スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ|WOWOWオンライン

岡田ノート

2011年9月21日更新

岡田武史が独自の視点でリーガを斬る!日本代表をW杯ベスト16へ導いた岡田武史が、世界最高峰のリーガ・エスパニョーラを試合ごとに分析。岡田の目が見た、スペインサッカーの神髄とは?

岡田ノート 第19回 ◆常識破りのビエルササッカーの研究

新シーズンが開幕し、盛り上がりを見せるリーガ。2強以外の注目チームとして岡田武史は、「常識破りのサッカー」と表現するビエルサ監督率いるビルバオを挙げ、ビエルサの独創的な戦術を分析する。そして、積極的な補強を行い野心に燃えるマラガについて、自身の経験からチームビルディングの重要性を語る―――

隣のゾーンに入らない、ビエルサ監督の常識を破ったサッカーが楽しみ

――バルセロナ、R・マドリードの2強有利は変わりませんが、他注目のチームを挙げてもらえますか?

優勝となるとバルサ、レアル以外は難しいと思うけど、今シーズンはビルバオにビエルサ監督が来た。俺はビエルサがどんなサッカーをするのか、すごく楽しみなんだ。

岡田武史

――ビエルササッカーのみどころは、どんなところでしょう?

ビエルサのサッカーは、ある意味常識を破っている。3‐4‐3や3‐3‐1‐3みたいな形で、普通は『サイドをやられないように』って言うけど、ビエルサはサイドを破られても簡単にカバーリングに行かない、最後の真ん中をきっちり抑えるという考え方。でも、サイドを簡単に行かせるわけじゃなくて、ボールの出どころにすごくプレッシャーをかけてくる。それも、“マンツーマン”じゃなくて、ほぼ“マンマーク”なんだよ。
つまり、ゾーンディフェンスは第1にボールの位置、その次に味方のポジション、3番目が敵の位置なんだけど、マンマークはボールが1番で、その次に敵の位置がくる。マンツーマンなら人にぴったり付くけど、マンマークは人を意識しながらも、カバーリングしなければならない。そういうことを徹底させるサッカーなんだよね。俺はビエルサのサッカーが不思議で、“自分の常識を越えたサッカーなんて許せない”と思って研究したんだ(笑)。

――選手の動きに関して特徴などはありますか?

ビエルサの場合、グラウンドを大体ペナルティエリアの少し内側で、縦に3つのゾーンに分けている。そして、サイドはサイドで解決しなさい、後ろの選手がカバーにいったら前の選手がカバーに入って縦の関係で守る(図1)。つまり、横のゾーンには、ずれないんだよ。DFのリベロはある程度フリーなんだけど、それ以外は隣のゾーンのカバーに入ったりしない(図2)。『ここだけで解決して、そっち側には行くな』と、何かそういうルールがある。
これは、ビデオに撮って研究したから間違いない。このサッカーを研究するために、俺は(ビエルサ監督が以前率いていた)チリ代表を2回も呼んだんだから(笑)。

――ビルバオは選手も楽しみですね。ハビ・マルティネスやスサエタなどの若手に、フェルナンド・ジョレンテもいます。

でも、フェルナンド・ジョレンテみたいなタイプは、あんまりビエルサは好きじゃない。走り回る選手が好きだからね。チリには以前、サラスとかエースストライカーがいたけど使われなくなった。この戦術は、ひとり抜かれたら、次の人がカバーのために出てくる。そうしたら、そのストライカーは次の人のポジションを埋めるために、戻らなければいけない。だから、ものすごく運動量がいる。
ところが、意外と体力は持つんだ。なぜなら、決められたエリアの中で動いているから、それほど広くない。だから練習でも、カバーに入る時の動きの練習をすごくする。

――今まで伝統的に固いサッカーをしてきたビルバオにとっては、かなりの変革ですね。

ビエルサはめちゃくちゃ頑固だから、絶対に自分の戦い方を変えないと思う。最初に選手をシャッフルして、自分のサッカーに合う選手を選ぶような方法をとるかもしれないね。1年目は難しいかもしれないけど、これは楽しみだよ。

新チームで選手同士のコミュニケーションを生み出すチームビルディング”

岡田武史

――バレンシアも有力チームですが、どんな印象をもたれていますか?

バレンシアには、昔からあまりいいイメージがないんだよね。クーペル監督がいた頃の4‐4‐2で守備をきっちりして、そこからカウンター。その印象がこびりついてしまって…。人の試合でそういうのを見るのは、少し面白みに欠けるから。

――モウリーニョも試合によってはガチガチに守備を固めてきますが?

モウリーニョは、それを越えようとがんばっている。クーペルはガチガチ。結局そういうチームは、2年くらいで選手のモチベーションが持たなくなってくる。モウリーニョも次をどう持っていくか、考えていると思う。だからモウリーニョは面白い。あれでクーペルみたいに、『俺のやり方はこうなんだ』ってやられると、もう(先が)わかってしまう。だから、チャレンジを続けるチームの方が好きだな。

――では大型補強を行ったマラガはどうですか?また、マラガのような新チームを率いる際に重要なことは何でしょう?

ベテランばっかりかと思ったけど、若いプレーヤーもいて、よく集めたなという印象だね。
最初は、選手同士のコミュニケーションが大切だと思う。僕はバッと新しい選手に変えた時なんかは、人材育成のトレーニングをやらせたりする。例えば、チームをグループに分けて、5mぐらいの壁を全員で工夫して乗り越えさせるとかね。
昔、チームに溶け込めない外国人選手を10mぐらいの木の上に登らせて、2m先のバーに飛び移るっていうのをやったことがある。でも、そこには滑車がついていて、ロープが吊ってあるわけ。それをグループの仲間が持っている。要は、仲間を信じられるかのトレーニングなんだよね。

――それを行うことによって、チームはどう変わってきますか?

『俺らが持っているから大丈夫だ』って周りは言うけど、なかなか飛べない選手が出てくるわけだ。例えば、木の株の上に立って、目をつぶらせて後ろに倒れる。周りにいる仲間が必ず支えてくれるはずなんだけど、倒れられないやつもいる。そういうことをやっていくと、お互いのことがわかってくるよね。結局、その外国人選手は飛べなかったけど、彼が弱みをみせたことでみんなと打ち解けた。そういうチームビルディングも必要だよね。
マラガも、最初に集めた時はベテランが何人かいるからやりやすいと思うけど、そうやっていけば少しずつチームはまとまってくると思うよ。

力や能力を発揮するために環境を与えることが大切

――最近、岡田さんは自身で立ち上げられた一般社団法人OIJ(Okada Institute Japan)でも、人材育成をテーマに様々な活動をなさっていますが、何か感じたことはありますか?

岡田武史

今の子供たちや若者も、やっぱり捨てたもんじゃないなと思いましたね。要は、彼らが力や能力を発揮する環境を与えられていない。
この前も四国の島にいたんだけど、小学校5・6年の子供に5人一組で、スーパーに行って2,000円で今日の晩御飯を買って来いと。あとは火をつけて米を炊いて、なんでもいいからご飯を作れと言うだけ。大人は何もしない。確かに大変だよ。でも、ご飯が食べられなかった子供はいなかった。そりゃ、飯が硬かったりはするけど、みんなで火はこうやってつけるんだって教えあって、つかなければどうやったらつくのか考える。それで聞きに行く。それでいいんだよ。そういう環境になったらできるんだから。
本当にたいしたもんだと思ったよ、若くても積極的にトライするしね。僕はものすごく希望を持ちましたね。

――それは仕事やサッカーだけじゃなく、生きる人々みんなに共通することですよね。

サッカー選手もそうだと思う。そうやって厳しい環境に出ていったら、どんどんたくましくなっている。女子サッカーも協会のバックアップがあって、選手達が海外にどんどん出ていった。それが今、功を奏している。そういう厳しい環境、やらなければならないところに行くと、人は十分やっていけるんだというのを、最近は感じていますね。

1956年8月25日大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本代表としてロサンゼルス五輪予選、メキシコワールドカップ予選などに参加した(24試合1ゴール)。97年に日本代表監督に就任しフランスワールドカップの指揮をとる。99年にコンサドーレ札幌の監督に就任。2000年にはJ2優勝を果たしJ1昇格を決める。03〜06年には横浜F・マリノスの監督を務め、2003年、2004年と2年連続で年間王者のタイトルを獲得。07年12月より日本代表監督に再び就任。 南アフリカワールドカップでは 日本人監督として初となる勝利を記録し、日本代表を海外開催で初となるベスト16に導いた。

Photo: Koichiro MATSUI
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