館。パルメット(椰子)を描いた旗は南軍サウスカロライナ連隊のもので、砦が南軍の手に落ちたときに掲げられたものだそうです。島へはクルーズ船が運行しており、海から臨むチャールストンの美しい町並みも必見です。 サムター要塞 大砲 南北戦争を再現したジオラマ ブーンホール・プランテーション豊かな人々が多く、「南部で最も輝かしい町」と言われたチャールストン。郊外には綿花の大農園も多くありました。その1つ、最盛期には1万7千エーカーの広さを誇ったブーンホール。邸宅へと続く1kmの樫の木並木が美しく、ハリウッド俳優が結婚式を挙げたり、映画『きみに読む物語』の撮影も行われました。どこまでも穏やかな景色ですが、立ち並ぶ奴隷小屋は歴史の残酷さも伝えてくれます。 邸宅 奴隷小屋の内部 綿花の畑 旧奴隷市場博物館17世紀後半から1863年まで、実際に奴隷市場として使われていた建物。奴隷オークションの様子、収容所や拘束具、奴隷を折檻する道具などが展示されています。奴隷は1人200〜300万円。人の一生がどれほど安かったのか、そして大勢の奴隷を使っていた大農園主がどれほど裕福だったのか考えさせられます。親子ペアの価格設定もあり、何も持たぬ彼らの唯一の望みは家族そろって買われることでした。 旧奴隷市場博物館 旧商品取引所貿易港チャールストンが最も栄えた1771年、イギリスによって建てられ、あらゆる物資がここで取り引きされました。独立宣言後も町は1782年まで占領され、イギリスに抵抗した者は取引所の地下牢に収監されたそうです。当時から特産品だったカゴは、スイートグラスという草を編んだもので、奴隷たちが技術を受け継いできました。こういった技術を持つ奴隷の方が高い値が付けられたといわれています。 旧商品取引所 スイートグラスのカゴ カゴ作り 歴史地区古くから海運業で発展し、富裕層が多く暮らしたチャールストン。300年を超す邸宅や教会が今も日常的に使用され、全体の景観も守られています。これは、1931年に施行された全米初の「歴史地区の保存条例」の賜物。高層の建物がないので、最初のイギリス国教会であるセント・フィリップ教会も、街で一番古いセント・マイケル教会も、現代建築に邪魔されることなく美しいスカイラインを描いています。 バッテリー通りの邸宅群 セント・マイケル監督派教会 セント・フィリップ監督派教会 オーランド 世界有数のテーマパーク&リゾート王国シルバーミーティアニューヨークとマイアミを結ぶアムトラックの長距離列車。同区間を走るシルバースターと合わせてシルバーサービスと呼ばれていますが、途中で路線が2手に分かれ、ミーティアの方が最短距離を走ります。ビューライナー寝台車、食堂車、ラウンジカー、コーチ車などを連結し、オーランドまでは約7時間の旅。車窓はフロリダ州に入ると南国らしく変わり、パームツリーやオレンジ畑が目立っていきます。 シルバーミーティア オーランド駅早朝5時にチャールストンを発ち、昼過ぎにオーランド到着。1926年にスパニッシュ・ミッション・スタイルで造られた駅舎は、白壁、テラコッタの屋根、青空のコントラストがリゾート・ムード満点。2つの塔やアーチ回廊、情緒ある木製ベンチも旅の気分を高めてくれます。「SEABOARD COAST LINE」とあるのは、この路線が1967~1982年までシーボード・コースト・ライン鉄道だった頃の名残です。 オーランド駅 オーランド駅ホーム レイク・エオラ公園湖や沼が無数にあるオーランド。レオラ湖は公園として整備され、市民の憩いの場となっています。…先住民との「フロリダ戦争」の際、野営の見張りをしていたオーランド・リーブスは、湖に浮かぶ丸太がゆっくりこちらへ向かってくるのを見つけた。先住民の夜襲と気付き、仲間に知らせたがオーランドは命を落とした。彼の墓標が地名として残った…という伝説にちなみ、湖畔に記念碑が立っています。 レイク・エオラ公園 ケネディ宇宙センター国内唯一の有人宇宙船打ち上げ施設であり、1959年のマーキュリー計画に始まる宇宙開発の軌跡を知ることができるテーマパーク。実機を展示したロケットガーデンに圧倒され、宇宙飛行士トレーニングでは実際の訓練を体験。発射台、宇宙船、宇宙飛行士、宇宙服、見るものすべてが本物ですから大人も子どもも大興奮!最後のスペースシャトル、アトランティス号も2013年の夏から展示される予定です。 ロケットガーデン アームストロング船長の宇宙服 ジェミニ計画のカプセル マーキュリー計画の管制室 質問に答える宇宙飛行士に 実物大模型機「エクスプローラー」 マイアミ 陽光あふれる全米随一のリゾート・シティリトルハバナ1959年以降、カストロ首相の台頭でキューバを逃れて来た人々のコミュニティ。メインストリートのカジェオチョ(8番街の意味)を歩くと、看板はほぼスペイン語で、英語が通じないことも多々。甘くほろ苦い香りに店を覗くと、職人さんが葉巻を手作りしている工房でした。タワーシアターは1926年に開館した古き良き映画館。2011年、USA TODAYの「最も華麗な映画館10選」に数えられています。 リトルハバナのメインストリート、カジェオチョ 古い映画館にマッチしたシボレー・ベルエア 葉巻工場 アールデコ地区マイアミビーチのオーシャン・ドライブを中心に、アールデコ建築が密集したエリア。前半(〜1938年頃)はエジプトやペルシャの古代建築がモチーフ、後半(1930年代〜)は流線型デザインが多いとか。パークセントラルホテル(1937)、オステリア・デル・テアトロ(1938)、コロニーホテル(1939)など、細部を比べてみるのも楽しそうです。クラシックカーは雰囲気作りと宣伝で置いている店が多いようです。 オーシャン・ドライブ パークセントラルホテル オステリア・デル・テアトロ マイアミビーチ白砂のマイアミビーチは世界の憧れ。大人のカップルが多く、子どもの姿はあまり見かけません。アールデコ地区に倣ってか、救助員が待機するライフガード・ハウスも1つ1つ個性的でカラフルです。夜になるとビーチ沿いのオーシャン・ドライブは、レストランやバーから流れるサルサやレゲエで賑やか。陽気な南国の夜、パステルトーンだったアールデコ建築はネオンで彩られ、別の顔を見せてくれます。 マイアミビーチ ジョーズ・ストーン・クラブマイアミ名物の石ガニは、石のように硬い「爪」だけをハンマーで割って食べます。全体重の半分が爪で、捕まえたら片方の爪だけ切って海に戻し、資源の枯渇を防いでいます。おすすめは、2013年に100周年を迎えるこの老舗。漁の解禁は10〜5月のみ、よって8〜10月上旬は休店してしまうので要注意。また、予約できないので行列も必至。それでもきっと後悔しないおいしさが待っているはずです。 ジョーズ・ストーン・クラブ 店内 大きな蟹の爪
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