Colorful 原恵一監督スペシャルインタビュー アヌシー国際アニメーション映画祭で2冠に輝いた「カラフル」原恵一監督にインタビュー! WOWOWで放送!

原恵一監督スペシャルインタビュー
「カラフル」には様々な女優や俳優が声の出演をされていますね。
中でも印象深い方はどなたでしょうか?
原:「カラフル」に関しては、現実的な生身の肉体が感じられるような声が合うのではと思ったので、このようなキャスティングになりました。具体的な選考方法としては、誰がいいかを考えて、その人たちの過去の作品を見直すというやり方です。一度見たものでも、もう一回見直してしっくりくるかどうかを改めて確認して、お願いしました。 個人的に印象深い方は麻生久美子さんですね。きっかけは「episode 2002 Stereo Future」という映画なのですが、僕自身、麻生さんが大好きだったんです。演じてもらった真の母親役と麻生さんの年齢では開きがあって、実際の麻生さんよりかなり老けた年齢の人をやってもらうというのが、いいのかどうかという悩みはありました。でも当時お願いしたところ、快諾してくれたんですよね。ご本人曰く、アニメが好きで僕の作品も見てくれていたそうで、「カラフル」の依頼があった時は嬉しかったですと言っていただきました。僕自身もすごく嬉しかったです。
次回作も「カラフル」のような
人間の心のひだを描くような作品になるのでしょうか?
原:「カラフル」をつくってみて、このスタイルを更に追求しようとは今は思っていないです。今回はアニメらしさを削ぎ落として上手くいったと思いますが、次に更にリアルな形でやろうとは現在のところ考えてはいません。「カラフル」みたいな作品をつくるのは、ものすごく我慢が必要だということが身に沁みて分かったんです。実は、飛んだり跳ねたりする方がアニメはやりやすいし、反対に、常に地面を歩いていくような作業は、作り手にも負担になるんです。
原恵一監督スペシャルインタビュー

原恵一監督スペシャルインタビュー

「カラフル」©2010森絵都/「カラフル」製作委員会
原恵一監督インタビュー写真/撮影:中川容邦

今の日本のアニメの魅力を原さんの言葉で言うとしたらどういうところですか?
原:「日本のアニメ」というジャンルが世界的にも独特の喜ばれ方をされていますよね。僕自身も独特の進化をしていると思うんですけど、だからと言って、アニメの一番大切なキャラクターを動かす部分のスタッフ全員のレベルがものすごく高いというわけではないんですよ。「カラフル」なんかでもやってもらったような、精度や忍耐や技術力が要求されるような食事のシーンを描けるスタッフが実はそんなに多くない。スペシャリスト達が現場をあちこち歩き回ってクオリティを維持しているという現実が舞台裏にはあるんですよね。そういう人達がいるおかげで僕みたいな挑戦が出来ますから。 例えば、普通に食事をしているシーンを描いてくださいとアニメーターにオファーした時に、ほとんどの人は「僕、食事のシーンは嫌です」と躊躇するんですよ。その中で「僕、やりたいです」という人がいるおかげで、世界のアニメが挑戦しないような、「カラフル」のような日常に挑戦するような作品を作れたりするという結果は生まれます。そこはやはり「日本のアニメ」の技術力の高さだと言えますよね。
最後に監督から視聴者の皆様へ一言、お願いします!
原:注目して観てもらいたい部分は、ラスト間際の屋上のシーンです。実写で言うとマジックアワーという、日が落ちてから直射光がなくなった時間にあたります。空と世界の色がオレンジからピンク、紫、青に徐々に変わっていく様をリアルタイムな感じでやってみたいなと思いました。背景をカットがわりで微妙に色を変えていき、それに合わせてキャラクターの色を背景に馴染むような色設計でカットごとに行うということをやったんですよ。すごく自然に出来たんですけど、自然に出来すぎてなかなか気づいて貰えないっていう…(笑)。恥ずかしながら、気づいてくれたら嬉しいなと思います。映画で初めて観たらなかなか気づけない箇所でも、テレビ画面で録画をして観てもらえたら、改めて確認してもらえますよね。僕自身が手掛けた作品のなかでも「カラフル」ほど時間を細かく変化させた作品は、なかなか無いと思います。どうぞお楽しみください!
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