「ペップ流」シティに幸運をもたらした守り神の加護【CLコラム】

  • 2021/05/06

「ペップ流」シティに幸運をもたらした守り神の加護【CLコラム】

この男がいてくれれば怖いものなし。5月4日のCL準決勝2nd Legでパリ・サンジェルマン(PSG)を2-0(合計4-1)で下したマンチェスター・シティには、当夜の天気で言えば「雹が降ろうが、雨が降ろうが」大丈夫だと思わせる男がピッチ上にいた。

と言っても、2ゴールを決めて2試合合計3得点とした、マフレズのことではない。「偽9番」として、絶妙のスルーパスで2点目のきっかけを作ったデ・ブライネでもなければ、その得点をアシストし、ネイマールも顔負けの個人技を披露したフォーデンでもない。彼ら攻撃陣の後方、それも最後尾に控えていたGKエデルソンだ。

ただでさえ攻撃的なマウリシオ・ポチェッティーノ率いるPSGが、絶対に点を取らなければならなかった一戦では、他の守備陣も獅子奮迅の戦いぶりを見せてはいた。やはり攻撃を信条とするジョゼップ・グアルディオラ監督は、「自分たちのサッカーで勝つだけだ」と試合前に語っていたが、守備への意識は、1st Leg前半の劣勢で苦戦していたロドリではなく、フェルナンジーニョを先発させた人選にも見て取れた。指揮官は「誕生日プレゼントさ」と冗談でごまかしたが、36歳になったボランチは、守備のアグレッシブさと大一番での経験値で移籍2年目の24歳に勝る。

もっとも、グアルディオラのチームだけに、引いて守る姿勢は論外だ。ボールを失えば、素早く下がってコンパクトな守備の陣形を取るが、マイボールではラインを上げて攻撃に人数を割く。言うまでもないが、その「ペップ流」を実現可能にする重要人物が、フィールド選手ばりの「足元」で攻撃の起点となり、広範囲をカバーする機動力を備えたGKということになる。2017年6月に加入したエデルソンは、マンチェスター・Cにとって「グアルディオラ化の始点」でもある。

無冠に終わった現体制1年目の2016-17シーズン、CLではベスト16で姿を消したマンチェスター・Cは、モナコとの対戦で計6得点を奪っていながら、失点も同数でアウェイゴールに泣いた。同シーズン終了後に新GKを迎えたチームでは、ヤヤ・トゥーレ、コンパニ、ダビド・シルバらが去って世代交代も進む過程で、MF陣ではギュンドアンやベルナルド・シルヴァが次第に影響力を高め、ロドリが加わった昨季にはフォーデンもレギュラーに成長し、今季は新CBのルベン・ディアスがストーンズと息の合ったコンビを結成するなどして、グアルディオラのチームらしさと強さを増してきた。

前半56%、後半54%とポゼッションではPSGに軍配が上がった今回の2nd Legでは、同じ守備陣でも、ブロックとクリアを連発したルベン・ディアスとストーンズの方が見せ場は多かった。しかし、両CBをはじめとするDF陣が、カバーを含めて完璧なポジショニングで守り続けることができた背景には、自らの仕事に集中させるだけの安心感を与える最後の砦の存在があるはずだ。しかも、その両手、あるいは足下にボールが収まれば、単なるリスタートではなく、チャンスの到来ともなり得るチーム最後尾の用心棒。マンチェスター・Cには、自軍が晒されていたプレッシャーを、一気に相手に向けて跳ね返すことで味方を助けることもできるGKがついているのだ。

チームが、決勝の舞台となるトルコ行きの切符を手元に引き寄せた11分の先制点は、流れに逆らって生まれたものだった。立ち上がりからPSGが攻勢をかける中、7分には、VARで正当な判定が下ったものの、一度はジンチェンコのハンドで敵にPKが与えられてもいた。だが、その4分後、バックパスを受けたエデルソンが、コントロール後のプレースキックで、左サイドを上がっていたジンチェンコの進行方向にライン越えのパス。左SBの折り返しからデ・ブライネが打ったシュートのこぼれ球を拾い、角度の厳しい位置から相手GKの股間を射抜いたマフレズのフィニッシュもさることながら、GKが放ったピンポイントのロングキックが生んだゴールだった。

その後もPSGの攻撃が続いた前半、マンチェスター・Cが一息つけた貴重なひと時は、28分あたりからの2〜3分間。きっかけは、エデルソンが右サイドのマフレズへと届けた精度抜群のゴールキックだった。後半は63分のカウンターで追加点が生まれた6分後、苛立ちで我を忘れたディ・マリアの退場処分で小競り合いが起こりかけた場面では、タッチライン沿いで仲裁に入り、チームメイトに食ってかかろうとする敵を長いリーチで制止する、ピンク色のGKユニフォームを着た「スカイ・ブルーズ」の巨人がいた。

以降は、3点目を狙うマンチェスター・Cのペース。だが、後半アディショナルタイムに終盤で唯一のピンチが訪れかけた。ネイマールが浮き球を放り込んだ91分の場面。ボールの落下地点付近には、相手CBマルキーニョスがいた。しかし、当たり前のように一足先に反応していたエデルソンが、事も無げにクリアして難を逃れている。

結果として実現した、グアルディオラ自身にとっては10年ぶり、マンチェスター・Cにとってはクラブ史上初のCL決勝進出は、運に助けられてもいた。この日も、前半の15分にマルキーニョスが放ったヘディングがバーに阻まれている。その4分後、エデルソンのスローを受けたベルナルド・シルヴァがボールを失った場面では、ほぼ無人のゴールを前にしたディ・マリアのシュートが枠を外れた。だが、サッカーの世界では、よく「実力で運を引き寄せる」という表現も用いられる。準決勝でのマンチェスター・Cでは、守護神自らが幸運を引き寄せたと言っても差し支えはない。

怪我でベンチ入りが精一杯だった2nd Legとは違い、相手最大の脅威であるエンバペが先発していたパリでの初戦でも、エデルソンの存在が大きく物を言った場面がある。デ・ブライネのクロスが誰にも触れずに同点ゴールとなり、本人が「ミスった」と認めているマフレズのFKが、ボールを避けた壁の隙間を抜けて逆転ゴールとなる前の59分。カウンターでPSGの快速ゴールマシンが裏に抜けたかと思いきや、ゴールマウスから、より長い距離をダッシュしてきたマンチェスター・CのGKが先にボールをものにした。おまけに、ひとまずタッチに逃れるのではなく、敵陣深くまで届くダイレクトキックで、嵩にかかって攻めようとしていた相手を後退させもした。

GKとは、1つのミスでも敗因と言われることがある一方で、セーブ連発やPKストップでもない限り、最大の勝因としては讃えられにくい因果なポジション。だが、マンチェスター・Cは、初戦で2失点目の危機を未然に防いだエデルソンの隠れたファインプレーを機に、悲願の決勝進出へと向かう足取りを強めた。リターンマッチでは先制点に絡んだ背番号31のナンバーワンは、「11人目のフィールド選手」ではあっても、“偽GK”などではない。攻守両面で頼りになる、本物の「守り神」だ。エデルソンをしんがりに、完璧なチームパフォーマンスでPSGを退けたマンチェスター・Cが、本格的なグアルディオラのチームとして5月29日の決勝に名乗りを上げた。

photo by Getty Images
text by 山中忍


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