エキサイトマッチスペシャル
“パウンド・フォー・パウンド”パッキャオ、歴戦の強豪モズリーを迎え撃つ!
WBO世界ウェルター級タイトルマッチ
WBO世界ウェルター級チャンピオン
マニー・パッキャオ
(フィリピン)
元3階級制覇チャンピオン
シェーン・モズリー
(アメリカ)
6冠王者有利の声が大勢占めるも
番狂わせの可能性も……
オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ)と並ぶ史上2人目の6階級制覇チャンピオン、パッキャオ(32歳)が57戦52勝(38KO)3敗2分。ライト級、ウェルター級(3度)、S・ウェルター級で計5度の戴冠実績を持つ3階級制覇チャンピオン、モズリー(39歳)が54戦46勝(39KO)6敗1分1無効試合。ともに近年のボクシングシーンを牽引してきたスター選手である。
この両雄の対決は6対1というオッズでパッキャオ有利に傾いているが、それは知名度や勢い、さらに期待度などボーナス・ポイントも含めた数字と見るべきだろう。単純に戦力を比較した場合、両者の間には決定的な大差はないといってもいい。試合そのものの流れや小さなミスが勝敗を左右する可能性が高そうだ。
今回の試合に備えパッキャオは自国フィリピンで調整後、3月末に渡米。4月からフレディ・ローチ・トレーナーと再合流してスパーリングを重ねてきた。2001年から10年のコンビとなるローチ・トレーナーは「初回からプレッシャーをかけていけばモズリーは耐えられなくなるだろう。彼のキャリアに初めてのKO負けが刻まれるはずだ」と強気な発言をしているが、パッキャオ自身は慎重な態度を崩していない。「誰と戦うときでもそうだが、KOが目的なのではなく勝つためにベストを尽くす。私はチームの作戦どおりに戦うだけ」
これに対しモズリーはKO勝ちにこだわりをみせている。「予想で不利といわれていることは知っているが、気にしていない。私はただ勝つだけではなく、倒して勝ってみせる」39歳の意地を見てとることができる。
別表のとおり体格面ではモズリーが上を行く。数字だけでなく、実際に対峙した際に全体的なボリューム感で大きな差があるのではないだろうか。
パッキャオが序盤で早々と主導権を握るようだとKO防衛の可能性が高まりそうだ。サイドから揺さぶりをかけたうえで鋭く踏み込んで左ストレート一閃――そんなシーンが現実のものになるかもしれない。
モズリーが勝つには、まず先手をとることが必須条件となりそうだ。自らサイドに出てパッキャオの死角から仕掛け、接近戦ではチャンピオンのウィーク・ポイントであるボディを攻めたいところ。モズリーの左脇腹打ちがキー・パンチになる可能性は高い。
このところ終盤に失速の傾向があるモズリーとすれば、できれば中盤までに勝負を決めたいはず。それが叶わない場合でも大差をつけて終盤を迎えたい。
パッキャオ有利は当然としても、展開しだいでは番狂わせもあり得るカードといえる。
<両者の体格表>
★パッキャオ | ★モズリー | |
---|---|---|
169cm | 身長 | 175cm |
170cm | リーチ | 188cm |
96cm | 胸囲(平常時) | 99cm |
104cm | 胸囲(呼吸時) | 107cm |
71cm | ウェスト | 79cm |
40cm | 首周り | 42cm |
33cm | 二頭筋 | 36cm |
30cm | 前腕 | 29cm |
51cm | 大腿部 | 56cm |
33cm | ふくらはぎ | 34cm |
20cm | 手首周り | 16cm |
25cm | 拳周り | 29cm |
<両者の獲得世界タイトル>
★パッキャオ | ★モズリー | |
---|---|---|
ミニマム級 | ||
L・フライ級 | ||
98年に獲得 | フライ級 | |
S・フライ級 | ||
バンタム級 | ||
01年に獲得 | S・バンタム級 | |
フェザー級 | ||
08年に獲得 | S・フェザー級 | |
08年に獲得 | ライト級 | 97年に獲得 V8 |
S・ライト級 | ||
09年に獲得 | ウェルター級 | 00年、07年、09年に獲得 |
10年に獲得 | S・ウェルター級 | 03年に獲得 |
ミドル級 | ||
S・ミドル級 | ||
L・ヘビー級 | ||
クルーザー級 | ||
ヘビー級 |
<4階級制覇以上のチャンピオンと体重増>
6階級 | オスカー・デラ・ホーヤ(アメリカ) | 約13キロ増 |
マニー・パッキャオ(フィリピン) | 約19キロ増 | |
5階級 | トーマス・ハーンズ(アメリカ) | 約13キロ増 |
シュガー・レイ・レナード(アメリカ) | 約13キロ増 | |
フロイド・メイウェザー(アメリカ) | 約10キロ増 | |
4階級 | ロベルト・デュラン(パナマ) | 約11キロ増 |
パーネル・ウィテカー(アメリカ) | 約9キロ増 | |
レオ・ガメス(ベネズエラ) | 約5キロ増 | |
ロイ・ジョーンズ(アメリカ) | 約15キロ増 |
※シェーン・モズリー(アメリカ) | 約8キロ増 |
Written by ボクシングライター原功
マイク・ジョーンズ
ウェルター級トップ戦線の現状
WBA:ビアチェスラフ・センチェンコ(ウクライナ)
WBA暫定:ソーレイマヌ・ムバーヤ(フランス)
WBC:アンドレ・ベルト(アメリカ)
IBF:ヤン・サベック(スロベニア)
WBO:マニー・パッキャオ(フィリピン)
このメンバーに加えアントニオ・マルガリート(メキシコ)、ミゲール・コット(プエルトリコ)、ジョシュア・クロッティ(ガーナ)らが肩を並べていた2年前と比べると、やや寂しい感じがしないでもない。しかし、この3人を蹴散らしてしまった張本人がパッキャオであるということを考えると、この32歳のサウスポーがいかに傑出した選手であるかが分かる。
若手では長身強打者のマイク・ジョーンズ(アメリカ)の台頭が目を引く。下のクラスから転じたビクター・オルティス(アメリカ)、ポール・マリナッジ(アメリカ)の活躍にも期待が集まる。