佐々木クリスが語る「The Greek Freak -ギリシャの変わり種-」

  • 2018/4/18

ヤニス・アデトクンボ

5年と言う月日はあっという間に流れる。ただしミルウォーキー・バックスに所属するヤニス・アデトクンボはその1分1秒も無駄にしなかった。NBAに入りたての新人の頃は“名前が最も読みづらい選手”としての話題が先行し、ダイヤの原石は原石としてしか見られていなかった。
そんな彼を突き動かしたのは、NBAに入り故郷ギリシャから遠いミルウォーキーでの生活全てが夢であり、それを不意に誰かに起こされてしまうのではないかという恐怖。文字通り1分でも1秒でも長くコートに立つ事を貪り続けた。

試合で敗れようものなら、背番号#34が付いたジャージを来たまま、ホームアリーナから練習会場に車を走らせ、街中が静まり返る深夜まで再び汗を流す事も珍しくなかったという。全ては自分の不甲斐なさに対する怒りを払拭するために。

現在、若干23歳のヤニス。2013年ドラフト15位でバックス入りした後、すでにNBAオールスター2回の選出を誇るばかりか、昨季はNBA史上初となる得点、リバウンド、アシスト、ブロック、スティールの主要スタッツ5部門全てでリーグTOP20にランクインされる唯一無二のオールラウンダーとなった。

身長210cm、両手を水平に広げたウィングスパンは221cm、手の大きさは30.5cmと全てが超一流のアスリート達がシノギを削るNBA界でも規格外。牛乳パックは縦23.5cmなので彼の手と指の長さは野球のグローブと同じと言っても良い。人知を超えたその手足の長さ、観る者を惹き付けるインパクト。いつの日か彼は「グリーク・フリーク」、“ギリシャの変わり種”の異名を持つようになった。

ナイジェリア出身であるヤニスの両親は家族のためにより良い生活を求めた不法移民。ヤニスはギリシャで生まれるが、生まれた時にはなんと“国籍”がなかった。両親と兄弟達はひとつの部屋をシェアする生活をアテネで送っていたが、ビザが無いため両親は定職に就く事が出来ず、ヤニスもその日の空腹を満たす期待を持ちながら眼鏡や腕時計、ビデオゲームやDVDなどを道ばたで販売する行商していたそうだ。諦めの悪いセールスと、若く愛くるしい容姿で家族のなかでも1番の販売成績だったと振り返るヤニス。正式にギリシャ国籍を得たのは2012年にギリシャ2部のチームとプロ契約し、いよいよ2013年男子バスケットボールギリシャ代表として名を連ねる目前となる。
当時を振り返ってヤニスは「多くの選手は“子供の頃コービー・ブライアント、マイケル・ジョーダン、レブロン・ジェームズ、マジック・ジョンソンを観て彼らの様になりたいと思った”と打ち明けるだろう。でも僕にとっては全く違った」と2017年2月スポーツイラストレイテッド誌のインタビューに答えている。当時、手足の長さはお客さんの気を引く程度のきっかけぐらいにしかならなかったという。

しかし、その恵まれた“神からの贈り物”にNBA界が気付くのにそう時間はかからなかった。きっかけは武器へと変わって行く。そして武器は“2度とあの場所に戻りたくない”という気持ちと、ファンの歓声と歓喜の瞬間に対する飽くなき餓えによって今、かつてなく磨かれている。

バスケットボールと言う競技はその性質上、リングに近いペイントエリア内への侵入とそこで得点出来ることが極めて重要だが、今季ヤニス・アデトクンボはレブロン・ジェームズやアンソニー・デイビスを抑えてリーグNo.1の1試合平均15.8得点をこのエリアであげる(1試合平均得点全体は27.1得点、リーグ4位)。

棒のように細かった腕をトレーニングで鍛え上げ、更に60cm以内の距離で守備につかれた場合のシュート成功率が、新人だった2013-14シーズンで49.4% のところ、今季は66.8%と接触を受けても“蹴散らし”ている事が分かる。また“フリーク”の様に長いストライドでユーロステップをお見舞いする技術もさらに高まっているのである。
圧巻は恐らく現役ではヤニスしか出来ないであろう、速攻中に対戦相手を飛び越えてダンクを決めてしまった事。誰もが空いた口が塞がらなかった。

すでに引退したコービーやリーグMVP獲得経験のあるウォリアーズのケビン・デュラントも“ヤニスはMVPの器”と太鼓判を押すが、華々しいNBAとは無縁で育ったヤニスについてあまりにも有名なエピソードがもうひとつある。
2014-15シーズンの終盤、当時HCを務めていたジェイソン・キッドがヤニスを敢えて起用しないゲームがあった。それに対し怒り心頭のヤニスは「こいつキャリアで何を成し遂げた奴なんだ」とスマートフォンを手に取りキッドをネット検索。そこには「新人王、NBAチャンピオン、アメリカ代表五輪金メダル、キャリアアシスト歴代2位、3pt成功数歴代5位(インタビュー当時、現在9位)云々かんぬんって書いてあって、おったまげて“どうやってこんな人に対抗できるんだろう”って思ったよ」と思いを改めたそうだ。
アメリカに来る前にはポイントガードを任された経験があったものの、正真正銘のオールラウンド・ポイントガードへと変貌した陰には、あの名プレーヤーで前HCの功績も計り知れない。

逆境からバスケ界の中心へ。2016年9月には4年100億円越えの契約更新をチームと結んだヤニス。しかし残念な事に息子が大きくその才能を開花させている最中、昨年10月に父が心臓発作によって54歳の若さで他界してしまう。せめてもの慰めは息子の成功と、家族の安全な生活が確保された事を見届けられたことだろうか。長らく家族を支えた父の思いを胸に、数日後ヤニスはキャリアハイ44得点をあげ、ゲームボールを亡き父に捧げた。

アメリカに移り住み、車の運転など何から何までも初めて尽くしだった。弟の大学入学は自らの運転で引っ越しを手伝い、今でも家族を近くに置く。外に出ればちょっぴり内気だがジョークが大好きな青年は、冗談抜きでプレーオフ勝ち上がりを狙いにくる。
今季は試合後の全米各地のアリーナで、ヤニスが何百ものファンに囲まれてギリシャ国歌を唄う光景がしばしば観られた。本当の贈り物や才能は手足の長さや、一度聞いたら忘れられない“グリーグ・フリーク”と韻を踏んだニックネームでもない。一目見たら忘れられない愛くるしい笑顔と人々を繋ぐ彼の人柄だ。プレーオフではスポーツを通じて人々が人生を謳歌する、そんな合唱を聞かせてくれるに違いない。

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