優劣がはっきり付いた45分間で明らかになった3つの教訓〜レアル・マドリード対チェルシー【CLコラム】

  • 2021/04/29

優劣がはっきり付いた45分間で明らかになった3つの教訓〜レアル・マドリード対チェルシー【CLコラム】

「生き残った——」
スペインメディアが最も多用した言葉がこれだった。いつ死ぬか、いやすでに死んでいるかに思われたが、レアル・マドリードは生き残って2nd Legに希望を繋いだ。
前ラウンドのレアル・マドリード対リヴァプールの再現のようだった。ただ、今回は役割が逆転。プレスを空振りして後退を余儀なくされたのがレアル・マドリードで、技術と体力で上回って敵陣に次々と攻め込んだのがチェルシーだった。ベンゼマが個の力で得点機でさえないチャンスをものにしたが、チェルシーの方は数的同数あるいは有利でゴール前まで行くチャンスの山を築きながらラストパスでミスが出て1点だけに終わった。すべての局面、ポジションで劣勢だったレアル・マドリードがおそらく唯一上回ったのがCFのクオリティーであり、もしベンゼマがチェルシーにいれば、0-3くらいで終わっていた内容だった。
この試合を終えて、はっきりしたことが3つある。

技術も疲れる。カンテに象徴される優越

第1に、「フィジカル的にはチェルシーが上」。
ケガ人が出て、またジダンが信頼できるメンバーのみを多用したせいでレアル・マドリードが肩で息をしながら終盤戦を迎えているのは周知の事実だったが、それが正直に出た。
キックオフ後10分間くらいでイーブンボールがすべてチェルシーの方へ転がることに気が付いた人もいるかもしれない。これはチェルシーの方が先にボールに触り、圧力でも、こぼれた先にいるポジショニングの良さでも上回った証拠だった。
理屈から言えば、“技術は疲れない”のだが、疲労が蓄積すれば判断力も実行力も鈍って下手くそに見える。つまり技術のレベルが下がる。チェルシーはフィジカルを生かした判断力と技術力のレベルがリヴァプールよりも一枚上だった。単純に言えば、体をぶつけながらも1タッチで正確に速くボールを繋げるチームだった。特に右サイドのアスピリクエタ、ジョルジーニョ、カンテは、ヴィニシウス、マルセロ、クロースを手玉に取った。ボールを渡して“ハイ、自由に触って!”と言えば、レアル・マドリードの3人の方が巧みだろう。が、“体力差という文脈の上で出せる技術”という点ではチェルシーの3人に軍配が上がる。
その象徴がカンテだ。先にボールに触り、ワンタッチで動かして味方と連動してプレスをかわすと、目の前にはクルトワまで一直線のルートが広がっていた。自慢の走力はここから生きる訳だが、実はそこに行くまでの瞬発力と技術が凄かった。レアル・マドリードのMVPがベンゼマだとすればチェルシーのそれは文句なくカンテだった。

“トップ下”カゼミーロからずれたプレス

第2は、「前からプレスをかけてはレアル・マドリードに勝ち目はない」。
前半のプレス関係(誰が誰にプレスに行くかの役割分担)は、カゼミーロ→ジョルジーニョ、クロース→カンテ、ナチョ・フェルナンデス→プリシッチだったが、カゼミーロが空振りし、クロースが慌ててカバーに出てジョルジーニョとカンテまたはアスピリクエタのコンビにあっさりかわされ、緊急事態に慌てたナチョが潰しに行こうとするもプリシッチに裏へ抜けされる恐れもあって迷う。一か八かの博打で飛び込んでも良くてファウルで止められるだけ……。
後半、このプレス関係が修正され、一方的に攻め込まれる流れを変えることができた。カゼミーロはもう前から行かず、後退してスペースを埋めることに専念する。3バックで背後をクロースとモドリッチにカバーされたカゼミーロは、プレスの先陣を切る言わば“切り込み隊長”のような恰好でトップ下的に配置されていたのだが、カゼミーロの得点力アップにも結び付きリーガでは機能していたこの形は、チェルシーには通用しなかった。
カゼミーロ以下全員が飛び出しを自重し、アコーディオンのひだを縮めるようにしてスペースを埋める——先日のクラシコでバルセロナを圧倒した時の戦い方で、何とか致命的な出血を止められた。

こう着状態は戦法の的中? それとも予定調和?

第3は、「ボールは安全第一に大事に回す」。
「体力」と「体力込みの技術」で劣勢のレアル・マドリードは、前半のようなハイテンポの激しい攻防では劣勢に回る。よって、後半見せたようにマイボール時はバックパスや横パスを多用して大事に回して時間を使い、リズムを落とす。リスキーな縦パスが使えないからチャンスが作れないが、相手にもチャンスを作らせない。これは前からプレスに行かない、というのとセットの戦法である。

後半、試合はガラッと変わった。両チームともゴールチャンスはほぼゼロ。リスクを負わず双方納得するような形で残りの45分間が過ぎた。チェルシーの体力もさすがに落ち、レアル・マドリードは得点するよりも失点して2nd Legの勝ち上がりオプションが失われることを恐れた。
1-1というスコアは両チームにとって良いスコアだった。レアル・マドリードにとっては1失点でしのげたという意味で、チェルシーにとってはアウェイゴールを1つ挙げたという意味で(もちろん、トーマス・トゥヘル監督は止めを刺したかったところだろうが)。
レアル・マドリードが前からのプレスとリスキーなパスを自重したことは展開を激変させた。が、チェルシーの側もこれに抗わず、“お付き合いした”という面も否定できない。よって、2nd Legをジネディーヌ・ジダン監督の狙い通り、この試合の後半のような展開に持ち込めるかどうかはわからない。なにせ、無失点だけでは勝ち上がれず、レアル・マドリードには得点が必要で、そのためにいつかはリスクを負わねばいけないのだから。

どちらが強いか? と問われれば、スペイン贔屓の現地メディアにしても、「チェルシー」と答えざるを得ないだろう。が、強い方が勝ち上がるとは限らないのが勝負事である。
例えば、予選では勇ましくとも本戦ではさっぱりの“有敵艦隊”スペイン代表が欧州と世界3連覇を果たしたのは、最初のEURO2008でイタリアをPK戦で破り、積年の大国コンプレックスを払しょくできたからだ。接戦になればなるほど、CL3連覇メンバーの経験値というのは無視できない。
今から来週の2nd Legが楽しみだ。

photo by Getty Images
text by 木村浩嗣


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