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第326回 故障で離脱中の選手のトレーニング
困難なリハビリをこなしたスティーブンスとキーズ。前向きにリハビリ中の西岡選手
今回はケガをした選手がどんな毎日を過ごしているか、リハビリやトレーニングを中心に書いていきます。
故障中でも、可能なトレーニングはしますが、当然、ケガをした部位によってやれることは変わってきます。特に下半身のケガ、歩いたり走ったりということが自由にできないケガなら、いろいろ制限が出てきます。上半身の強化はもちろんできますが、やりすぎるとバランスが崩れる恐れもあるので難しいのです。
全米オープンで優勝したスローン・スティーブンスは昨年から今年にかけて、最初に右足のケガ、次に左足のケガに悩まされました。フットワークとそれを生かした守りは彼女の武器なので、リハビリして、トレーニングしてベストの状態まで持っていくのは並大抵ではなかったと想像できます。
同じく準優勝のマディソン・キーズは左手首のケガでした。下半身には故障がないので、例えば走り込みなど、脚力や心肺機能のトレーニングはできます。それを行いながら、手首のリハビリを進めていったと思われます。
ただ、手首は体の部位でも細いところなので、痛みを敏感に感じとれます。私も一度、手首を痛めたことがあります。手術はしなかったので、それを経験した選手の感覚までは分からないのですが、最初は恐る恐るという感じでリハビリを始めました。ボールを使った練習も、面の真ん中以外の所に当たると衝撃が走って怖いので、最初は初心者が使うようなスポンジボール(ラケットに当たった時の衝撃が弱い)で少しずつフォーム作りをしたり、フォームを確認しながらボールの感覚を味わうというところからスタートします。
選手は、長い間ボールを打たないと、ボールを打つ感覚を失うような気がするものです。特に若手にはそういう傾向があると思います。もちろん、文字通り感覚的なものなので、感覚を失うことが怖くない選手もいれば、不安になってしまう選手もいるでしょう。
ただ、感覚はいずれ戻ってきます。ノバク・ジョコビッチは連戦の後などには、マインドのリフレッシュが必要というので、2週間、10日という長いスパンでラケットを置いてトレーニングに専念する時期を設けます。ですから、こうした選手は感覚をなくすことをそれほど恐れないのかもしれません。
西岡良仁選手は今、ひざを故障していますが、走り込みもできない段階から、椅子に座って球出しでボールを打つ練習を再開していました。彼もボールを打つ感覚を忘れたくなかったのだと思います。
また彼は、リハビリの早い段階から“縦の動き”を練習に取り入れていました。ひざのケガですから、横の動きはそれよりも時間をかけて慎重にスタートさせたのだと思いますが、今ではサイドランジなどの横の動きを取り入れたトレーニングもこなしているようです。とても順調な回復だと思います。
彼はそうしたトレーニングの様子をSNSでも公開しています。このことを含め、すごく精神状態が良好なように見えます。
ケガをしたときが彼のキャリアでも最高のテニスをしていた時期だったので、まず、その感覚が彼の中にしみこんでいるのだと思います。ケガを治すには時間も必要ですが、治ったら、また、そういうテニスをしたい、そこに持っていくために今は何をしなければいけないか、さらに強い体を作りたい、そんなイメージが彼にはできているのだと思います。
それがあるから、約10カ月、1年近くツアーを離れることになると思うのですが、とても前向きに時間を過ごしているように見えます。ケガをする前より強くなって帰ってきてくれるだろうなと期待できますね。
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