CLファイナルに輝いた英国の光【CLコラム】

  • 2021/05/31

CLファイナルに輝いた英国の光【CLコラム】

英国では、「オール・イングリッシュ・ファイナル」と呼ばれた今季CL決勝。現地5月29日にポルトのエスタディオ・ド・ドラゴンで行われたマンチェスター・シティ対チェルシー(0−1)は、今季プレミアリーグ王者のCL初優勝を阻止したプレミア4位が、9年ぶりに欧州の頂点に立った。

両軍による欧州での決戦には、「プレミア対決」の他にも様々な構図が存在した。チームカラーに基づく愛称では「スカイブルーズ対ブルーズ」で、21世紀に始まった強豪としての背景からは「成り上がりクラブ対決」となる。外国人富豪オーナーに焦点を当てれば、2008年にマンチェスター・Cを買収したアブダビ首長国の「シーク」と、2003年からチェルシーを所有するロシア人「オリガルヒ」の対決。過去の補強に費やされた予算総額から、「17億ポンド対20億ポンド」という見方もされた。大目標のCL優勝に関しては、「悲願」の初優勝と、1度目よりも「困難」とされる2度目を懸けた戦い。フロントが結果との両立を望む“内容”という面で言えば、ジョゼップ・グアルディオラという近代的なポゼッション・サッカーの「第一人者」と、トーマス・トゥヘルという「ペップ流信奉者」の顔合わせでもあった。

だが、中立的な他チームのファンを含むイングランド人が最も気になった伏線は、フォーデンとマウントの直接対決だったはずだ。マンチェスター・Cの左インサイドハーフとして先発した前者と、チェルシー前線で2シャドーの一角に入った後者は、ともに小学生の頃から地元クラブのユースで育成された生え抜きの若手。しかも、互いにCLでもキーマンとみなされる主軸として、キャリア最大のビッグゲームを迎えていた。

“決勝”での初対決は、4年前のFAユースカップ。イングランドでは、若手にとって1軍への登竜門と位置づけられるU-18レベルの大会だ。背番号は揃って10番。同じナンバー10タイプでも、まだ16歳だったフォーデンは、当時からボールが足に吸い付くようなタッチと、滑らかでありながら鋭いドリブルが魅力的だった。マウントは、判断に見られる頭の回転にスピードを感じさせる18歳だった。

U-18チーム時代の軍配は、キャプテンとしてチェルシーを大会4連覇に導いたマウントに上がった。オーナーのロマン・アブラモビッチも見守っていたホームでの2nd Legでは、CKで先制点をアシストし、マークを引き寄せる献身的なランで間接的にチーム3点目も演出して5−1の圧勝に大きく貢献している。フォーデンも、初戦ではカウンターからドリブルで切り込んで同点ゴールを決めたが、合計2-6の完敗を阻止することはできなかった。

揃ってトップチームの主力となり2年目に実現した、今回のCL決勝での初対決も同様だ。マウントは、立ち上がり15分の時点で2度、1トップのヴェルナーがものにしているべき得点機を作り出していた。フォーデンは、27分に自ら先制ゴールに迫った。いかにもデ・ブライネらしい絶妙のパスに呼応して左足アウトサイドでシュートを狙ったが、惜しくもブロックに阻まれた。

マウントが決定的な仕事をしたのは、その15分後。前に出てきた相手GKエデルソンをかわしたハヴァーツの冷静なフィニッシュもさることながら、マウントが通したパスもクールな極上品だった。ハーフウェーラインの手前で右足から放たれたボールは、今季プレミアを最少の32失点で乗り切ったシティで、リーグ最強と言えるCBコンビを組んだルベン・ディアスとストーンズの間を真っ二つに切り裂きながら、走り込むハヴァーツの進行方向へと転がっていった。

追う展開となったマンチェスター・Cで、後半の反撃に最も大きな期待が寄せられ、実際に最も期待に応えようとしていたのはフォーデンだった。キャプテンマークも付けていたデ・ブライネが不運な顔面の怪我でピッチを去った直後の61分、自ら持って上がって放ったシュートは、枠外ではあっても、年上揃いのチームメイトたちを鼓舞しようとするかのようだった。89分にゴール前に出たボールを押し込もうと滑り込んだのもフォーデン。だが、再び相手DFによる起死回生のシュートブロックに遭った。

決勝でのマン・オブ・ザ・マッチを選べば、時計の針が進み、同点を狙うシティの必死さが強まるにつれて存在感を増したカンテになる。もっとも、今季のカンテがボランチとしての本領を発揮するようになったのは、今年1月の監督交代を境に定着した3-4-2-1システムの中盤中央で、8番的なプレーの要求度が弱まってからのこと。決勝の1点を決めたハヴァーツは、クラブ史上最高額の移籍金を「一気に返済」とメディアから評されたが、裏を返せば、移籍1年目の最終戦までは期待外れだったことになる。

その点、マウントは前監督フランク・ランパードの体制下でも、続くトゥヘルの下でも、不動と言って差し支えのないスタメンとして、国内外でマン・オブ・ザ・マッチ級のパフォーマンスを連発してきた。今季最後にして最大の大一番で、チームが逃げ切りを意識した残り10分でベンチに下がった際、ポルトガルに駆けつけたチェルシー・サポーターから総立ちの拍手で迎えられる資格は十分。試合後、「今の時点では僕らが世界最高のチームだと言えるんだ」と表現した自軍の中でも、シーズンを通して「ベスト」な選手であり続けた。

喜び爆発でしゃがれた声で、「スタンドから降りてきた父さんと抱き合ったら目が潤んだ」とも語った22歳は、欧州王者となったばかりのピッチ上で、前日に21歳になったばかりのフォーデンを慰めてもいる。悔し涙を浮かべる同世代の頭を優しく抱き抱えていた。初めてのCL決勝で明暗が分かれた両者は、この7月にも欧州で決勝のピッチに立つ可能性が無きにしもあらず。ただし、今度はイングランド代表の若き主力同士として。注目の「フォーデンとマウント」が、今夏のEURO 2020でCL決勝をも凌ぐキャリア最大のビッグゲームを経験することになれば、イングランド国民にとって言うことはないだろう。

photo by Getty Images
text by 山中忍


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