
“王者”ロジャー・フェデラーと“カリスマ”アンドレ・アガシ。男子決勝は、考えられる最高の組合せになった。2連覇に王手をかけたフェデラーと、99年以来6年ぶり3度目の優勝を狙うアガシ。フェデラーが勝てば通算32個目のツアー優勝となり、アガシが勝てば61個目の栄冠となる。二人のチャンピオンの年齢は、ひと回り近く違う。24歳と脂の乗りきったフェデラーに、本戦に出場した男子選手中最年長35歳のアガシ。バトンは受け継がれるのか否か、われわれは、もうすぐ「歴史」を目撃することになる。
会見で「十分長くやってきたんだから、この先がどのくらい短いかは分かっている」と語ったアガシ。引退の時期には言及していないものの、3年前、全米優勝を花道に引退したピート・サンプラスに今のアガシを重ねる人は多い。ニューヨークのファンは、35歳のカリスマの“最後”の全米が1日でも長く続くように、懸命の声援を送っている。
その声援に後押しされ、アガシは準決勝まで3試合連続でフルセットの厳しい試合をくぐり抜けてきた。なかでも準々決勝のジェームズ・ブレイク戦は薄氷の勝利だった。一方のフェデラーも、準決勝では過去8連勝中のレイトン・ヒューイットに苦戦。3時間の戦いでようやく振り切った。そうして、待ちに待った組合せが実現した。
勝敗のカギはアガシが握っている。フェデラーには現在7連敗中。今季の3試合では1セットも取れていない。この戦績をどうひっくり返すかはアガシの戦術にかかっている。全豪でアガシは、フェデラーのバックハンドを攻めた。弱点のないフェデラーだが、片手打ちだけに、バックハンドだけは苦手というか、攻撃的に打てるポイントが少し狭くなる。そこでアガシは、バックハンドを攻め、スライスで返球するしかない状況を作ろうとした。しかし、それが通じなかった。少しでも甘くなると、フェデラーはフォアに回り込んで強打した。バックハンドの打ち合いでも、フェデラーがアガシを上回った。アガシは途方に暮れたような表情を見せ、記者会見ではフェデラーの「多才さ」を褒め上げた。
今大会でも、準決勝後の会見で「たいていの選手はいくつかの弱点と一つの武器を持っているものだが、彼(フェデラー)には弱点がなく、数個の武器を持っている」と決勝の相手を称えたアガシ。そのうえで「コーナーからコーナーへ、またコーナーからコーナーへと、繰り返し打っていく」と作戦を明かした。確かに、そうやって、走らせてバックハンドを打たせることが糸口になるだろう。アガシが言うように「徹底して」その作戦を貫くことが勝利への唯一の道だ。
ただ、フェデラーはフットワークが素晴らしいうえに、バックハンドスライスの使い方が恐ろしく上手い。よほど振り回さなければ、崩れないだろう。
アガシの不利は否めない。しかしアガシには、ニューヨークのファンがついている。来月4歳の誕生日を迎える息子ジェイデン・ギルと、間もなく2歳になる娘ジャズ・エルがいる。深く信頼するトレーナーのギル・レイエスとダレン・ケイヒルコーチ、そして最愛の妻シュテフィ・グラフの応援がある。この後押しは大きな力となるだろう。
まずは、アガシの戦い方に注目してほしい。そして、アガシを支える見えない力を画面を通して感じていただきたい。愛の力が、クライマックスの筋書きを書き換えるかもしれない。
放送時間:日本時間9月11日(日)午前5:00〜午前9:00 WOWOW/191ch/BS-5ch ※生中継、延長あり
特別寄稿 by 財団法人日本テニス協会広報委員・フリーライター秋山英宏
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