【内藤秀明コラム】徹底した守備戦術でポルトがユーヴェ相手にジャイアント・キリング成功

  • 2021/03/11

【内藤秀明コラム】徹底した守備戦術でポルトがユーヴェ相手にジャイアント・キリング成功

20-21シーズン、UEFAチャンピオンズリーグ決勝トーナメント ベスト16では、ポルトとユヴェントスが対戦した。1st Legでホームのポルトが2-1で折り返すと、2nd Legでは延長戦にまでもつれ込んだ上で2-3のスコアでユヴェントスが勝利に。最終的なトータルスコアは4-4でイーブンだがアウェーゴールの数で上回ったポルトがベスト8への進出を決めた。

ポルトの基本戦術

試合は非常にわかりやすい構図だった。必死に守るポルトに、ユヴェントスが襲いかかるという両者の立ち位置だったからだ。

とはいえポルトガルの強豪は無策だったわけではない。もちろんこのユヴェントス戦に向けてきっちり準備をしてきた。この日のポルトは基本システムは4-4-2だが、守備時には5-4-1にも6-3-1にも見える、最終ラインに多くの人数を配置するシステムを採用する。攻撃時には右ウイングのテカティートは、守備時は最終ラインへ完全に吸収される守備位置をとる。そうなると同じく4-4-2を採用するユヴェントスの左SBであるアレックス・サンドロをマークする選手がいなくなるのだが、代わりに2トップの一角であるムサ・マレガがプレスバックして右ウイングの守備位置に入る。

逆にポルトの左サイドの守備は右サイドとはやや違い、サンドロよりも高い位置をとり正確なクロスを供給するユヴェントスの右SBフアン・クアドラードに対して、左ウイングのオタヴィオがマンマーク気味に対応していた。その結果、オタヴィオがクアドラードに付いて行った位置次第で、5-4-1にも、6-3-1にも見えたのだ。

ただポルトの守備のポイントは、このシステムでリトリートするのではなく、ハイラインを敷いているということだ。おそらくだが、クリスティアーノ・ロナウドをはじめ個人能力の高い選手をペナルティーエリア内でプレーさせれば、どれだけ人数をかけて守っても、最終的に質的な優位性で負けてしまう可能性を危惧したのだろう。

そこで後ろの人数を増やし、スルーパスを通す穴を塞ぎつつハイラインも敷くことで、ユヴェントスの選手をとにかくゴールから遠ざけ、押し込まれた上での失点を減らそうという意図を強く感じる采配だった。

守備戦術とユヴェントスの相性

この極端なシステムは一定の機能を見せて、ポルトは攻め続けられる展開ではあるものの、ユヴェントスを長い時間エリア内から追い出すことに成功している。しかし、極端な戦い方には大きな弱点がいくつか存在する。

一つは後ろの人数が多すぎるため、ユヴェントスの低めの位置でボールを持つ選手たちにプレスがかからない。これは非常にリスキーである。というのも、リトリートするならある程度相手に自由にボールをもたせてもいいかもしれないが、なにせポルトはハイラインを敷いている。少しでもユヴェントスのクオリティの高い選手に時間を与えれば、精度の高いアーリークロスをサイドバックから入れられる可能性がある。

実際、立ち上がりの10分ほどは、オタヴィオのクアドラードへの寄せの意識が甘かったため、ゴールが入ってもおかしくないクロスをストライカーのアルバロ・モラタに通されている。このスペイン人FWが外していなければ、ポルトは先制点を許していただろう。

そしてもう一つの問題、2ボランチの一角でスルーパスの供給が可能なゲームメイカーのアルトゥールに対するマークも悩ましいところだが、そこはポルトのセルジオ・オリヴェイラが自分のエリアを離れてアルトゥールにアタックすることで対応していた。

この守備はユヴェントスに対して非常に有効だった。というのも、この局面のポルトは極端な場合においては6バックに1ボランチ、そして飛び出しているオリヴェイラと2トップをあわせて3トップを構成する6-1-3のような配置になることもあった。この中盤スカスカな状態はリスクだったとも言える。しかしユヴェントスの2トップはMFとDFの2ライン間で受ける意識が希薄で、両翼もそのスペースに入ることが少なかった。もし、ユヴェントスのこうした傾向も読み切った上でこの守備戦術を選んだのだとしたら、ポルトのセルジオ・コンセイソン監督は非常に優秀な男だと言わざるをえない。

実際の試合展開

実際、このシステムをベテランのポルトガル代表DFぺぺが上手くまとめて、ユヴェントスの攻撃をシャットアウトしつつ、攻撃時は割り切ってロングボールを蹴り、フィジカルの強いマレガや2トップのもう一人、イラン代表FWタレミに当ててカウンターを仕掛けていた。

すると幸運にも助けられ、ポルトは数少ない先制点の機会を得ることになる。タレミがエリア内で倒されてPKを得ると、それをセルジオ・オリヴェイラがしっかりと決めて先制に成功する。トータルスコアで2点のリードを得たポルトはその後も意気揚々と守るのだが、後半開始直後にこの守備戦術のもう一つの弱点を突かれて同点弾を許してしまう。

その弱点とは、時に6バックにもなる横一列に長い最終ラインは、相手のスルーパスに対して有効なフィルターになっており、かつユヴェントスの選手の上下方向の動きには上手く対応していたものの、縦割り意識が強すぎたため、横の動きにめっぽう弱かった。その結果、前半から斜めの動きで裏に抜け出そうとするユヴェントスの左ウイング、フェデリコ・キエーザを捕まえきれないシーンが何度かあったのだ。

キエーザの努力が結実したのは49分だった。C・ロナウドが最終ラインからのロングフィードに完璧な抜け出しを見せてエリア内でボールを受ける。その動き自体にはポルトDF陣も遅れながらだがきっちり反応していた。しかしそのタイミングで斜めの動きでエリア内に飛び込んでいたキエーザの動きまでは認識できていなかった。

フリーでボールを引き取ったキエーザは冷静にネットを揺らし、ユヴェントスが1点巻き返すことに成功する。

退場者が出て一方的な展開に

その後の展開は理屈だけでは語りきれない試合になる。54分にポルトFWタレミが主審の笛が鳴った後にボールを蹴飛ばしてしまい、2枚目のイエローをもらって退場。

人海戦術で守っていたポルトだからこそ苦しすぎる数的不利の展開になってしまう。一人減ったことで、最終ラインに人数をかけない、あるいは、パスの出どころを捨てる、という究極の二択をセルジオ・コンセイソン監督は迫られることになる。

その結果ポルトは最終ラインを埋めることを優先しつつも、パスの出どころを潰せるように、62分に左ウイングのオタヴィオを下げ、DFのサールを投入。6-3-0に近いシステムにする。この采配そのものは間違っていない印象だが、不運にも裏目に出る。

試合に入ったサールは、投入直後だったこともありこの難しい役割をこなしきれず、クアドラードに自由な時間を与え過ぎた。

すると交代直後の63分、クアドラードが放った高精度なアーリークロスにまたもやキエーザが反応し、この日2点目となるゴールを決める。これでこの試合は2-1、そしてトータルスコアは3-3でアウェーゴールも同数の完全なイーブンになる。

こうなってしまってはユヴェントスが一方的に攻める展開だ。ポルトとしてはノーチャンスに見えたのだが、退場者が出た展開特有の異様な集中力を見せ、その後は強固な守備ブロックを形成。逆にユヴェントスがなかなか決めきれないまま90分が経過してしまう。

ふり返ると、90分以内に試合を決められなかったことがユヴェントス最大の敗因かもしれない。延長戦にもなると、お互い疲労もあり、理屈通りにいかないことが増え始める。ここまで来ると集中力の勝負だ。

そして勝利の女神はポルトに微笑むことになる。

延長戦後半の115分、試合開始直後からハードワークを欠かさず、PKも決めたセルジオ・オリヴェイラが、遠目の位置からのFKでユヴェントスの壁の足元を抜く低弾道シュートを決めて勝ち越しに成功。大きな2点目のアウェーゴールも手にすることになる。

117分にはユヴェントスMFラビオが決めてスコア上は再びイーブンとなったものの、時すでに遅し。 トータルスコア4-4の打ち合いのゲームは、アウェーゴールの差でポルトが勝利した。

2004年には若かりし頃のジョゼ・モウリーニョと共にジャイアント・キリングを繰り返し、見事チャンピオンズリーグ優勝を成し遂げた歴史を持つポルトガルの強豪が、2021年に再びそのDNAを感じさせる大波乱を起こすことに成功した。

photo by Getty Images
text by 内藤秀明


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