【内藤秀明コラム】有機的なパスワークを披露するシティ流「4-4-2」とデ・ブライネが噛み合った瞬間

  • 2021/03/18

【内藤秀明コラム】有機的なパスワークを披露するシティ流「4-4-2」とデ・ブライネが噛み合った瞬間

「4-4-2」と聞くと、皆さんはどんなサッカーを連想するだろうか。イングランドの代名詞とも言えるクロスボール中心のサッカー、あるいは、高校サッカー特有の全員攻撃・全員守備を思い出すかもしれない。いずれにしてもハードワークを基調として、縦に早いスピーディーなカウンター重視のサッカーを構築する際にこのシステムが採用されることが多い。

ただし、数としては多くないが、4-4-2をベースシステムとして、一つの集団がまるで生き物のように連動するサッカーを披露するチームがトップレベルの大会で出てくることが稀にある。

筆者が欧州サッカーを見るようになった2006年以降で、最初にそれを目の当たりにしたのは、07-08シーズンのマンチェスター・ユナイテッドだろうか。ウェイン・ルーニー、カルロス・テベス、ライアン・ギグス、そして若かりし頃のクリスティアーノ・ロナウドが攻撃のイメージを共有してポジションチェンジを繰り返し、ワンタッチパスを織り交ぜた即興で美しいパスサッカーを全世界に見せつけた。

また近年でいうと18-19シーズンの、マッシミリアーノ・アッレグリ監督が作りあげたユヴェントスもまた4-4-2で美しいサッカーを披露していた。このチームは即興性よりもトレーニングを通じてチームに落とし込まれた連動が魅力で、FWが裏のスペースに抜けると、他の選手がそのスペースに入り込む。たったこれだけのことだが、シンプルなことをチーム全体で連続的に繰り返すことで、有機的なパスワークを完成させていた。

さて、ここまで紹介したクラブたちと比較すると、現在のマンチェスター・シティの4-4-2はやや特殊ではある。むしろその配置に見えない時間帯も長い。しかし間違いなくこのオーソドックスなシステムを採用して、UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント ベスト16でボルシア・メンヒェングラートバッハを合計スコア4-0で撃破していた。

守備時の基本コンセプト

シティの配置が最も4-4-2に見えるのは守備時である。それは1st Legでも、2nd Legでも同様だ。ただ1st Legのほうがより高い位置からプレスをかけて2-0で勝利。スコア上での余裕を得たシティは2nd Legではややプレスのスタート位置を低めに設定した。リスクのバランスを調整しているようだった。

プレスのスタート位置こそ違えど、基本コンセプトは同じだ。2トップで相手の2センターバックを監視しつつ、中盤への縦パスのコースを遮断。シティの両翼は相手のセンターバックとサイドバックの中間に立つことで、サイドに展開するパスコースを切っていた。こうすることでセンターバックには縦パスしか選択肢を与えず、強引に中盤へパスを通そうとする場合、2ボランチで潰す算段である。

このシステムは非常に前掛かりなため、広大な中盤のスペースを2ボランチでケアしなければならない。人に厳しくマークしつつ、時には奪い切ることを諦めてスペースをケアするなど瞬時の判断が重要になる。サッカーIQの高いギュンドアンとロドリだからこそ実現できた守備戦術である。ルベン・ディアスという対人戦、カバーリング能力共に優れたトップレベルのCBが最終ラインに君臨しているのも大きい。だからこそハイラインを敷けるのである。

一方で、名将ジョゼップ・グアルディオラは前線と中盤のプレスを突破された際の保険も用意した。昨季までは絶対的なレギュラーだったものの、今季は序列が低下したウォーカーを右SBとして両試合共に起用。彼は攻撃面での器用さは他のSBには劣るものの、圧倒的なアスリート能力で後追いでも追いつきボールに食らいつくことができるからだ。

いずれにしても個の優位性を活かしたアグレッシブな守備戦術で、シティはボルシアMGのパスサッカーを封殺した。

攻撃時の基本コンセプト

一方で攻撃時は、正直に言うと4-4-2に見えない場面が大半だ。

まず左SBのカンセロが、偽サイドバックとして中盤のエリアに入り、ロドリと2ボランチを形成。トレンドのGK+3-2の配置でビルドアップを開始する。両翼は大外のレーンに常駐して、相手の守備ブロックの幅を広げる役割を担う。そして本来2ボランチのギュンドアンがカンセロに押し出される形で高めの位置をとり、2nd Legではスタメンだったデ・ブライネ、ベルナルド・シルヴァの2トップらと連動を繰り返した。事実上3-2-5のようなシステムに変形していたと言っていいだろう。

ただしこのルールもあくまでも、基本的な攻撃戦術である。ときには左ウイングでプレーするフォーデンが中盤の位置に入ることもある。実際、2nd Legで生まれた18分の2点目のゴールはフォーデンが中央でボールを受けてドリブル開始したところで生まれている。その際、代わりにデ・ブライネが大外のレーンで幅をとる役割をになった。

このようなポジションチェンジは試合中にありつつも、基本的なコンセプトは変わらない。ランニングの連動が重要なのだ。このゴールが生まれた際に美しかったのは、シルヴァとカンセロの動きだ。

フォーデンがピッチ中央でターンして、ピッチを横断する形で左斜め方向にドリブルを開始すると、逆に左サイドの高めのハーフスペースにいたギュンドアンがフォーデンの前を横切るダイアゴナルランを開始する。これだけならボルシアMGのセンターバックであるギンターはギュンドアンを捕まえられたはず。しかし同時多発的にギュンドアンよりやや低めの位置にいたカンセロが、元々ギュンドアンのいたスペースに全力で走り込んだため、ギンターは混乱。右サイドバックのライナーのカバーリングは間に合っていたのだが、思わずカンセロへのマークに切り替えたためギュンドアンはフリーになった。こうしてボックス内でフォーデンからスルーパスを受けたギュンドアンは冷静にネットを揺らすことに成功した。

デ・ブライネという個人の驚異が融合

このような流動性の高いサッカーで、デ・ブライネは一人の駒として全く問題なく機能していた。フォーデンが中央にいる時のポジションチェンジがその典型だろう。しかし彼はこの組織的なサッカーの中で自身の個の高さも発揮している。

というのも、この戦い方だとあまりに相手を押し込みすぎてしまうため、攻め込むスペースがなく、やや攻めあぐねる展開になるリスクもあった。しかしその問題をベルギー代表MFは個人の力で解決している。それは2nd Legの前半12分での出来事だった。ボックス手前でマフレズの横パスを受けたデ・ブライネは、逆足で強烈なミドルシュートをゴールにぶち込んだのだ。

このプレーは、目の前の勝利のためにも大きなゴールだったが、今後を見据えても意味のあるものだったと言える。つまり、彼の強烈なミドルがあることを意識すると、どうしても対戦相手としては籠城作戦をやりにくくなる。中を固めても外から打ち込まれるのだ。驚異でしかない。

また今季のシティはデ・ブライネが負傷離脱時も好調を維持しており、彼を好調時のチームにどう組み込むかはポイントでもあった。そしてその課題が見事解決したという意味でも大きな意味のあるゴールだ。

そういう意味では、ボルシアMG戦で見せたマンチェスター・シティのパフォーマンスは、チームをベスト8に導くだけでなく、今後ぶつかるであろう対戦相手に恐怖を与える印象的なプレーだった。筆者の個人的な印象だが、今季のシティの完成度を見る限り、悲願のCL優勝が2021年にとうとう叶うのかもしれない。引き続き、目が離せない存在である。

photo by Getty Images
text by 内藤秀明


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