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杉山愛 オリジナルコラム 愛’s EYE

第317回 ムグルッサが見せた女王の振る舞い

  • 2017/08/22

あえてクールに優勝を受け止めるムグルッサが印象的でした

 ウインブルドンでのムグルッサのテニスは、まさに圧巻でした。決勝で対戦したビーナス・ウイリアムズも好調でしたが、ムグルッサのプレーがそれを上回りました。
 正直、決勝はビーナスに分があるかなと思っていました。大坂なおみ選手との3回戦を見てもわかるように、特に芝コートでは経験が重要で、それを生かしているのがビーナスだと見ていたからです。相手へのプレッシャーのかけ方、重要な場面の切り抜け方などを見ても、かなり自信を持ってプレーしている印象がありました。

 結局、ファーストセットがキーになったのですが、内容のある試合、見応えのある決勝でした。四大大会決勝独特の気持ちの高ぶり、プレッシャーの中で力を出す難しさを乗り越えて勝ちきったのが、ムグルッサでした。光ったのは彼女の精神面の成長です。最後まで自分のテニスをやり抜いたことには感動しました。
 今回のウインブルドンでは、たまたま彼女のお隣りに家を借りていたので、優勝後の彼女とチームの雰囲気も感じることができました。

 彼女の四大大会初優勝は昨年のフレンチオープンでしたが、初のタイトルを取ったあと、しばらく不調に陥りました。今回はそれを繰り返さないように、というのが見てとれました。彼女は優勝は当然、とでもいうようにクールな態度を崩さなかったからです。
 おそらく、演じるというか、意識してそう振る舞っていたのではないでしょうか。優勝は自分にとっては当たり前--そう思えるように、自分を仕向けているように見えたのです。そうすることで、初優勝後に調子を崩した前回の失敗を防ごうとしたのでしょう。

 レベルはまったく違いますが、私も5年ぶりのツアー優勝を果たした直後に、同じように考えたことを覚えています。その大会は、キム(・クライシュテルス)を決勝で破ったり、勝っていなかったリンジー(・ダベンポート)を破るなど、自分にとっては劇的な優勝でした。でも、そこで「待てよ」と。「自分はトップ10にいるべき選手だと思わなくてはいけない。ならば、この優勝も日常のことと思わなくてはいけないな」と考えたのです。
 私は(一時はダブルスパートナーでもあった)キムに大きな影響を受けていましたから、彼女がツアー優勝を日常のこと、普通のことと受け入れてその後のツアーに臨んでいるのを近くで見て、自分も優勝が“スペシャル”にならないようにと心がけたのです。そのおかげで、大会後もすぐに普通の状態に戻れました。

 ツアーとグランドスラムですからレベルは違いますが、その、自分を仕向けていく感覚は、ちょっとだけど、わかるなぁ、と。
 うれしいのは間違いありませんが、それでウワーッとなってしまったら、下手をすればそこでキャリアが終了してしまうことにもなりかねません。ですから、彼女も周囲の人たちもすごく落ち着いていたのです。

 女王らしく振る舞うことで、近い将来、真の女王に輝こうとしているのだろうな、というのがかいま見られ、それがとても興味深く思われました。

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