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コラム

【錦織圭レポート】体力が裏打ちした錦織の自信のショット

2014/01/21

ナダル相手に健闘を見せた錦織圭。今季の活躍が期待される戦いぶりだった。(写真提供:Getty Images)

 自信は勝つことでしか生まれない――かつてラファエル・ナダルから聞いた言葉だ。

 錦織圭のショットはまさに自信から飛び出し、その一つ一つが、クルム伊達公子の口癖だった「意味のあるショット」としてゲームにストーリー性を与え、スタンドを沸かせた。今大会、スタンドの観客はもちろん、テレビ視聴者も思わず「強い!」だけでなく「面白い!」と口走ったのではなかったか。面白いテニス、プロらしいプレー。昨年と同じベスト16に終わったとはいえ、錦織圭の面目躍如のシーズン開幕だった。

 象徴的なシーンとして、ナダルとの4回戦の第2セット、第9ゲームの最初のポイントを挙げる。第1セットをタイブレークで落とした錦織は、第2セットの第5ゲームを先にブレークして4-2とリードした。しかし第8ゲーム、ダブルフォルトを足掛かりに、ナダルにブレークバックを許した直後のプレー、精神的に悔いを引きずった場面である。

 ナダルの時速182kmのファーストサーブがセンターに入り、錦織はそれをナダルのほぼ正面のベースライン深くにリターン。続く2打目はフォアハンドで相手のバックサイドのコーナー深くに打ち込んで、ナダルがそれをクロスに返してくると、今度は逆クロスでフォアサイドのコーナー深くに送った。次はフォアハンドのクロスを浅目のサイドラインに狙い、ナダルの返球がやや浮いて角度も甘く入ってきた。錦織はすかさずこれをボレーで捉え、クロスに押し流した。完全に逆をつかれたナダルは、戻ろうとして転倒。ゴロゴロとコート上を2回転し、その衝撃でシューズの紐が切れた。

「あんなことは今まで一度もなかった」

 シューズを履きかえたナダルがこのゲームを奪ってそのまま7-5にするのだが、テニスの展開は、ネットを挟んだ両者の予見の上に成り立っている。ナダルの転倒は、そこまでに刷り込まれていた錦織の揺さぶりの激しさを物語っていた。

 錦織は3回戦の試合後の会見で、ナダル戦に向けてこう話していた。バックサイドに高いボールを打ち込んでくるだろう。後ろに下がらず、ベースライン近くに位置してライジングで早い処理をし左右に揺さぶりたい――4回戦はその戦術通りに進められ、7-6、7-5、7-6という手に汗握る接戦になった。

 テニス・プレーヤーの誰もが口にする言葉は「経験」と「自信」だ。これは「時間」という言葉に置き換えることができるだろう。いくら才能があっても、環境に恵まれていても、テニスの結果はすぐには出てこないということだ。

 錦織がナダルと初めて対戦したのは6年前の18歳の年だが、その頃からナダルもフェデラーも錦織の素質を評価していた。ツアーで時間を過ごし、勝ち負けを繰り返して経験と自信を積み重ねたが、それだけで足りなかったのが体力だ。昨年の夏以降、試合途中でいつも腰を押さえていた姿を思い出すファンは多い。今大会も、1、2回戦は気温40度を超す酷暑で、特に1回戦はフルセットの戦いになり、ナダルとの試合も3時間17分に及ぶ濃密な3セットだった。試合が終わるたびに、錦織が不思議そうに、嬉しそうに口にした言葉がある。

「体も強くなったみたいで……こういうことはこれまでなかった」

 米国育ちのせいか、錦織は多弁ではないが、正確に伝えようという気持ちが言葉にこもっている。今回は、試合ごとに「あれ、疲れてない」という驚きと喜びが伝わった。

 錦織のキャリアをマネージメントするIMGは、17歳でプロデビューしたときから「10年、15年、トップ10で活躍する選手」と強調していた。要は「目先のことで騒がず、待ってください」ということで、体力には鍛えられる部分と待たなければいけない部分があるからだ。その体力強化の頃合いを計ったように、昨年オフにはマイケル・チャンをチームの一員に加えた。その目的は、体力に沿ったメンタリティーの強化だ。

「接戦だけに、余計にショックだった」
「もっとフリーポイントがあれば、プレッシャーなくレシーブに入れたと思う」

 ナダルとの勝敗を分けた僅かなポイントの大きさを噛みしめているだろう。

 時間に自信を練りこみながら、新しいシーズンがスタートした。錦織だけではない。ミロス・ラオニッチ、グリゴール・ディミトロフといった後輩たちも、同じように「自信」をつけている。テニスファンには、楽しみな1年になりそうだ。

文:武田薫



放送カード

3月放送予定
ジョコビッチ、マレーら現役トップ選手に加えて、アガシ、サンプラスらレジェンドたちも出場。
往年のチャンピオンたちが集う男子ATP公式シニアツアーの2013シーズンを放送。
4月放送予定
ワールドグループ制になって初のベスト8進出を果たした日本代表が3連覇を狙う王者チェコとの一戦に挑む!
往年のチャンピオンたちが集う男子ATP公式シニアツアーの2013シーズンを放送。
母国の名誉と威信を懸けて、強豪国が激突する“テニスのワールドカップ”。ワールドグループ準々決勝の模様をハイライトでお届け
女子テニスの国別対抗戦・フェドカップ。
強豪8カ国による熱戦を1回戦から決勝まで放送

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